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ホンモノ

彼女が小学生になったとき、お父さんはまたプレゼントを買ってきました。


「キャン、キャン」


玄関から鳴き声が聞こえました。


ぼくを抱きしめながら、ベッドでうとうとしていた彼女の身体がピクリと動きました。


部屋に入ってきたのは、箱に入っていないホンモノの犬でした。


ぼくより小さくて、毛色も真っ白でした。


ぼくと違って愛しい声で鳴きながら、自由に部屋を歩いていました。


彼女はそれを見つけると「きゃー、かわいいっ、かわいいっ」と何度も繰り返しながら、


ホンモノをずっと抱きしめていました。



それから、彼女の隣にはいつもホンモノがいました。


ぼくの居場所はタンスの上に変わってしまいました。


二人が仲良くしている、その光景を上から眺める毎日でした。


でも、彼女の笑い顔を見ているだけで、ぼくは幸せでした。



彼女が高学年になったとき、部屋の模様替えをしました。


ぼくは彼女の部屋から引越しました。


玄関のげた箱の上、その片すみにぼくは置かれました。


学校に行くとき「いってらっしゃい」と心で思いながら、彼女を見送りました。


学校から帰ってくると「おかえりなさい」と心で思いながら、彼女を見て安心しました。


朝と夕方、彼女の元気な姿を見るだけで、ぼくは幸せでした。



また、ぼくは引越しました。今度は家の外にある物置きでした。


ぼくの周りには彼女が小さい頃に着ていた服がたくさんありました。


服にはかすかに彼女のにおいが残っていました。


目を閉じると、笑い顔の彼女がぼくの前に現れました。


いつも一緒に過ごしていた、あの頃に戻ったみたいでした。


だから、真っ暗な中にいても少しも怖くなかったのです。


彼女との思い出に包まれて、ぼくはやっぱり幸せでした。


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