友達といっていいですか?
朝日が昇る少し前。ディオさんが私を起こさないようにそっとベッドから出ていく。
私はこの時間が好き。
ディオさんの優しさを感じてほわっとした気持ちで起きられるから。
いままでだったらディオさんが外に出て行ったことを確認し、私もベッドから降りていた。
でも、今日は足元に白猫の赤ちゃんのイフーがいる。
足にあたるふわふわの毛並みが気持ちいい。
イフーのふわふわを楽しんでからベッドを降りることにした。
イフーってとっても可愛い。
猫の赤ちゃんってみんな可愛いのかな?
イフーにもっと触れていたいけど、ディオさんのところにも行きたい。
イフーを起こさないようにできるだけゆっくりベッドから出て、ディオさんがいる庭に向かう。
「ディオさん、おはようございます。」
「おはよ~!今日の風は花の香りがして気持良いね~」
朝日に照らされてにこにこ笑うディオさんと迎える朝。
こんな素敵な一日を迎えられる幸せを女神さまに感謝したい。
今日もディオさんと一緒にヨーガをする。
身体を調え、息を調え、心を調えるために必要な基本がヨーガにあると教えてくれた。
まだよくわからないけど、ディオさんと朝日を浴びながら過ごすと朝からふわふわした気持ちになる。
それに、普段は動かさない部位を動かすとなんだか体ってこんな動きもできるんだ~とくすっとした気持ちになるから楽しい。
ヨーガが一段落したところで私はさきに部屋に入る。
ディオさんはヨーガがおわったあと、しばらくじっと座って過ごす。
私は邪魔をしないために離れるようにしている。
それにハーブティーを入れるお湯の準備をすることが私の仕事だから。
井戸水さんに感謝して、美味しいお水をもらう。
今日のお水もとっても冷たい。
ついでに顔も洗えば、しゃっきりする。
「よし!」
自分を応援するために声にだす。
井戸水は美味しいけど、水瓶に水をためるのはちょっとだけ大変だから気合いが必要だ。
でも、これは私の大事な役目だからがんばれる。
ハーブティーのお湯の準備ができた。
戻ってきたディオさんがミントティーをいれてくれた。
すっきりした気持ちになれる。
朝ごはんはスープとパン。
とっても美味しい。
イフーが食べられそうなものをあげてみたけど、食べなかった。
もともと一人で森で暮らしていたみたいだから、自分でごはんを探して食べるのかもしれない。
今日はごはんを食べたあとの散歩のときにイフーを森に案内したいとディオさんに伝えてみた。
ディオさんは笑顔で賛成してくれた。ついでにお昼ご飯はピクニックにしようということで、お弁当を準備することになった。
わくわくした気持ちになる。
お弁当を準備したあと、ディオさんと私、それからイフーで森に出かける。
イフーは私の足元をぐるぐる回りながらついてきてなんだか可愛い。
イフーに私のお気に入りの花や果実など森の好きなところを教えた。
とっても楽しい気持ちになる。
今日のピクニックの場所は小川が近くにある原っぱだ。
イフーが魚を好きかもしれないから、魚がいる場所で過ごすことになった。
イフーはすぐにご飯を取りにでかけた。
追いかけようとしたけど、すぐにいなくなったので待つことにした。
イフー、大丈夫かなぁ?
そわそわした気持ちになる。
「ふふっ、ランランに素敵なお友達ができたみたいでよかった~」
ディオさんが笑う。
「友達ってなんですか?」
「友達っていうのはね、手を取り合って苦しい時も悲しい時も、共に分かち合っていける存在だよ。信じて、頼りあえる存在になるには時間が必要だけど、ランランとイフーはきっと最高の友達になれると思うよ~」
友達。
私の初めての友達はイフー。
「私は嬉しいけど、イフーは私なんかが友達でいいのかな・・・」
心の中で思っただけのつもりが言葉になっていたみたいだ。
「この広い世界の中でランランという人間はたった一人だけ。代わりなんていない尊い存在なんだよ。私なんか、なんて言葉を使ったら悲しいよ?」
優しく頭を撫でてくれる。
「まずは自分のことを大切な存在だって受け入れることが大切。そうしたら、たった一人の自分と同じように相手も尊い存在なんだって自然に思えるでしょう?お互いがお互いを認めあうことが大切で、そうやって昨日まで知らなかった他人が自分にとってたった一人の大切な友達や家族になっていけるんだよ。」
「・・・どうしたら自分のことを大切な存在だって思えるんですか?」
私は思い切ってディオさんに聞いてみた。
ディオさんは黙って微笑み、私の頭を撫でる。
「フラグメンタの話、覚えてる?」
「人生の主人公になるためにはフラグメンタを磨く・・・でしたよね?」
「そうそう、よく覚えてたね~!自分を大切にできないときっていうのはね、他人や理想の自分と比べちゃって自分はダメだって思ってしまうからだと私は思うの。『こういう自分じゃなきゃいけない!』みたいな気持ちが強くなるとね、フラグメンタの輝きがなくなっていっちゃうの。そうしたら自分を大切だって思うのがとっても難しくなるの。」
ちょっと分かるかもしれない。私はずっと母や父、兄弟にいらない子だといわれてきた。私自身もみんなに迷惑をかけるだけ存在の自分が嫌いだった。髪が黒じゃなければ、もっと器用にできたら、そうやって自分じゃない自分にずっとならないといけないと思っていた。
「どんな環境にあってもフラグメンタの輝きを失わず、何にも影響されないありのままの自分を見つけることができれば自然と自分を大切にすることができると思う。ランラン自身が主人公になること、かなぁ~」
ちょっと難しい話しちゃったね、そういってディオさんが私の背中を優しく撫でる。
「さぁ、お昼ご飯を食べよう!」
そういってお弁当を広げて、ミントのハーブティーをカップに注いでくれる。
ちょうどイフーも帰ってきた。
お腹がいっぱいと満足げな表情をしている。
よくみると口になにかを加えているようだ。
イフーが私の手に口にくわえていたものを乗せてきた。
「これ・・・」
行きに私が好きだと伝えた果実。イフーが枝ごと持ってきてくれた。
「わぁ!イフーはランランが好きな果実を覚えたんだね~。イフーはもうランランのことが大好きみたいだね?」
「あ、ありがとう。イフー。」
私の初めての友達。
私なんか、なんて言わない自分になるためにがんばろうと私は思うのだった。
調身・調息・調心
把手共行
天上天下唯我独尊
随処作主
今回は上記をテーマに書いてみました。
ランランが自分を好きになる過程を書いていきたいなーと思ってます。
私の中での第二章の幕開けです。
起承転結の「承」のイメージです。
○おさらい○
主人公
仏性(=フラグメンタ)
上記については↓でも書いてます。
主人公になれますか? https://ncode.syosetu.com/n3952fx/5/