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双橋

「周恩来という人は実に偉い人です」

「そうですね」

「日本の京都に嵐山というところがあります」


「ええ、私の故郷ふるさとです」

「そうですか!そこの亀山公園というところに周恩来

の碑があります。一度訪ねてみたいと思っています」


「亀山公園は私の実家のすぐ近くです。確かに周総理

の碑というのがあります、雨中嵐山とかいう。

子どもの頃によく遊びました」


「よくご存知ですね。まさしく雨中嵐山。周総理が

21歳の時に書いた詩です。雨の中に一筋の光がさして


緑と点在する桜の木が冴え渡る。暗雲の中一筋の光明を

見出したようだ、と周恩来は歌っています」


二人は双橋の北詰に着いた。

「ここでもし、二人が別れたとしても」


と言って静江を右に、孔明は左の橋げたを

歩き始めた。孔明は話し続ける。


「人生にはいろんなことがあるでしょう。

それぞれの荒波を受けながらも、なかなか

会うことができません」


孔明はゆっくりと歩きながら語り続ける。

「でも愛があれば。信頼があれば。誠の愛があれば。

・・・・・・・・・・・こうして二人は又会える」


双橋の南詰めで孔明は両手で静江の手を取った。

「あ、ごめんなさい」

なるほど、そういう意味があったのか。


逢源双橋。沈む夕陽に見とれながら

静江は一人で感心していた。


「綺麗な夕陽でしょう。世界一です」

「世界一。・・・・孔明さん、ご結婚は?」

「私はまだ結婚していません」


そう言って孔明は公園と舟泊りの2つの橋を渡る。

静江が滑りかけて孔明が又静江の手を掴んだ。


「来年アメリカに行きます。二年前に私がその希望を

話した時、私の付き合っていた人は私の前から去って

行きました。それきりです。私は去年、

アメリカでの就職を確定しました」

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