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日緋色の叛逆者  作者: 高藤湯谷
五章 勇者と魔王編
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7話 ルイナと言う名の災厄

「まずは私が主導権を握らせていただきますっ!」

「宣言すんなし」


 隣のリナにツッコまれてもお構いなし。

 ルイナは立ち上がると特にリベルの方を見て自己紹介をする。


「私の本名はルイナリア=フロムハートと言います。みんなルイナって言うのでルイナでいいですよ」

「金色」

「……印象が強かったでしょうか?それはただの色でしかないのでできればルイナでお願いしますね」

「「「「金色」」」」

「……」


 無言の蹴りがミアルに放たれる。

 この中で文句程度で済ませてくれるのがミアルだったのだろうが、だとしても暴力的である。


「リナとあまり変わりません。さて次ですよ。ミアルも名乗ってください」

「あーい、ぼくはミアルリアって言うんだ。ルイナと似たような名前でしょ?嫌になっちゃうよねえ。あ、ちなみに苗字はないからね」

「……まあ、聞き流してあげましょう。というわけで、真正の世界最強とその片腕です。よろしくねっ☆」


 可愛いどころか一周回って痛々しいポーズを取るルイナは全員から無視される。

 こんなもの、関わっただけこちらが疲れるだけだ。


「……なんだか初対面で扱いが雑ですね?」

「みんな慣れてるんじゃない?」

「慣れたら雑になるんですか!?」


 これは叛逆者とも早く距離を縮めなければ!とか言ってるけど絶対に気にするべきはそっちではない。

 とにかく混乱と混沌を齎す害悪さんは、魔王とか目先の問題に囚われることはない。


「私はっ、みんなで遊びたいですっ!」


 リベルやティエナはまあいいんじゃない?という顔をしているが、魔導神は嫌そうな顔をしてリナはどうにか止めにかかる。


「ダメに決まってんでしょ。二人ともいい?こいつが言ってんのは、『皆さん一緒に遊びに行きましょう』じゃなくて、『皆さんをおもちゃにして遊んでも構わないでしょうか構いませんよね?』だから全力で拒否ってね」

