おじいちゃん、ありがとう!
人々は二人を祝福して花びらを投げつける。
たくさんの花びらが川面に浮かぶ。
拍手は鳴り止まず歓声が続いている。
橋を渡り終えて二人は楽団員に深々とお辞儀をして
観衆のほうに振り返り手を上げて歓声に答えた。
花火が上がって孔明と静江の結婚式は終わった。
「おかあさん、ごめん。いきなり結婚式だったものだから」
「いいんだよ。中国なんだから。何がおきても驚かない。
おおらかな国柄なんだよ。それに二回目だしお前は。
元気で行っておいで」
半年後、アメリカの静江から母に手紙が来た。
「おとうさん、おかあさん、お元気ですか?
こちらはいたって大ざっぱで、思っていたより
はるかに優雅に暮らしています。
大陸的なところは全く同じなのですね。周囲は
国際色豊かで、たくさんの友人ができました。
子育てで頑張っているお母さんもたくさんいます。
色んなサークルがあってその気になれば日本にいる
時より忙しくなるかもしれません。皆マイペース
人たちばかりなので気を使わないで済むのが一番です。
もう少し落着いたら両国のお母様方をお招き
いたしますので楽しみにして待っていてください。
思い返してみると、ほんとに激動のこの一年でした。
きっかけは全ておじいちゃんの形見が最初でしたね。
遺言どおりに双橋から川に捨てられなかったのにも
きっと二人の執念があの写真と手帳にはこもっていたので
しょう。今静江は最高の幸福をじっと噛み締めています。
おじいちゃんに大感謝しています。
一周忌には帰れませんでしたが。おじいちゃんによろしく。」
−完−