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何色ですか?

翌朝、目がさめるとディオさんはすでに起きていて、楽しそうに料理をしていた。


「あ、ランラン!おはよ~!今日はランランがいるからとっても良い朝だ~!」


そっと近づく私に気がつくとにこにこと笑いかけてくれた。


「ふふ、今日は春の香りがする風がふいてるよ!良いお出かけ日和になりそう~!」


ディオさんが小松菜や人参などの野菜が入ったスープとお芋の蒸しパンをテーブルに並べてくれる。


「コーヒーもいれたよ~。ランランの分は牛乳たっぷり入れてるよ~」


ディオさんが「いただきます」と手をあわせてから食べ始める。

私も真似してみたら、ディオさんが優しい目で私をみてくれた。


昨日のスープも美味しかったが、今日のスープもまた美味しかった。

初めてのコーヒはとても美味しかった。

私の分も料理を用意してくれるなんて、ディオさんはなんて優しい人なんだろう。



「今日はランランのお洋服とかいろいろ買おうね!」


ディオさんが楽しそうに食器を水魔法で洗い、風魔法で乾かしながらいう。



「あの、でも・・・。」


楽しそうなディオさんには申し訳ないけど、ちゃんと言わないと・・・!

言いよどむ私をみてディオさんがポンと手を叩く。


「空間魔法があるから、たくさん買っても荷物にならないから大丈夫だよ~!」


「違っ・・・。わ、私、お洋服を買うお金がない・・・。」


ディオさんはちょっと驚いた顔をしたあと、優しく笑う。


「大丈夫!お姉さんにまかせなさい!ごはん食べたら出かけるからね~」


******


ディオさんのテントを空間魔法で片付けたあと、町に向かった。

私がいた村には洋服屋なんておしゃれなものはない。

一番近い村まで行くことになった。


ディオさんはドラゴンに好かれやすいようで、野生のドラゴンに頼んで背中に乗せてもらうことになった。

ドラゴンと会話できるなんて驚きだ。


歩けば数時間はかかる道のりがほんの数分で着いた。


ドラゴンが空を飛んでるのさえも私は見たことがなかったので、ディオさんって本当にすごい人なんだなと思った。



町に着いたあと、洋服屋さんへ向かう。


「ランランは何色が好き?私はね、ピンク!可愛いでしょ?」


「ディオさんは髪色もおひさまみたいでとっても綺麗だし、可愛いです!私の髪なんて黒で陰気だし、似合う色なんてないです・・・。」


「そんなことないよー!ランランの髪色は檳榔子黒(びんろうじぐろ)みたい!檳榔子黒はね、最高級の黒色なんだよ。瞳は優しい蘭茶だし、まるで夜空に浮かぶお月様みたいだって出会ったときから思ってたよ!」


「檳榔子黒に蘭茶・・・。そんな色があるんですか?」


「そうだよ~!極東の国では伝統色っていって、赤や黄の中でも細かい色味の違いでそれぞれ名前がついてるの。蘭茶の蘭の字は極東の国でとても綺麗な花と同じ意味を持つんだよ!ランランの名前と同じ響きだし、とっても素敵だね~?」


私のいた村も家も貧乏で色をわざわざつけたものなんてなかった。

木を使ったものは茶色、石を使ったものは灰色。

使って古くなったら黒くなったり、黄ばんだりする。

だから、自分の髪も瞳も汚れたもののように言われて育ったし、私もそう思ってた。


でも、ディオさんの知っている世界では違った。

世界にはもっともっとたくさんの綺麗な色があるんだ。

私が知っている色なんてほんのちょっとしかないんだ。


なんだか不思議な気持ち。


蘭の花ってどんな花なんだろう?

森にいっても食べられるきのこしか見てないから、花の色も種類もあまり覚えていない。


私はいつも家の中にいたし、追い出されたときは許してもらうことを考えるのに必死だったから、夜の空をゆっくり見上げたことなんてない。


それでも私は目を閉じて、夜の色とお月さまの色をじっと思い出す。


私の髪は檳榔子黒、瞳は蘭茶。夜色の髪と月の瞳。


嫌いだった髪も瞳もディオさんにかかれば宝物になったみたいな気がする。


ふと視線を感じてディオさんをみるととても穏やかな笑みを浮かべて私を見ていた。

なんだか恥ずかしい。


「あ、すみません!夜の空とお月様を思い出してて…。えっと、素敵な色だって思って…嫌いだった自分の髪と瞳がとても好きかもって!」


うまく言えないけど、一生懸命伝えてみる。

ディオさんはにこにこと聞いてくれる。


「うんうん!人によって感じ方が全然違うことってあるからね。ランランの素敵なところもたくさん見つけていこうね!」


私の素敵なところ…。

自分じゃ全然思いつかないけど、ディオさんなら素敵なところをたくさん見つけてくれるかもしれない。



いままでは自分の髪も瞳もなにもかも嫌いで、どんな服を着ても何も思わなかった。

綺麗な洋服なんてないけど、もし着ることがあったとしても私なんかに着られる洋服がかわいそうだと思って着れなかったと思う。


でも、ディオさんといたらどんな服を着ても楽しそうだなと思った。


楽しい気持ちってこんな気持ちのことを言うのかな。

なんだかとっても幸せだな。


ディオさんと目が合う。

にっこり優しく笑いかけてくれる。


目が合うと嫌そうな顔をされてばかりでいつも俯いてばかりだった。

でも、これからは目があうと笑いかけてくれるディオさんと一緒だと思うと前を向いて生きていけそうな気がする。


私なりに笑い返してみる。


「もう!ランランってば本当に可愛いんだから~!」


そういってぎゅっと抱きしめてくれた。

幸せだなと思いながら、私はそっと抱きしめかえした。


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