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日緋色の叛逆者  作者: 高藤湯谷
四章 天変万化編
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9話 女子会?

 リベルは適当に過ごしているというので、携帯だけ渡して別行動。

 実はこういった催しに憧れがあったリナは、あの場で遊びに行く流れを作ってくれたリベルに感謝していたりする。


「それじゃあやっぱりまずは服探し?」

「ん、おしゃれな服♪」

「ティエナさんも女の子ですわね」


 というわけでいい感じのブティックを探して、全員で入ってみる。

 ここでの良い感じとは、ティエナも着れる子供用の服でお洒落な服がありそうな店、という意味になる。


「お、これどう?可愛いんじゃない?」

「……もっと、かっこいい感じ」

「「かっこいい感じ?」」


 あれ?お洒落って可愛い方じゃないの?と少女二人から疑問が浮かぶ。


「ライダースーツに、サングラス……!」

「……ティエナちゃん、どこでそんな感性になったの?」


 これはちゃんとお話する必要があるかもしれない。

 とはいえ、ファッションなんて本来自分が楽しめればいいはずだ。

 人の目を気にせず、自分が最高に格好良いと思えたなら、それはきっと正解なはずなのだ。


「ふ、おれの右手が疼くぜ……!」

「ねえ待って、そっちなの?かっこいいってそっちなの!?」


 ティエナは、厨二病なのかもしれない。


「言ってみたかっただけ……。ねえさま、元気出して……」

「う、うん。そうだよね。うん。冗談よね」

「まるで過去の自分を見た人みたいですわ」

「ごふっ」

「「……まさか?」」

「いや、いや、しょうがないじゃん!そーいう力あったんだよ?マジで地獄の業火とか出せちゃったんだよ!?言いたくなるでしょうよそれはさぁ!」


 ちなみに今のリナがあるのは、かつて旅をした仲間に矯正されたからである。

 自分で気づいたのは、数十年経った頃だった。


「意外ですわ……意外すぎますわ……」

「ん、ねえさま、過去が真っ黒」

「やめて!私だって恥ずいんだから!でもあん時は楽しかった。やってた時は楽しかった」

「試しに何か言ってみてくださいな」

「私は闇のて、て、何言わせんのよっ!!」

「自分でやったのですわ」

「ねえさま、抜けてない」

「……」


 だってしょうがないじゃない。楽しいんだもの。


「全く……まずは服を選んでしまいしょう。ティエナさんも、ちゃんと自分が欲しいものを言いますのよ」

「ん。でもかっこいい服欲しい。魔法陣とか眼帯はいらないけど、ライダースーツ!」

「そ、そんなに欲しいですの……?」


 可愛らしい服の割合が高い店に、そんなものはなかった。

 眼帯らへんに胸を押さえている人はとりあえず放置して、魔導神はティエナと服を見て回る。


「こんなのどうですの?可愛らしくてもこもこしていますわ」

「太って見える」

「え」

「スタイリッシュ、ライダースーツ!」

「な、なぜそんなに拘りますの……」


 そして魔導神はずっと大人な感じの”そういうもの”を言っているのかと思ったがどうも違う。

 多分、レザージャケットと呼ばれるメンズのかっこいいやつだ。

