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小包

「ふーん。プロポーズされたの。あのイケメンに。

へえ、やっぱり、うれしいでしょ」


母は笑いながら、ちょっとその指輪に触れて

静江の指からはずした。


「あら、私の小指にしか入らないわ。

すごい人だね、この人。よそに盗られないように、

しっかり自分を磨かなくてはね」


「そうね。で、どう思うこの手紙?」

「そりゃ、もう行くしかないね。

おとうさんもきっととそういうよ」


「おとうさんはね。もともと開かれた人だから」

「私だって開かれた母だよ。アメリカだって

どこだって、さっさと行っちまえ」


「ありがとう、おかあさん」

手紙の文面をじっと見ながら母は、


「まちがいない、この手紙は指輪と一緒に

最初から書いて用意してあったんだよ。

すごい人だよこの人は。ふふふ」


「返事を出した方がいいかしら?」

「馬鹿だねこの子は。何もしちゃいけないよ、突然行

くんだよ。決意を固めてね。彼は今忙しいんだから」


「そうだね。耐えなきゃね」

「成長したね、お前。もう何がおきても大丈夫だね」

「うん、もう大丈夫。お母さんの娘だもん」


母と娘は大声を出して笑った。



6月20日、蒸し暑い雨の日に小包が届いた。孔明から

である。母が大きな包みを抱えてきた。


「彼からの贈り物。多分、服だと思うわ。ドレスのような」

「ドレス?」


開けてみると、それは純白のウェディングドレスと靴だった。

ピンクパールのネックレスとイヤリングも入っている。


「やっぱり」

「どうしよう?」

「とにかく着てみるしかないね」


「手紙とか入ってないみたい」

「入れ忘れたのかもね」

静江がドレスを試着する。


「まあ、ぴったりじゃない。とてもお似合いよ。世界一!」

静江はひらりと一回転した。


「ええっ、当日もう結婚式なの?」

「それはないと思うよ。いくらなんでも」

「ま、何がおきても驚かない」


「そうそう。覚悟が第一」

「それじゃまあ、行ってくるわ」

「おいおい」


母と娘は楽しそうにふざけている。



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