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日緋色の叛逆者  作者: 高藤湯谷
六章 生命神編
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17話 世界樹というもの

 やってきたのは、前にルイナが休憩していた喫茶店。

 今回はミアルも連れて、テラスではなく店内の一番奥の席に座る。


「さて、このお店はコーヒーの方が美味しいんですよ。ティーカップしかない辺り紅茶にこだわりを感じるんですが、どうも舌触りが好きではなくてですね」

「いや、あんたの趣味趣向の話はしてないから。世界樹って何?あの波動何?あんたまでいてなんで逃げたわけ?」

「あーあーうるさいですよー。一気に質問を重ねないでください。いくらあなたでも無視したくなっちゃいますよ」

「そもそも嫌な話強引に曲げるじゃん」

「それはそうです。まあ追って説明するので先に注文しましょうよしてくださいよ」

「……わかったわよ」


 全員分コーヒーで注文してから、ルイナは背もたれに体を預ける。


「あれはですねえ、自分でも言っていた通り、命の管理者なんです」

「……まあ、腐っても神って感じ?」

「ですね。ただ人の姿のままでは真価など発揮できませんし、基本美しい物眺めてきっしょい笑み浮かべてるだけなので、そんなこと知らなくてよかったんですけどね?」

「……なんか、あんたあれ嫌い?」

「あなたよりマシです」


 機械と植物の軋轢よりはマシ。それはどれくらいの差なんだろう、とリベルはちょっと真面目に考えようとしたが、あまりに規模が大きすぎて最初から測ることはできなかった。


「それでですね、おっと、ありがとうございます」


 コーヒーが運ばれてきて、ルイナが地味に頭を下げる。

 そんな仕草も珍しいんだから、リナから見たルイナは狂っている。

 なんて考えるリナにジト目を向けつつ、ルイナは追加でバニラアイスを頼んでいた。


「うーん、やはりここのコーヒーは香りがいいです」

「貴族め」

「あまり関係ない気がしますが。それで続きですね。世界樹は、生命神の本体です。権能は十全に、その本質は最大まで発揮します。能力としては命の統合、再分配。根を張った地面から自分以外全ての生命力を吸い上げ、莫大なエネルギーを好きなように好きなところへ流す、という能力ですね。はっきり言ってチートです」


 それは本当に命の管理者。

 能力も、発想も、自分がそもそも上位者であり、咎められることがないと思っていなければ絶対にありえないようなもの。


「じゃあ、さっきあの森が死んでいったのも?」

「ええ。世界樹がエネルギーを吸い上げたせいです。今は森ごと隔離してあるので、その影響が外部へ及ぶことはありません。しかしそれも無尽蔵に保つわけじゃないですからね。破られたら一分ほどでこの大陸は死滅します」

「やっば」


 まああの速度で進んできたとしたら、それくらいで滅んでしまうかもしれない。

 ここで恐ろしいのは、あのルイナが自分で何かをするでも、リベルを利用して食い止めるでもなく、逃げたという事実だろう。

 ああなってしまったが最後、ルイナでさえ止められないという証左にもなってしまうのだし。


「……勝てないことはないです。しかしですね、私だって人間ですし、根こそぎ生命力を持っていかれたらそりゃあ一瞬気絶したりもするんですよ。そうなると、例えミアルに結界を張ってもらったとしてもすぐ崩壊しますし、あの場では逃げるのが最善だったんですよね」

「ああそういえば、なんか変な詠唱してたよな。あれってなんだ?代理とか苗字の方とか」

「……よく聞いてますね。魔法発動の媒体として音を使うのはもう古いんですよ。本来は。でも魔法ってイメージがとても大切で、やっぱり頭の中で思い描くだけではあやふやになってしまうんです。それを声に出すことで、より強固なイメージを獲得し、万全の力を発動するんです」


 もちろん対人戦なんかにおいては無詠唱の方が強い。

 言葉で魔法を察知されないのもそうだし、何より不意打ちで発動できる。

 だが、神々や詠唱相手に無詠唱で戦うのは少し分が悪い。何しろ向こうは自分より上のイメージを持っていて、言葉に出した分だけ魔法も強化されていく。

 そこに少し不安定な想像力で戦いを挑めば、弾き返されるか飲み込まれて負けるか。何にせよ勝つことはできない。


「そして代理執行者と私の名前ですね。あれは神ですので、一応ミアルの名前でも弱いかと思い私の名前を出しました。これでも一応世界に認められし強者ですからね。まず打ち負けることはありません」

