14話 あの日より
美味しい和食を食べ、リナは露天風呂に入ってその絶景を楽しんでから、一行は生命神がいる森へと向かう。
空間神に関しては、歩いている時間でどうにか消えてくれるだろう、とルイナが予測していた。
早めにさっさと終わらせて戻ってくるつもりではあったのだが。
「リナさん!」
街中でパーズたちに遭遇し、なぜか大声で呼び止められた。
「ん?あなたたち、こんな朝からどうしたのよ」
「迷惑なのはわかっています。足手纏いなのはわかっています。でも!俺たちも、連れて行ってください!」
パーズが頭を下げると、後ろのペルドとアリートも一緒に頭を下げる。
どうする?と周りの面々に目を向ければ、ミアルは既にいなくなっているし、ルイナは白の装束に謎のお札を貼り付けていた。一体何がモチーフなのだろう?
「怪しさを突き詰めた結果です。パーカーにフード被ってマスクとサングラスでも良かったですが、そんなありきたりは嫌です」
「ああそう……」
それはいいとして、問題はパーズたちをどうするか、だ。
実力は人間の中では最高レベルなのだろうが、神を相手にするならやはり足りない。
そしてこちらも手札を制限されるために、戦いにくくなる。
本当は断りたいが、頭を限界まで下げられてしまうとどうにも難しい。
「まあいいんじゃないか?」
「リベル?」
「どうせあれをやるのは俺だし、人質がいるなら、取り返した後に連れて逃げてくれる人がいた方がいい。リナに頼もうかと思ってたけど、こいつらが来るならそれはそれで使える」
「……」
リベルも随分合理的に考えるようになったものだ。
そしてリナに人質を逃がす役目を頼もうと思っていたということは、戦場に近づけたくなかったということでもある。
『私はもう、足手纏い……?』
『……いいや。隣で戦い方を教えてくれるのはありがたいし、俺が見えていない部分をカバーしてくれるのはよっぽど楽になる。それでも上級神なんて危険な敵に、リナは近づけたくなかった』
『……そう』
こうやって言われるから、リナは怒るに怒れないし、じゃあリベルに任せようかな、なんて思っちゃうのだ。
言い方一つで気分が全く変わるんだから、リベルはずっと口が達者なのだろう。
「そ、それで、どうでしょうかっ!」
あ、やべ、忘れてた、なんてパーズたちに目を向けて、ルイナに一応許可だけ取って、リナは適当に頷く。
「そこまで言うなら連れてってあげるわよ」
「「「本当ですか!?」」」
「ただし!そのルパシアさんを救出したらすぐに逃げること!道は作ってあげるけど、それでも守り切れる保証はないからね」
「わかっています!」
「「ありがとうございます!」」
ここまでしてでも、自分たちの手で助けたいのだろう。
これが絆の強さか、いいものだな、なんてリナは思っているが、パーズを除く二人には多少欲がある。
ルイナはそれに気づいていたが、自分と似たような思考で、さらにそれが楽しいことはわかっているので、何も言わずに見過ごした。
そして生命神がいる森である。こんなに大勢でぞろぞろと森に足を踏み入れて、相手が気づかないわけもない。
地中から大量の木の根が伸び出てくるのと同時、今回はおまけにトレントなんて呼ばれる本物の木の魔物まで出てきた。
「眷属か……」
「俺の力は?」
「五分じゃない?極天なら確実」
「ならいいか」
二人がひそひそやってる間にパーズたちが一気に臨戦態勢を取るが、こんなところで足止めを喰らうわけにもいかない。
「まあ見てなさい」
「リナさん?」
「(生命変換)、極天の業火」
それはリベル、と言うより太陽神の模倣。
摂氏五千度の炎が森を包み、その灼炎で以てあらゆる木々を燃やし尽くす。
「あーあー、こんな派手にやったらすーぐ目をつけられますよ」
「構やしないでしょ。どうせ殺しに行くんだし」
やるからには堂々と。物陰からこそこそ機を窺って横槍を入れるようなやり方は、リナは好まない。
未だ燃え盛る炎を少し操作して、リナは道を作り歩いていく。
「さあいくわよ。A級ハンターともあろうものが、こんな魔法程度で驚いてんじゃないわよ?」
「あ、あぁはいっ!」
流石に擬似太陽は見たこともないのだろう。硬直しているところを挑発で解除して、一行はさらに進んでいく。
本体へ近づいたからか、今度はより大きく強固な木の根が地面を割って飛び出した。
その性質に熱耐性を持っているあたり、もう二回も受けた擬似太陽対策なのだろう。
リナが少し顔を顰めたことで、今度こそ自分たちの出番か、とパーズたちがまた動こうとしているが、この場合最適な人物はリベルである。
「触れば止まるのにな……真面目にやるか」
極天の剣ではなく、叛逆者の剣をその手に生み出す。
そして適当に歩いて行く。
「お、おい坊主!危ないだろ!?」
「死なないよ。これ相手じゃ」
一斉に襲いかかる木の根に対して、無造作に一刀。
それだけで神の樹木操作の力は消え去り、ただの木の根に戻って地面にバラバラと落ちていく。
その形が徐々に萎んでいくのを見るに、大きささえも生命神にいじられていたようだ。
「……S級に並び立つって言われてるだけあるのか……」
「言ったろ。問題ないって」
叛逆者の剣を担いで、さらに進む。
炎は対策できても、神自体に特攻性を持つリベルの影響まではカットできない。
トレントはリナが燃やし、巨大な木の根はリベルが薙ぎ払って進んでいく。
『いやぁ、叛逆者も強くなりましたねぇ』
『そうね。って、あんた初めて生命神と戦った時のこと知ってんの?』
『なんとなく、知ってはいますよ。どうしても情報収集の精度も悪くなるので、ミアルの目を通す必要はありましたけどね』
『……やっぱあんたぶっ壊れてるわよ』
『ふふ、力を使い果たした程度で、私が本当に止まることはありませんよ』
なら全部こいつに任せてしまいたいが、楽したいだけのお願いは基本聞いてくれないので仕方ない。
そして、今までで一番大きく、その先端だけで人間の頭ほどあった木の根を切り捨てた先に、そいつはいた。
地面につくほど長い緑色の髪を乱雑に流し、整っているはずの顔を醜悪に歪めた嫉妬の神、生命神が。
『リベル、準備はいい?』
『ああ。というか、もう気づかれてるぞ』
『でしょうね。じゃあ、行くわよ』
戦闘シーンだけは三千文字だとやりにくいと思ったり。まあいい感じのところで分割してやります。




