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新郎新婦

いよいよ6月30日。曇天だが風はさわやかだった。

孔明は大きな絵画用の脚立を抱えて逢源双橋の南広場

の隅にカンバスをセットし絵を描き始めた。


烏鎮の水郷の景観が最も美しく見える位置だ。この時期

観光客はほとんどいない。川辺で若者が写真を撮っている。

孔明は後方で邪魔にならないように静かに絵筆を走らせた。


水彩である。ほぼ完成しかけていた。

写真を撮っていた若者が覗き込み、


「あれっ?この二人のモデルの人はどこ?」

「いま、昼食中でいないんです」

「なるほど」


絵には一組の新郎と新婦が描かれていた。

白のウェディングドレスとタキシード。

背景はすばらしい烏鎮の川辺の風景だった。


静江はウェディングドレスの入ったトランクを重たげに抱えて

烏鎮のバスターミナルに降り立った。一人の女性と数人の

子供たちが駆け寄ってくる。美麗の姉さんだ。


「わあ、なつかしい」

「ようこそ。歓迎歓迎」


二人の少年がトランクを運ぶ。何か耳打ちされて一人の少女が

笑顔で走り去っていく。


「孔明はもう双橋で待ってるよ。うちで着替えて

橋へ行きましょう」

「はい、わかりました」


静江は急いで王宅へ向かいウェディングドレスに着替えた。

庭先は大きく飾り付けられ宴会の準備が整っていた。


『まじ、これ、今日結婚式みたい?』

正装した姉さんが静江に声をかける。


「橋の北詰に孔明がいます。あなたはにっこりと笑っている

だけでいいですよ。ああとても綺麗。綺麗ですよ静江さん!」


ウェディングドレス姿の静江が姉に手を引かれて石畳へ出た。

いつのまにかたくさんの人垣ができている。

花火が上がって橋の方からファンファーレが鳴って


楽団が結婚行進曲をかなで始めた。道一杯の人たち。

石畳を皆が拍手で送る。縁者が花嫁の後に続く。

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