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宵を待ってもいいですか?

他作品からこちらの作品を読んでくださったとの感想をいただき、とても嬉しく思います!

作家から作品を探して頂けるなんて小説家冥利につきます(´;ω;`)


見てくださってるすべての方に改めて感謝です!

ギルドで登録をした日の夕暮れどき。


ディオさんが夜の散歩に誘ってくれた。


また水月を見に連れて行ってくれるのかなと思いながら、早速ローブをかぶって出かけられる機会があって嬉しい。



ディオさんにもらったロッドも忘れないようにローブの胸ポケットに入れる。



ディオさんと二人でのお出かけだからフードはかぶらずにいこうと思ったけど、ディオさんがウキウキでうさ耳のついたフードをかぶっていた。なので私も真似をしてフードをかぶってみた。



「猫耳のランラン!最高に可愛い~!!!」


そういってぎゅっと抱きしめられた。


ディオさんが喜んでくれるとなんだかほわっとした気持ちになるのはなんでだろう?




ディオさんが水筒に温かいハーブティーをいれたあと、出発した。



前に出かけた湖とは違う脇道を進む。



そこにはひとつのつぼみがあった。



「これはね、宵待草っていって一晩だけ咲く花なんだよ。」


「一晩だけ・・・ですか?」


「日が暮れるのを待つ、って意味のお花だよ。一緒に咲くのを見よ~」



固く閉じた黄色いつぼみの中央がぽんっと緩む。


日が暮れるのにあわせて。ゆっくりと花びらを開かせ、淡い黄色の丸い形の花が咲いた。



「綺麗・・・」



「ふふ、ランランの瞳と同じお月さまの優しくて綺麗な色だね~」



ディオさんには私の目がこんなに綺麗にみえているのかな?

もしそうならとってもほわっとする。



「ランランはこの花は誰のために咲いていると思う?」


「誰のため?」


「そう。こんな暗くなってから咲いても誰にも見てもらえないと思わない?」


「あの、お花って誰かに見てもらうために咲いてるんですか?」


「・・・ランランはどう思う?」



分からない。なんて言えば正しい答えなんだろう?

でも、ディオさんは私がどう思うか聞いてくれた。

そしたら、私が思うことを答えてもいいのかもしれない。


「もし、私がお花だったらこれだけ綺麗な花を咲かせることができたらそれだけで十分嬉しいと思います。誰かに見てもらおうとまでは考えられないです。」



私は言葉を考えながら一生懸命伝える。

ちゃんと答えになっているだろうか。


ちらりとディオさんの顔をみる。

ディオさんは優しく私に微笑んでくれる。


「そうだね。花は咲くために咲いてる。たった一晩、誰もいない場所でただ咲くために咲いてるんだよ。」



そう言うと私の頭を優しく撫でてくれる。



「花が咲く意味を考えるよりも、いまここにある花を綺麗だなって思う方が大切だよね。」


ディオさんはそういって視線を宵待草に戻す。

私もじっと花をみる。とっても優しくて綺麗な色。



「今日ね、ランランのことをギルドで言われたときにとっても腹が立ったの。」


私は黙って聞く。

なんて言ったらいいか分からないから。



「なんでそんなことを言うんだろう、って考えたら 、怒りがどんどん大きくなっちゃって。でもね、隣でじっとランランが耐えてる姿をみて思ったの。誰に何を言われたって、こんなに素敵で可愛いランランがここにいる事実は変わらないって。」



ディオさんがそっと私の手を握ってくれる。



「人の言葉にね、悪意があるかどうか決めるのは自分の心なんだよ。誰に何を言われたって自分がちゃんとわかっていたらそんなことに振り回されなくて済むの。」


私もまだまだ修行が足りないな~って思ったよ、と少し困ったように笑う。



「花は咲くために咲く。そこに意味を求める必要はない。他人の言葉だってそこに悪意があるかどうかなんて気にする必要はないし、それでランランの価値が変わるなんてことはないことを覚えていてね。」



「はい」



優しいディオさんが私のために怒ってくれたんだ。

なんだか心の奥が温かくなって、鼻の奥がツンとする。


「前にいった6つの蜜覚えてる?」


「・・・ごめんなさい。」


「ふふ、いいんだよ。それにね、『つらいことがあっても負けないこと』っていうのがあったでしょ。まずはそれだけ覚えてくれたら嬉しいな。」


こくりと頷く。

私はつらいことがあっても負けない。

つらい過去になんて負けない。


ディオさんと出会えたことで私は自分の過去をつらいことだったんだと知ることができたから。

いまが幸せだからそう思える。それは幸せなことだって思う。



「じゃぁ、今日も湖に行こうか~」



そう言って歩き出す。湖には前に来たときと変わらずに綺麗なお月さまが浮かんでいる。



「ムーンストーンはね、定期的に浄化が必要なの。お月さまの光があたるところにおいておこうね。」



そういって空間魔法で水晶石をとりだし、私のネックレスとロッドを置くように言われる。



「その間に私たちはお茶会をしよ~」



ディオさんが用意してくれたのはシナモン入りのカモミールティーをシートの上でゆっくり飲む。シナモンをいれると体が温まってよく眠れるそうだ。



「良い日も悪い日もただありのままに生きることが大切なんだよ。宝物みたいな思い出が出来た日も大切なものを失った人も『よし!今日もいきるぞ!』っていう気持ちを持てるように頑張ろうね。」



よし!なんて思ったことないかもしれない。



「よし!今日から黒魔道士としてがんばるぞ!」



私の突然の宣言にディオさんは驚いたような表情をする。

あれ、間違ったかな、どうしよう・・・。

顔が赤くなるのを感じる。



「よし!白魔道士として後輩育成がんばるぞ!」



ディオさんが立って宣言する。


私も急いで立つ。


ディオさんが私に向き合い、おでことおでこをコツンと合わせる。


「ランランと出会えてよかった。これからもよろしくね。」


「・・・こちらこそです。」



湖に浮かぶ二人の影を月明かりが優しく照らしてくれていた。


「百花春至為誰開」と「日々是好日」をテーマに書きました♪

ついつい他人の悪意や出来事に感情が振り回されがちなランちゃんと作者ですが、ディオさんの教えを胸に人生の『主人公』として生きていけるようにがんばります!!



*禅的な主人公の意味はこちら↓


主人公になれますか?

https://ncode.syosetu.com/n3952fx/5/


ちなみに上記の章のあとがきに6つの蜜についておさらいしてますヽ(*´∀`)ノ

作者も「六波羅蜜」がなかなか覚えられません。私が覚えるまで、ランちゃんも6つの蜜は覚えられないという連動した設定になってます・・・笑

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