 この店に、到底あるとは思えなかった。


「ティエナさん、やっぱり可愛らしいのは……」

「わたし、かっこいい方が好き。ふ、またせたな。でももうあんしんしな。おれがきたからには、指一本ふれさせないぜ」

「……」


 一体、何に影響を受けているというのか。

 しかもないのにメガネをクイっとあげるような仕草までしているので、完全に何かを想定しているのだろう。


「あの、何を見ましたの?」

「……昔、ドラマで見た気がする。かっこよかった。確かわたしくらいの女の子助けてた」

「……それは、かっこいいですわね」


 少し聞いた話と結びつけるなら、ティエナも助けを求めていたのだろうか。

 居心地の悪い、家庭から。


「てぃ〜えなちゃん♪」


 しんみりしている魔導神に代わって、やっと胸の痛みと折り合いをつけたリナが声をかける。


「こんなのどう?」

「!? ライダースーツ!かっこいいやつ!」

「あ、ありましたの、そんなの……」


 黒い革のジャケットと、それに合わせる服を持っていた。

 上は白いニットブラウス、下はジーンズだろうか。

 全て子供サイズで、よくまあこんなものがあったという感じだ。

 きゃっきゃとはしゃぐティエナに服を渡して、リナは魔導神に耳打ちする。


「服は、なんとかこの店で見つけてきた。けど、革ジャンなんてなかったから私が作ったわ」

「そ、即席で?よくまあ……望み通りのものを……」


 早速試着室に向かったティエナは、どこから取り出したのかサングラスまでかけて、バイクにまたがるようなポーズを取っていた。


「おれの愛車が火を吹くぜ」

「な、何か違う気がしますの」

「かっこいいわね〜、ほらこっち向いて?はい、チーズ」


 パシャっと一枚、極限までかっこつけたティエナの写真が収められた。


「こ、これでいいですの?」

「ん!大満足!」

「な、ならよかったですの……」


 ニットとジーンズだけカゴに入れて、革ジャンは空間収納へ。


「私もちょっと見ていこうかしら」

「あら、誰か振り向かせたい人でもおりますの?」

「……!」

「……あの、何も言わず赤面するのだけはやめてくださいません?」


 かぁっと頬を赤らめて硬直する姿は、最早心情を言い当てられて恥ずかしがる少女と変わらない。


「ねえさま、リベル大好き」

「えぁ、う、うんそうよ?友達として。友達としてね!?」

「……絶対違う」


 表情をころころと変える様は見ていてとても面白いが、あのリナが、という驚きがどうしても上に来てしまう。


「それで、何か買っていきますの?」

「……今日はいいです。一人で没頭したいから」

「没頭する前提ですの」


 自覚しているんだかいないんだか、よくわからない。

 ティエナの服だけ買った一行は、軽いおやつにとお洒落なカフェに行くことにした。

 とても女子会らしい、なんていうリナの願望が混じっていないこともない。


「これでわたしも今日からヒーロー」

「ご満悦ですわ……こんなところに好みがあったなんて……」


 元々の服の上から革ジャンを羽織って、ティエナは大変満足そうだった。


「ティエナちゃん、ヒーローってのは見た目だけじゃないわ。困った人がいたら手を差し伸べる。人々の規範になるようなことをする。そして何より、どんなに強い相手でも立ち向かう。それがヒーローってものよ」

