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日緋色の叛逆者  作者: 高藤湯谷
六章 生命神編
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7話 害悪の思考

 赤い液体を指先に纏わせて、適当に円を描きながらルイナは歩く。

 森の入り口までは転移で来たが、この先は神の領域。下手をすれば、今この状態で安定している神々を暴走させることにも繋がりかねない。

 まあその場合は叛逆者を適当に呼び寄せて殴ってもらうだけだが、神の討伐とはそういう物ではない。

 よって、ここは慎重になる必要があるのだ。


「うん?なんか変なものを持ってるね。一体誰から引っこ抜いてきたのかな?」


 先に作業をしてもらっていたミアルが、ルイナの指先を見て分かりきったことを聞いてくる。

 本人もわかっているようなのでわざわざ説明するまでもないが、訊いてくるなら説明しておこう。


「叛逆者ですよー。別に私の血でも良いわけですが、神相手にこれ以上の物はないですからね」

「伝導効率を無視しても?」

「無視してもです」


 自分の血液なら、自分の一部なのだから変換においてロスはない。

 だがこれが他人で、しかも叛逆者のような特異体質となると、かなりのエネルギーを持っていかれることになるだろう。

 それでもやはり空間神を追い出す作業にかかる時間は短縮されるんだから、叛逆者とはどこまでも異質なのだ。


「”穴”は開けてくれました?」

「言われたことはちゃんとやるよ。言われなかったから固定はしてないけど」

「!? アフターサービスくらいしっかりしてほしいものですねっ!?」


 無駄遣いだが叛逆者の血を投げる。

 空間の境界に接している木に付着すれば、特殊な目でなければ視ることのできない空間の歪みが、そこだけは正常になっていた。


「ふぅ、危ないですね。勘づかれたらどうするんです」

「一回開けた穴くらいすぐに戻せるよ。ルイナもそうでしょ」

「……まあ、そうですけどね」


 状態再現の魔法なら、その時間の状況を持ってくることはできるが、それだって時間操作系の力を使うのだ。

 あまり無駄にエネルギーを消費させないでほしい。


「まあ、ある程度余分に採ってきたので大丈夫だとは思いますが、足りなければまた貰いましょうか」

「うっわあえげつない。それでも人を語れるの??」

「何が言いたいんです」

「人の心無いんじゃないのー?って話」

「ふっふっふ、人の心が良心だけだと思わないことですね。魔が差して犯罪を犯すのも人間ですよ」

「よくわかんないよねー」


 ミアルは適当にあしらっておいて、ルイナは空間のねじれの先、神々がいるはずの場所へ足を踏み入れていく。

 途中、なんだか木でできた鳥籠に向かって話しかけている怪しげな女性を見かけたが、向こうは気づいていないようだし、不審者には下手に近づかない方がいいので無視しておいた。


