のぞき見したらダメですか?
ディオさんは決まった時間に不思議な動きをする。
まずは朝。
目が覚めたらまるで腕と足を引き離すみたいに大きく伸びをする。
これはたまに私が早く起きたときにしているのを見るからたぶん毎日していると思う。
そのあとベッドから降りてカーテンと窓を開ける。
そこでまたかかとをあげて、腕を上にあげて大きく伸びをする。
寝間着のワンピースから、袖がないシャツと太ももまでの短いズボンに着替える。
基本的に大人の女性はひざ下のワンピースで過ごすし、普段はディオさんもその格好だ。
だから、初めて見たときはとてもびっくりしたし、私の方が恥ずかしかった。
大人の女の人のそんなところは旦那さんしか見れないものだから、私が見ていいのかと緊張した。
ディオさんはそのあと外にでて、敷物の上で体を動かす。
その動きはいままで見たことのない不思議な動きだ。
毎日のことだけど、私はディオさんのその日課を窓からこっそり見ることが好きだ。
大人の人のあんな格好は見たらいけないとは思うけど、ディオさんの動きはなんだかとても面白いのだ。
今日もディオさんの姿をみようとベッドからこっそり起き出して窓をのぞく。
「あれ、いな・・・きゃぁ!!」
いつもの場所にディオさんはいなくて、代わりに急に窓が開いた。
「ランラン、のぞき見なんていやらしいなぁ~?」
そういって頬をふくらませたディオさんと目が合う。
ディオさんは庭に出たけど、窓の前で私を待ち構えていたのだ。
「ご、ごめんなさい!!!」
や、やっぱり見たらだめだったかな。
ディオさんにも嫌われたらどうしよう。
「あはは、怒ってないよ~!いつもこっそり覗くから驚かせちゃおうと思って~」
「う~、びっくりしました・・・」
「ごめんごめん~」
「起きてるなら庭においでよ。気になるなら教えてあげるよ~」
だって毎日見てるもんね?そう言っていたずらっぽく笑うディオさん。
き、気づかれてたなんて恥ずかしい・・・。
いやらしい子だと思われたらどうしよう。
恥ずかしさで頬が赤く染まるのを感じる。
ディオさんをみると手に二人分の敷物を持っていた。
「ランラン、おいで。寝間着のままでいいよ。」
ディオさんにおいでって言われて断れる人はいないと思う。
私はディオさんに言われたとおり、寝間着のまま庭にでた。
「体は女神さまからの借り物だから。いつか返す日まで大切にするの。そのためのメンテナンスがこの時間なの。」
ディオさんがしていた動きはヨーガという運動らしい。
あんな方向に体が動くのかなと不思議だったけど、一緒に動きを真似してみると、意外と気持いい。
朝の太陽を浴びると、夜ぐっすり眠るように身体はできているからこの時間に運動するとのことだった。
朝起きたら感謝してカーテンをあけて体のメンテナンスをするのだと話すディオさん。
「動きに慣れてきたら、手や体の血液の流れを感じてみて~」
ディオさんはそういうけど、よくわからない。
ディオさんには私が分かっていないのが伝わったようだ。
「手、だしてみて。」
そう言ってディオさんの優しい手が私の手を包む。
「ディオさんの手、あたたかい・・・」
「ふふ、そうでしょ。」
人間の体のほとんどが血液と水分でできてると説明してくれた。
その血液と水分を循環させることが大切なんだそうだ。
「硬くなった体をゆらすイメージで揺れてみて〜」
一緒に動きを真似してみると、意外と気持いい。
ヨガや柔軟の他に、歩くことも体に良いと教えてくれた。
「あ、ランランの手も温かくなってきたね」
そういって優しく微笑み、手を話す。
「森の中に湖があるんだって~。今度散歩がてら歩こうか。」
「はい。」
「せっかくだからお弁当作ってピクニックしよう。ふふ、楽しみ~」
ディオさんと一緒の湖はとても楽しそうだ。
でも、私は循環が悪いままで・・・手は冷たいままでもいいかもしれない。
だってディオさんに温めてもらえる理由ができるから。
そんなことを思う悪い私を知ったらディオさんはどう思うかな・・・。
不安に思いながら、私はディオさんの不思議な動きを真似て、体を動かすのだった。