「……難しい。でもだからこそかっこいい!」


 ティエナは、どちらかと言えば少年に近いのかもしれない。


「(わたくしたちはやられる側ですわね)」

「(あんたも悪人って自覚あるんかい)」

「(それはまあ、色々やらかしてますし)」


 本物の世界の敵と共に過ごしていることには気づかずに、ティエナはその先頭を歩いていく。


「ここですわ。SNSで話題のお店ですの」

「うわ、すっごい行列。なに?一時間待ち?どうすんの?」

「……やだ。待つの嫌」

「だってよ」

「ぐ、では今度一人で来ますわ」


 小洒落た店は、探せば案外たくさんある。

 ここからそう離れていない場所を目指すことにした。




 さて、リベルの性格やらリナの行動的に珍しい、一人の自由時間というものを手に入れたリベルは、完全に手持ち無沙汰で街をふらふら歩いていた。

 そもそもリベルが一人でしたいことなんてないし、その存在意義は神を殺すこととリナの居場所であることにしかない。

 よって、観光気分でもないのに傍から見たらそうとしか見えないくらいきょろきょろしながら歩いていく。


「結局人の街もあんまり見たことってないんだよな」


 焦土、消滅と荒れ果てた土地も知っているだけあって、都市部の活気というのはなかなか貴重だと思える。

 ソロー大陸という別の大陸の方はあまり見て回っていないが、この神殿付近の街並みはリベルもなんとなく覚えてきた。

 だから、その違和感も少しずつ確かなものに変わっていく。


「……銀髪の人が多い?」


 元々人それぞれの色のある髪だが、銀色の髪というのは今まで見たことがなかった。

 そして、そんな珍しい髪色が、今はそこら中に溢れていた。

 まるで、銀髪の人しかいない世界に紛れ込んでしまったかのように。

 リベルは明らかな異常にリナと連絡を取るべきかと思ったが、渡されていた携帯は圏外を示している。

 たった一人黒い髪で浮いているリベルは、恐る恐る真横を通った人に声をかける。


「あの」

「おお!一発で本体を当ててくるか!まあそう仕組んだ部分も多々あるが、それは良しとしようじゃないか!!」

「……えっと?」


 大体魔導神と同じかちょっと年上くらいの少女が、まだ何も言っていないのに楽しげに語り出す。

 その内容に思い当たるところが全くないために、リベルは首を傾げるしかない。


「おやわからないか。なら結構。生粋の神も叛逆者の目を誤魔化せるというわけだな」

「……は」

「今更気づいたって遅いぞ?ここは私の神域。魔導神の神域程度、というか一部分を切り取る程度造作もないからな。奴が気づくこともあるまいて」

「……」


 魔導神を、その程度。切り取ることが造作もない?

 そしてこの余裕の態度。自分の正体を明かし、最大最悪の天敵の前に立っているというのに。

 こんなのは、こんなことが許されるとしたら。


「とっ、きゅう、しん……?」

「それで括るのはやめたまえ。もし破壊神だったらどうするのだ?もうお前どころかこの地域一帯は吹き飛んでいるだろうさ」

「……なら」


 リベルがその正体を絞り込んだとき、銀髪の少女は楽しげにポーズを取る。


「いかにも!私の名は創造神!悲しみを払拭する者にしてこの世の娯楽を遊び尽くす者!ちなみに今は人を揶揄うという娯楽に興じているところだ」

「……おい?」


 ついつい、相手が強者であってもツッコんでしまった。


「おお、私が創造神だと明かして尚微弱な怒りの波動を発するとは。さすがは叛逆者。怖いもの知らずだ」

「……」

「今度は呆れか?おっとこれは違うな。説明不足で困っている?ふむふむ。教えるものか!」


 バシーンといきなり平手でビンタされ、リベルは数十メートル後ろへ吹き飛ぶ。


「は、え……?」


 そして立ち上がると、先ほどと変わらない位置に創造神は立っている。


「ああ違うぞ?お前があまりに弱いから神域ごと移動させたのだ。わざわざ転移など使うまでもない」

「……」


 つまり、自分一人が移動するよりも部屋ごと移動した方が楽。

 それはどんな世界の話なんだろう、とスケールの違いにリベルはもう何も言えなくなった。


「ようやっと心が折れたか。なかなか粘るものだな」

「……」

「違う?まあいい。さていきなりだがここでクイズだ。私はなぜここへやってきたと思う?」

「……俺を、殺しに来た?」

「ブッブー!不正解!答えは遊びに来ただけでした〜!」

「……」


 なんだろうこの人。リナよりも自由気ままな気がする。


「私という女がいるのに他の女のことを考えるとは何事か!」

「……」

「まあ彼女面したいわけでもないからいいのだがな。ではさらばだ。私は発展したこの国を楽しんでくる!」

「え、や、ちょ……」


 何しに来たんだよ、と聞く間も無く、創造神と名乗った少女はどこかへ消えていった。

 気づけば、周りの人もいつも通りのカラフルな髪色に戻っていた。


「なんだったんだマジで……」


 呟いても、答えは出ない。



 一方その頃女子会中の人たちはと言えば、


「それでそれで?どうしてあの人間大っ嫌い近づいてくるんじゃねー!のリナさんがリベルさんを好きになりましたの?やっぱり寡黙ながらも思いやりのあるところですの?」

「多分、何やっても許してくれるから。ねえさま、自分らしくあれるところ求めてた」

「なんで私ばっか聞いてくんのよー!ティエナちゃんは!?魔導神は!?なんかないの!?」

「「あったらすごい」」

「魔導神はもう行き遅れだろうがよぉっ!」

「それを言ったらリナさんもですわよっ!」


 神域が奪われたとかそんなことは知らず、恋バナにもならない幼稚な喧嘩を繰り広げていた。

なんだあの創造神とかって人……千文字程度稼げりゃいいと思ってたら二千字持って行きやがった……

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