「……意味がわからない」

「あ、ティエナちゃん、と言いましたね?あなたは子供なので大丈夫です。私、リナくらい面白い反応を返してくれないと満足できない体なので」

「きっしょい言い方すんな。ほら供物のクリスタルドラゴンがあるでしょ」

「ぼくを売らないでくれないかなー?」


 ミアルはどこまでも平然としている。こんなものの片腕をやっているだけあって、ルイナの扱いは誰よりも上手い。


「もぉ、つれないですねぇ、前は二人で諸国漫遊の旅をしたこともある仲じゃないですかぁ」

「ちょ、甘ったるい声でこっちくんな!おい、馬鹿待て、やめろつってんだろっ!?」

「ほらこれですよ。とても楽しい。ええ実に面白いです。これが私の求める物。ずっと一緒に遊びましょうねぇ〜♪」


 どんなに蹴られてもワイヤーで叩かれても斬られても、ルイナはひたすらリナに迫る。

 もうお互いの唇が触れそうな距離で、なおもルイナは楽しげで恍惚とした笑みを浮かべている。


「……ぺっ」


 リベルは立ち上がって本当に気持ち悪い人の形をした異形をひっぺがす。

 現実に戻されたルイナはどこか呆然としているが、あまりリナをいじめるのはやめていただきたい。


「……叛逆者さん?いくら必要な存在でも邪魔をするなら容赦しませんよ?」

「こっちだってリナが嫌がることするなら容赦はしない」

「ふーん。めっ」


 パシュ、なんて本当に軽い音を立てて、リベルの腹に大穴が開く。

 え?なんて誰もが受け入れられない中、リナだけは早い。


「ぶっ殺すぞ」

「怖いです怖いですよお。ちゃんと見てください?叛逆者のなんたるかを」


 大量の血が噴き出す、その前に、黒い靄が寄り集まってはその肉体を再生する。

 傷なんて最初からなく、攻撃なんて受けていないかのように。

 回復したとしても跡が残るはずの、服さえも元通りにして。


「「「……」」」

「まあ、いつも通りか」

「いつも通りって何!?いつもそんな傷負ってたの!?」

「ああいや、大体攻撃受けても一瞬痛くてすぐ平気になるんだよな。それと同じだろ」

「……あんた、あんたねえ、……はぁ、まあいいわ」


 もう責め立てるのも馬鹿らしい。

 ただ少し、並大抵のことでは死なないという事実を知ったことで、リナはほっとしていた。

 だから、至極当然のようにそれが起きたことも見逃していた。


「……ほう、やりますね叛逆者」

「お返しだ。お前も死なないだろ」

「よく分かってますねえ」


 極天の剣で、ルイナが真っ二つに裂けた。

 だが次の瞬間には元に戻り、平然と会話を続ける。

 ここにはもう、人間なんて言える人は誰一人としていない。


「ねえルイナー。そろそろちゃんと話そうよー」

「ああそうでしたね。なんでしたっけ。暗獄の悪魔?魔王?」

「そうですの。暗獄の大森林に発生した魔王の討伐ですわ。あなたに任せられるのなら任せたいのですわ」

「……」


 ルイナはすっと魔導神から目を逸らす。

 そしてリナにどうするの?みたいな目を向ける。


「やって」

「……簡単に言いますね。はいっ、今もう殺しました」

「ん?……あんたもガキっぽいって話?」

「いえいえ違います。厳密に言えば既に死んでいるんですよ」

「「「……」」」


 子供みたいな、はいもうやった!みたいな言い訳かと思った。

 だけど、ルイナが遊ぶのは大丈夫だと確信がある時だけ。

 本当に害になるような嘘はつかない。


「そもそもですよ?皆さん暗獄の悪魔は警戒しているんでしょう?その気質や場所さえも。ならなんで思い至らないんですか?魔王なんて異分子は、そこの主に既に滅却されていると」

「……確かに、言われてみればそうか。じゃあもう勇者いらないじゃん」

「いえ、剣が動いておいてそれはあり得ませんの。そもそもあの剣には謎も多いですし、このルイナが造ったわけでもありませんし、あれは正しいですわ」


 すごい暴論だがリナも納得するからルイナは色々おかしい。

 もう少し信用を得られる動きをしてほしいところだ。


「嫌です」

「……で?本当は何がいんの?」

「魔天王ですね」

「……魔天王?」

「ええ。その通り、神の性質を宿した魔王ですね。元の魔王がさっさと殺されてしまったために、世界が元の魔王を殺した存在を殺せる魔王を用意してきました」

「……なんかもうわかんないからあんたやって?」

「嫌ですよ。神相手は疲れるんです。そもそも私がしばらく活動できなかった理由覚えてます?あなたが大規模な世界修復を頼んだからでしょう」

「うぐ、そ、それはそれ。これはこれ」

「通りませんよそんなこと!ああ違います。通しませんよそんな都合のいい言葉!」


 通らない、なんて言い切ったら自分の言葉も通らない。

 だから、無理やり通さない。

 ルイナとリナで完結しているが、リベルもちゃんと話は聞いている。


「世界の、修復?」

「ちょ、リベル」

「よくぞ聞いてくれました!」

「ああもうこいつ基本的に喋りたがりだから質問なんてするべきじゃないのに……」


 まだまだルイナのターン!

 暴れ馬は止まらない。行き着くところへ行くまでは!


「叛逆者の記憶にない部分ですね。リナは元々水の神と戦ってました。そこで、大量の死人と街の破壊が行われてしまいました。水の神自体は突如現れたあなたが殺しましたが、街はどうなったでしょう。答えは私が直したです。ただ大勢の人間をそのまま生き返らせるなんて力、『人間』でしかない私には重たいわけですね。よって終わったあと昏睡してました」

「大丈夫、あんたは人間じゃない」

「ええ?こんな体してるのに?」


 くるくる回って人間らしさをアピール。

 見た目だけで言えばリナだって人間である。


「……お前、マジでなんなんだよ」

「あ、その言い方悪いですよ。ほとんどわからないからって全部教えてくれみたいな姿勢、私は苦手です。だから無視されるのを、分かってください!」

「……お前も押し付けだよ」


 子供同士のやりとりは置いといて、リベルの言いたいことは大体わかるリナが答える。


「こいつの能力は再現魔法。本来は元の状態を再現するだけの能力だけど、言葉の意味と解釈だけで神の技すら模倣する最害悪」

「なんだかすごい言葉が生まれましたね?でもそうです。大体合ってます。私の能力は、全ての事象を再現する力。誰かにできることであればなんでもできます。だから魔導も次元操作も生命の秘術も世界創造もやってのけますよ」


