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八条口

静江は旅館でなかなか眠れなかった。

『全てのことに意味がある』

『一度しかない人生』


孔明の笑顔と逢源双橋が写し重なる。

この言葉が何度も静江の耳元に響いた。


年が明けて1月下旬に、静江のところに

航空便が届いた。4月12日午前11時

京都着。午後5時帰京。わずか6時間の


京都見物だ。母の協力を得て移動はすべて

母の運転する車。誠に申し訳なく思いながら、

「いえいえこちらこそ」と母も興味津々。


美貌の青年となると母娘とも心は浮ついてくる。

時はまさに桜花爛漫、桜吹雪の嵐山。


「アメリカねえ。永住するつもりなんでしょう、

そのひと?」

「たぶん」

「シリコンバレーてどんなとこ?」

「全然知らない」

「そう」


「一度しかない人生」

「そうよね。一度しかない人生だよ、静江」

「でもまだプロポーズされた訳でも何でもないのよ」


「だけど、あなた間違いなく張り切ってるわよ」

「お母さんこそ」

母と娘はいつになく華やいでいた。


4月12日は暖かい無風の春霞。それでもちらり

ほらりと桜は散り続ける。次の一夜の嵐で


全部散ってしまうのかと思うと、風よ吹くな

そっとしといてと手を合わせたくなる。


京都駅の八条口で母を待たせ、孔明をつれて

戻ってきた時の母の一瞬のあんぐりとした驚きを

静江は見逃さなかった。


「はじめまして王孔明です」

「静江の母です。さ、どうぞどうぞ」

後部のドアを開けて二人が乗り込む。


「では行くわよ」

母の声は少し上ずっていた。

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