「……あんたが、世界に認められてんの……?」

「ええ。強さだけですけど」

「なんだ」

「……複雑ですねえ。今晩覚えておいてくださいよ?」

「ひっ!?」


 リナが咄嗟にリベルの後ろに隠れようとする。

 だがわかっているのだろうか?どちらにしろルイナからすれば好都合だということを。


「まあ、いいや。その、名前だけで強さとかって決まるもんなのか?」

「そうですね。現状は上から私、特級神、上級神、ミアル、下級神くらいですかね。神々にも序列はありますが、基本的に神の権能は神に通用しませんので。世界樹の再統合さえ他の神は平然と受け流したんじゃないですかね」


 生命神はそもそも序列が低いので、空間神が居残っていたとしても何も気にせず留まっていた可能性の方が高い。

 それはともかく。


「お前、一番上なの?」

「はい♪」

「……じゃあ、さっきの順位の中で、俺はどの辺りになる?」

「んー?名前だけでは下級神より下ですかねえ。あなたの力は、本当に下剋上を果たすようなものなんですよ。だから、位としてはそこまで高くありません」

「……なるほど」


 そもそもリベルは理にそむく者。理の中の順位は人間より強い程度でしかない。


「じゃあじゃあっ、私は?」

「あなた……どの名前を使いますか?リナですか?緋色の悪魔ですか?それとも」

「待った待ったっ!ええとね、悪魔の方で」

「あれは神以外全ての種族に根源的恐怖を与えるものです。神まで含めた順位の中では、そんなに高くないですよ」

「むぅ……でもルイナは人間なんでしょ?」

「効くとお思いで?」

「……なんでよ」

「最強ですので♪」


 神の上に立つ人間だというのに、人に恐怖を植え付ける名前は意味がない。

 まあ一番近い種族が人間というだけなので、それも仕方のない事なのだが。


「あ、ありがとうございます」


 ちょっと遅くなったアイスを受け取り、ルイナは早速一口。

 んー、と美味しさに目を細めれば、リナとリベルが何か言いたげな目をしている気がした。


「……あんたってさ、黙ってれば可愛いわよね」

「あら、ありがとうございます。では今晩お礼に行きますね?」

「だからいらないってっ!」


 もうリベルを膝の上に乗っけそうな勢いで体を隠す。

 仲睦まじいようで何より、とルイナは一つ頷いて、溶けないうちにアイスを食べつつ、やっと話を前に進める。


「それで、世界樹どうしましょうね。根を張った木は動きませんが、結界も二、三日で割れてしまいますし」

「今はぼくの魔力使ってるけど、それが切れると壊れちゃうんだよ。で、ルイナなら張り直せるけど」

「どれだけタイミングを測ったところで大技ですからね。少し影響が漏れてしまいます」

「具体的には?」

「この街は、滅ぶんじゃないですかね」

「「……」」


 つまり、二、三日で片付けなければならない。


「取れる手段としては叛逆者を解放するか私を使い潰すか、大陸を放棄するかですが、どれが」

「あんたを使い潰すッ!」

「……あなたならそう言うと思いましたけど。いいんですか?生命神はこれでもまだ序の口です。ここで私を切って、今後もっとどうしようもない神を相手にした時、あなた方だけで食い止められますか?」

「う……保険の意味合いでは残した方がいいのか……いやでもこれを……?」


 やっぱり人の扱いをされていないが、そこはもういい。

 とりあえずルイナは切りにくいという結論になってしまえば。


「……リベル、どうにかできる?」


 叛逆者に頼らざるを得ない。


「まあ、最初から俺の仕事だしな」

「では決まりですかね。まだ時間があるので私は今のうちに遊んできます」

「え?今行くんじゃないの?」

「何言ってるんですか。今すぐに叛逆者が能力を解放して、あれを殺せるとでも思ってます?あなたたちも好きに遊んできていいので、今は時間を潰しておいてください」

「えー……それでいいんだ……」


 リナが物凄く驚いているが、現状リベルの力を解放する手段はない。

 あるにはあるが、それをするとルイナも攻撃されかねないので、やりたくはないのだ。

 ミアルを引き連れて店を出れば、リナとリベルもどこかへ向かうようだった。

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