 もうほんと、ぶっ壊れ。

 現象どころか事実まで引っ張ってこれるので、神の不死性と再生力、無限の命なんてものも持っている。


「お、お前が、時空歩道とか言うの作った?」

「当たりです。それもこれも空間と時間の神の御業を持ってこれる私だからできることですね♪」

「……そんな魔力、どこにある?」

「ええと、私と言いたいところですが、答えはそこの魔導神ですね。あれが一応世界で最も魔力を保有している生命体ですので」

「それも再現の賜物ですの?」

「……」


 魔導神の質問だけは無条件で受け付けない。

 とりあえずティエナは疑問が晴れた(?)のでまた黙って見守る。


「それで、なんの話でしたっけ」

「魔天王じゃないかな」

「あ、そうでした。なんとこの魔王、叛逆者と勇者の力がなければ殺せません!」

「「「……」」」


 神の性質と魔王の性質を併せ持てば、まあそんな化け物が生まれ出る。

 ルイナなら足止め、また封印程度軽くできるが、それじゃあ世界はつまらない。


「眷属は下級神クラス。ただしこちらに神核はないので理論上誰でも殺せます。神に届けばですけれど」

「……じゃあ私がやればいいってことね」

「そうですね♪それが最も手っ取り早いでしょう」


 やることが見えれば、人選も勝手に終わっていく。

 ここになんでもできる万能な人は、一人だけいるが動かないのでメンバーは限られるのだ。


「今なら眷属も少ないですし、もしかしたらやりやすいかもしれないですね」

「勇者が弱い件は?」

「どうにでもなるでしょう。ティエナちゃんも行くんでしょう?」

「……ん、ねえさまが行くなら」

「じゃあ大丈夫です。男の子って、好きな人のためならなんでもできるんですよ?」

「あんた女でしょうが」

「えっへへ、さてどっちでしょうねぇ」

「ついてないの知ってるからな」


 掘り下げても碌なことにならなさそうな話題は避けて通って。


「どうしますか?魔天王の位置だけなら教えられますが」

「どこよ」

「大陸の南端ですね」

「砂漠が広がっているところですの……あそこは未開拓領域のためにわたくしの神域でもありませんわ」

「まあ誰の邪魔も入らないってわけね」

「他の神の介入は止められませんわよ」

「……そんときはルイナがやって」

「相変わらず人使いが荒いですねえ、それくらいはいいですよ」


 ルイナも変なところで寛容になる。

 話についていけていない人が数人いるが、大体まとまってしまったので後でリナに聞いておこう、なんて人任せに考えている。


「今はこんなところですか?そこのエルルアとか言いましたね、ここでの話は機密情報です。喋った瞬間パンなのでお気をつけください」

「はい」

「パン?食べられる?」

「ふっ、違うわよ。マジで消滅するって意味」

「……えぇ」


 そういえばいたっけレベルで空気になっていたエルルア。

 魔導人形のために釘を刺せば喋ることはないが、そのために扱いもぞんざいになっていく。

 消滅の呪いなんて、普段は使わないのに。


「あ、ちなみにこれは終末神あたりの力ですね」

「簡単に神の力引っ張ってくんな。てか呪いかよ。全員にかけてないでしょうね?」

「一度死ぬと生き返らない人は平気ですよ。魔導神は思念を飛ばすだけでも一回死んでもらいますが」

「……しないので平気ですわよ。わたくしにお友達がいないのは分かっているでしょう」

「ふふっ、ええこのメンツであればいいので大丈夫です」


 人を弄んでいる時とはまた違う、本当に嘲弄の含まれた笑い方だった。

 魔導神とルイナには、何か軋轢でもあるのだろうか。


「(知りたいです?知りたいですよねえ、でも教えません。知ったらあなたでも飛ばしますよ)」


 物凄い圧をかけられて、リベルはひたすら首を縦に振るしかない。

 しかも本当に恐ろしいところは、額がくっつきそうな距離で語りかけてきたと言うのに、誰もこの行動に気づいていないと言うことだ。

 逆らったら、誰にも気づかれず殺される。

 そんな曖昧で、しかし確かな予感があった。


「では魔天王辺りの話はこれくらいですかね。後の話は勝手に進めておいてください。私は、久しぶりに人の街を散策してきます!行きますよぉっ!ミアルっ!」

「はいはーい。じゃ、みんなまたねー」


 そんなことを言いながら、竜巻以上に害を齎してくる天災は消え去った。

 後に残された人、特にリナと魔導神が疲れたように体を投げ出す。


「はぁ……リナさん、もう一度あれを昏睡に追い込んでくださいません?」

「そうしたいけどあいつがやってくれるかなんて気まぐれなんだから、それで一個街壊すとかできないでしょうよ」

「……物騒すぎる」


 できてしまうのが恐ろしいところ。

 そしてどこで聞いているのかバンっ!と扉が開け放たれると、もう一度ルイナが現れた。


「私の修復は状況次第です!そういう思惑でやったのなら、放置します!」


 それだけ言うと、本物の嵐はまた消えた。

 釘を刺しにきた、のだろうか?


「……とりあえず、今は放置よ。勝手に遊んでくれてる分にはこっちに影響ないし」

「この国の民に何かあったら嫌ですの……あの人なら、ナンパを引っ掛けて軽く捻り殺すとかありそうですわ……」


 どんな想像だ、と言いたいが、あの化け物ならできてしまうのが恐ろしい。

 リベルにもたれかかっていたリナが起き上がると、寝起きのような緩慢さで立ち上がる。


「じゃあ一旦勇者んとこ行くか。いつ出発するかも決めたいし」

「ではエルルアも同行してくださいまし。くれぐれも、ルイナのことは他言しないように」

「分かっています」


 リベルとティエナもそれに続いて、あれだけ騒がしかった応接室に静寂が訪れる。

 人の熱気がなくなったせいか、一気に冬の寒さが部屋に満ちていくようだった。


「……ルイナ。お前は今でも、自分の道を貫いているんだな」


 寒さを堪えるように魔女の帽子を抱えて、同じく金の髪を持つ少女は一人呟いた。

化け物が化け物すぎて三十分くらいで仕上がった話。

読者様の目線だとルイナはどう映るでしょうか。作者からするとこういうスパイスは楽しいです。

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