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海に行ってもいいですか?

今日はギルドの薬草採集依頼をする日だ。


ちょっと遠出をして、初めての場所にいく。


といっても、私はまだ数回しか行ってないので、ほとんどが初めての場所になるのだけれど。



黒猫ローブをかぶる。

猫耳にはノイズキャンセンリング機能とやらがついているので、人の悪口が気になって落ち込んでしまう私にはお気に入りだ。


私が出かけることに気付いたイフーが私の足元によってくる。


「イフーも一緒にいく?」


イフーと目線を合わせるため、私はかがむ。

イフーは連れて行ってというように私の肩に手を伸ばす。

だっこして連れて行くことにする。


ディオさんがそんな私たちのやりとりをにこにこして見ていた。


「可愛い女の子と動物の組み合わせって本当癒される~。」


そういって私とイフーをまとめてぎゅっとしてくれる。


「よーし、じゃぁ行こうか。どこでも家のドア~!


白兎ローブをかぶったディオさんがいつもより高めの声でドアをあける。


このドアの先はギルドなので、私は目立たないようにフードを深くかぶり、ディオさんにくっつく。


またなにか言われたらどうしよう、と不安に思いながらディオさんの影に隠れながらも周りをそっと伺う。

青髪の女の人がじっとディオさんを見ていることに気づく。

男の人と同じくらい背が高くてすらっとした綺麗な人だけど、なんだか怖い・・・かも。

ぎゅっとディオさんのローブにしがみつく。



ディオさんは私をあやすようにそっと髪を撫でてくれる。

ギルドの依頼手続きを終えたディオさんと二人で外にでる。



「どこでもうちのドア~」


ディオさんがいつものようにいうと、来たことがない場所にでる。

なんだかいつもと違う匂いがする。


「今回の薬草はなんと海にあるんだよ!」


「海?」


なんだか聞いたことがある・・・。

そうだ、海のような心って前にディオさんが言ってた。

あのときは海が何か知らないって聞けなかったことを思い出す。



「ふへへっ!海は初めて見るので楽しみです!」


「ふふっ、きっと楽しいと思うよ~!まだ海に一番近いギルドに来ただけだけど、潮風が気持ちいいね~」


「潮風?」


「海から陸に向かって吹く風だよ~。海の香りを運んでくれる風だよ。」


「これが海の香り・・・。イフー、いつもと違うの分かる?」


腕の中のイフーをみると初めての匂いに驚いているような表情をしている気がする。



街には見たことがないものがいっぱい売っていた。


私は敷物に広げられたたくさんの三角のものに色がいっぱい塗ってあるものが気になって立ち止まる。


「お、お嬢ちゃん!お目が高いねー!これは最近流行りの貝殻だ!」


綺麗な色をした三角のものは貝殻。よし、覚えた。

内側の部分に2つずつセットになるようにいろんな色が塗ってあってとっても綺麗だ。


店主によると貝は左右一対になっていて、殻に同じ色を塗っているそうだ。


「どうだい、お嬢ちゃん!貝殻をいくつかセットで買っていかないか?裏返した貝殻のペアをあわせる遊びができるぞ!安くするよ~」


絵を描くこともできるというがそうなると高価になるとのことだった。


「対になる貝を違えないところから夫婦が仲睦まじく過ごせることを祈って、結婚する夫婦がお互いに贈り合うこともあるんだ。お嬢ちゃんにはまだ早いかもしれんが、好きな奴に送る程度なら色塗りの分でもいいと思うぞ!ずっと一緒にいられるまじないをかけてやる!」



ディオさんを見上げる。


「ふふっ、欲しいの?」


いたずらっぽく笑うディオさん。恥ずかしくて頬っぺが熱くなる。


「どれがいい?初めての海の記念に買おう。」


うれしい!