「この辺ですかね」

「あー、いるねえ、この場にそぐわないのが」


 それの実体を見ることはできない。

 そもそも、空間神は臆病なので現実の位相に顔を出す方が珍しいのだ。

 だがいくらその間にフィルターがかけられていようと、ルイナやミアルであればその存在を感知できる。


「聞こえますかね空間神。殺しにきましたよ」


 叛逆者の血を纏って言えば、ルイナの体が一瞬で森の外に転移させられていた。

 ふむ、と一つ呟いて、すぐさま元の場所へ戻る。


「生憎私は最強でして。そのようなものは妨害に含まれないんですよ」


 そう言ってるのにまた戻される。

 ルイナもいい加減暴走の法則がわかってきたが、だとするとかなり厄介だ。


「ダメですね。正攻法でやりましょう」

「正攻法が裏技ってどうなの?」

「持てる力の全てを使って問題に対処することの、どこが裏技だと言うんでしょう」


 持てる力(他人の力)を使って、ルイナは拒絶結界の陣を描いていく。


「旧式の魔法媒体なんて、使ってる人どれくらいいるんでしょうね」

「使ってる人はもう魔導神くらいじゃないかなー、ぎゃっ」

「……あれの名前を出さないでください」


 あっちは嫌いだ。あれを滅ぼすためなら愛する人を殺すことも厭わないほどに。

 ミアルが顔についた血を頑張って拭っているが、自業自得なのでできるだけ苦しんでほしい。

 話が逸れた。

 空間神が隠れている場所の周囲に叛逆者の血を規則に沿って塗ってから、ルイナはその上にさらに自分の血を重ねていく。


「ああ高潔なる貴族の血が……」

「それ誰だっけ。君が殺した婚約者のお父さんだっけ?」

「いましたねそんなのも。まあ、よわよわ頭のよわよわ貴族では私に敵いませんでしたけどね」

「君に勝てるのって誰?」

「いませんねえ現代には。私が力を得る前に殺せなかった時点で、私はもう不滅です」


 破壊神であろうと、殺すことはできない。

 死んだとしてもまた生まれる、という意味ではなく。

 ただし死なないとは言え血を失えばその機能は低下する。だって人間だから!


「おぐふっ!?」


 強烈な腹パンに体がくの字に曲がってちょっと崩れ落ちてみたり。


「下手な芝居やめなよ。貧血?そんなのルイナにあるわけないでしょ」

「なぜあなたが決めつけるんですかね……、まあその通りですけど」


 ひょっこり起き上がって、巨大な魔法陣を起動する。

 鮮血の輝きが放射状に広がれば、生命神の神域という、今となってはもうここ一つしかない場所を侵食していく。


「うわうわなんですかこの反応速度は。本当にオールマイティには出せない特攻性ですねえ」

「でもこれ逆じゃないの?なんで外側に広がってるの?」

「ああそれは連続させられている空間を元に戻すためなので。空間神排除の方はこっちです」


 ルイナが指を鳴らせば、魔法陣が正しい機能を発揮する。

 その内側に向けて、他全ての種族には効果がないが、神だけは浴び続ければ死にかねない強烈な光が放たれる。


「とはいえ下級神クラスで一年です。上級神が死ぬには数十年要しますがね」

「でも逃げるでしょ?」

「どかすためなのでいいのです。空間神は臆病ですからね。二十四時間もあれば多分、どこへなりと逃げていることでしょう」

「叛逆者を呼べればここで殺せるのにねー」

「それをしてしまったらリナの覚悟が決まりません。一世一代の告白の場は、ちゃんと周りが整えてあげないと大成功はしないですよ」

「告白、かぁ」


 プロポーズだとか、異性への気持ちを伝える場合に使われがちだが、別に真実を告げるだけでもいいのだ。

 それが、どんな苦痛を伴おうと。


「くふ」

「悪い笑みが漏れてるよ」

「おっと、これは本当にダメな方向なので抑えましょうか。発動も確認しましたし、邪魔も入らなさそうですし、一度帰りましょう。リナ殺しの計画は、まだまだ始まったばっかりですからね」

「恥ずか死ぬなんて誰が言い始めたんだろうね」


 まあこの先待ち受ける不幸の前の、ほんの些細なプレゼントだと思ってくれればいい。


「くふっふっふ、なんだかんだ言って楽しんでるのがあの人ですからねぇ。きっと喜んでくれるでしょう」

「君は本当にリナが好きだよね」

「ふふ、頬を赤らめて悶えながらもどこか嬉しそうな顔をして、誰かに言及されるとすっごく恥ずかしそうにするんです。あぁ可愛らしい。愛おしい。本当はあの美しい髪をわしゃわしゃ撫でて、嫌がるリナを無理やり抱きしめるのが一番楽しいんですけどねえ」

「……歪んでるよ」

「おっと、あなたがまともな毒を吐かないときは本気で引いているときですからね。この辺でやめておきましょうか」


 こうやってルイナは周りからの評価を確認しているのだ。

 まあミアルは慣れすぎて既にまともからはかけ離れてしまっているが。


「はぁー、これからどう生きていくか。悩みものですねぇ……」

「そんな人生行き詰まってったっけ。まあわからなくもないけどさ」


 激動の時代をどう過ごすか。そしてこれを走り切った先に、ルイナが求める物は果たしてあるのか。

 今を生きる人間として、一応悩んでみるのだった。

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