坐禅してもいいですか?
朝、目が覚める。
隣にいるはずのディオさんがいない。
そっと窓をのぞくと、ディオさんはいつものようにヨーガの運動を始めていた。
少し離れたところで、フェールさんがディオさんの動きを真似している。
私もあわてて外に出る。
「お、おはようございます!」
「ランラン~!おはよ~」
のんびり笑顔を向けてくれるディオさん。
「おはよう。」
フェールさんの表情は特に変わらない。
邪魔されたって怒っていたらどうしよう・・・。
そっとフェールさんをみていたらニッと笑われた。
うぅ、なんだか怖い・・・。
そのまま、3人で朝日をあびならがのヨーガをする。
一段落ついたところで、ディオさんが目をとじてじっと座る。
フェールさんも同じようにポーズをとって、目を瞑って座る。
私はいつもならこの時間に朝のお茶やごはんの準備をするけど、なんとなく二人だけにしたくなくて見よう見まねで座って目を閉じてみた。
二人だけの生活が突然終わってなんだかモヤモヤした気持ちでいっぱいになる。
ディオさん、私と二人だけの生活に飽きたのかな?
ううん、もしかしたらずっと嫌だったのかも。
ディオさんのフェールさんと私への態度が違うのがその証拠じゃないだろうか。。
だって私なんて魔力もないし、なんの役にも立ってない。
いつもディオさんに頼りきりだ。
「・・・ランラン?」
どれくらいの時間がたったのだろう。
ディオさんが私の顔をのぞきこむ。
朝日に照らされたディオさんはとても綺麗だった。
「あ・・・。」
どうしよう。
勝手に真似をしたことを怒られるだろうか?
「ふふっ、ランランもこれからは一緒に坐禅する?」
「坐禅?」
「はっ、そんなとこも知らないのか?坐禅は自己の奥底の声に耳を傾ける行為だ。実践を通して心の安定を見出すのだ。己の心の鍛錬だ。まぁ、お前には無理だからやめたほうが無難・・・」
「フェール?黙りなさい?」
フェールさんを振り向いたディオさんの表情は私からはみえないけれど、フェールさんはすぐに黙り、にっこりとディオさんに微笑む。フェールさんの頬がなんだか赤いような・・・?朝日のせいかな?
「ランラン。心を穏やかにして、外からの刺激に左右されない境地を無心というの。女神さまはこの境地にいたることが大切だっていってるの。そのためにするのが坐禅なんだよ。」
そういってディオさんが坐禅の正しい座り方などの方法を教えてくれる。
「女神さまの教えを実践するためにはいつでも平常心でいることが大切なの。坐禅のときは何も考えない状態を目指すの。」
「わ、私いろいろ考えちゃいました・・・。失敗ですね。」
「はっ、やはり其方のような者には難しいだろ・・・」
「フェール?黙りなさい、って聞こえたわよね?」
「はい。申し訳ありません。」
フェールさんに向けていた顔をディオさんが私に向けてくれる。
「大丈夫。心はろうそくと同じ。風が吹けば灯は揺れる。その灯が揺れていることに気づいで戻すことを繰り返すの。一度でできる人なんていないわ。私だってそうだよ。すぐに今日はランランと何食べようかな~とかどこ行こうかな~とか考えちゃうもの。」
「ディオッサ様、私もです!私も雑念をいっさい捨て去り、ただひたすら坐禅を組むよう心掛けておりますが、ディオッサさまの姿を思い浮かべるとできなくなります。しかし、目をつぶればいつでもそこにお姿が浮かんでしまい・・・!」
「フェール?あなた、本当に黙りなさい?」
ディオさんが振り向いて話しかける。フェールさんはなんだかぼーっとした表情になり、さらに耳まで真っ赤になっていた。
「ね、ランラン。人間は生きている以上意識を断ち切ることは出来ないわ。でも、次から次へと浮かび上がってくる雑念に振り回されないように生きることはできる。振り回されないように、自分の意識を深追いしないようにすることが大事なの。坐禅で練習しておけば、たとえ八風が吹いて、心の灯を揺れたときも、もとに戻すことができる。坐禅はその練習だから。失敗なんてないよ。することに意味があるの。」
ディオさんが私の髪を撫でる。
「・・・はい。ありがとうございます。」
「ふふ、これからはランランも一緒に坐禅しようね。」
「ディオッサ様、私も!私もお願いいたします!」
「フェール、あなたは今日もしれっと参加していたじゃない。」
「お誘いいただきたいのです・・・!」
「まぁ、いいわ。ランラン、明日からは3人でしようね。」
「はい!」
「・・・私のこともお誘いくださったと受け止めておきます。」
「さ、ランラン。今日は3人分のお湯とごはんの準備をお願いできるかな?」
「はい!任せてください!!」
私のことも仲間にいれてくれるんだ!
嬉しい。
私はなんだかとっても嬉しい気持ちで朝の準備を始めるのだった。
ディオさんの話は難しくてすぐには理解できない。
でも、大事な話だと思うから忘れないようにしたい。
今回のテーマ
・坐禅
・只管打坐
・非思量
坐禅は禅ファンタジー風に言い換えるかどうか悩みながらそのまま使いましたヽ(*´∀`)ノ