私はじーっと貝殻をみる。


「どうして青色が多いんですか?」


「そりゃあ、嬢ちゃん!海の色だからさ!」


「海は青いんですか?」


「おっ!お嬢ちゃん、まだ海を見てないのか。そりゃ、早く見に行った方がいいな。夜にみるなんてもったいないことをしちゃいけねぇ!」


「夜は青くないんですか?」


「夜の海は黒くなっちまうからな~」


「海は空の色を映してるっていう奴が多いが、どうなんだろうな。ま、海の青さをみるなら今日みたいな晴天がいいのは確かだ!」


「そうなんですね。」


「海を見るだけなら、あそこの高台に行けばいい。よく見えるぞ。そのあとうちによって嬢ちゃんが思う海の色をここから選べばいいんじゃねぇか?」


「ふふっ、それって素敵。よし、じゃぁ行こうか。おじさん、また来るので待っててくださいね~」


「あいよ!よかったら姉ちゃんもどうだ?特別に二個目は半額で売ってやるよ!」


「まぁ、ありがとう。じゃぁ、私もしっかり海をみないとね」


そういってディオさんが屈んで貝殻をじっと見つめていた私の手を握る。


「さ、行こうか。せっかくだから海をみながらごはんたべよ~!」

私が立ち上がると一緒に歩き出す。

イフーは私の足元でごろごろしていたが、ちゃんとついてくる。


「屋台でなんか買っていこうと思うけど、何がいい?やっぱ海鮮だよね~!」


「海鮮?」


「ふふっ、海でとれる食べ物だよ。」


「おお~」


屋台にいくと魚があった。


「・・・いつも見る魚より大きいですね?」


「ふふ、大きな海で育つから魚も大きなっちゃうのかも~?」


私はなにがいいかわからないので、ディオさんが魚と貝、そしてエビというものを焼いたものを買ってくれた。


イフーが手を伸ばして食べたがっていた魚もかった。



おじさんに教えてもらった高台をのぼる。

潮風の香りが強くなった。風が髪をなびかせる。


「ついた~!ランラン、これが海だよ~!」


そういってディオさんが手を広げる。


そこには大きな大きな湖があった。

湖と違うのは大きすぎて向かい側なんてなくてずっと海が続いていること。


そして、青い。


空の色をもっと濃くした青は初めてみる青だ。


「すごい・・・。」


「ふふっ、そうだね~」


「ディオさん、海が湖と違ってずっと動いてるのはなんでですか?風がずっと吹いてるんですか?」


「海が揺れてるのは波があるからだよ。お月様が海が欲しくてずっと呼んでるから波が起きているってきいたことがあるよ?」


「えっ、お月様って海が欲しいんですか?!」


「お月様に住んでるうさぎが海が欲しいのかも?」


「ええっ、お月様にはうさぎが住んでるんですか?!」


「本を読んでいる女性もいるらしいよ?」


「えええっ、お月様には本もあるんですか?!」


「私も本当かどうかは知らないけどね~。今日のお月様を一緒にみて確かめてみようね。」


「ふぇえ・・・世の中には知らないことがたくさんあるんですね・・・。」


イフーがお腹が減ったというように魚がはいった袋に鼻を近づける。

ディオさんが笑いながらごはんの準備をする。


「いただきます」


二人で手を合わせて海鮮焼きとやらを食べる。

なんだかぷりっとした不思議な食感でとっても美味しい。

イフーも美味しそうに食べている。


大空に浮かぶ雲、留まることなく流れる波。


全ては自然の流れにそってただ移り変わっていく。

私にも誰にも自然の流れを止めることはできない。ただ目の前に浮かぶ雲も海を行き来する波もそのままに動いている。

なんだかいままで悩んでいたことがどうでもよくなってくる気がする。




「なんだかすっきりした表情をしてるね?」


「・・・そうですか?」


「うん。ランランはずっと何かに縛られているように見えてたから。少し自分から離れて、外から自分を眺めるような機会があればいいなって思って海に来たの。」


そういって優しく笑うディオさん。


「自分を縛っているのは実は自分自身だった、と気づけるか気づけないかで変わることってあると思うの。縄なんて無いのに自分を縛っちゃうことってあるよね~」


「自分で無いはずの縄で自分を縛っている・・・。」


「そう。過去に起きたこととか未来に起きるかも知れないことを思い悩むのもただ自分自身がしてることなんだって気づくことは難しいからね。」


「自分自身が悩んでいるんじゃなくて、自分を縛っている自分に悩まされているってことですか?」


「ふふっ。過ぎたことを考えない、先のことを思い悩まない。無垢な気持ちでいまだけを見ることが大切なんだよ。でも、難しいの。心を曇らせているのは自分の妄想で、もともとは何もないんだけどね。すべては心がつくりだすの。」



「すべては心がつくりだす・・・。でも、ディオさん。心が不安でたまらなくなるときもありますよね?そういうときに不安を取り除くにはどうしたらいいんですか?」


「そういうときは、不安な心を出してみせてくれる?そうしたら安心を与えてあげるから!」



「はい!・・・でも、どうやって出したらいいですか?」


「そうだな~。縄でしばって出したらどうかな?」


「えっ?心にはかたちがないから縄でしばって出すなんて・・・あっ」



「ふふっ。そうだよ。心には形がないし、もともと何もないの。それがわかったなら安心できるでしょ?だって形のないものに悩みはないんだから。ないものに囚われる必要はないんだよ。」


「ふへへっ、言われたばっかりなのにまた不安になっちゃいました。」


「いいんだよ。昨日話したように、不安の風を感じてもいいの。それを戻す努力をすればいいんだから。でもね、フラグメンタが曇ってたり、クレーシャで覆われてしまうとそのことに気づくことがとっても難しくなるの。だから、日々フラグメンタを磨いていくことが大切なんだよ。」


「はい。ありがとうございます。」


「こちらこそ。ありがとうございます。」


そういって二人で目をあわせて笑う。

イフーはすでに食べ終わったようで眠っている。


「さ、食べ終わったし貝殻を買いに行こうか。ランランの見えている海の色がどんなのか楽しみだな~」


「ディオさんの選ぶ海の色も楽しみです!・・・あの、貝殻なんですけどよかったらお互いのものを一枚ずつ交換してもらえませんか?」


「ふふ!もちろんいいよ。でも私はてっきり対になる貝を好きな人に送りたいのかと思ってたよ?」


「えっ、いや・・・あの、送ってもいいんですか?!」


いたずらっぽく笑っていたディオさんはちょっと驚いた顔をする。


「もし贈ってもいいなら贈りたいです。ずっと一緒にいたいから・・・。」


「あらあら。じゃぁ、私が選ぶ海の色はランランにあげないとだね~」


「う、嬉しいです・・・。」



私は青い世界の中で耳が真っ赤になるのを感じた。


今回のテーマは盛りだくさんです!だいたい同じ感じの意味ですが、調べてみたら面白いと思います♪


・行雲流水

・本来無一物

・無縄自縛

・莫妄想

・一切唯心造

・達磨安心

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