使命
「私は・・・・」
「あなたの事は手帳に書いてありました。
おじいさんも中国へ行かれたあなたの心を察して
この使命を依頼されたと思います」
「使命?」
「そう、使命です。祖母とおじいさんの最悪の
出会いを、孫達の最高の出会いにできれば
いいと思います」
「えっ?」
孔明は静江の。いぶかしげな顔をやさしい
温かい笑顔で包んだ。
「元気を出して、静江さん」
静江もつられて笑顔になった。
「一度しかない人生、もっとダイナミックに楽しみ
ましょう。いろんなことがあったほうが味がある。
僕はそう思います。全てのことに意味があると」
「全てのことに意味がある?」
「そうです」
「一度しかない人生?」
そうです、そうですと言いながら孔明は先を行く。
土産品店で藍染の帽子を手にしながら、
「来年の春、最終の企業研修で東京に行きます。
一日だけ休みがありますので、京都に行こうと
思いますが。嵐山を案内してもらえませんか?」
「ほんとですか?」
「ほんとです。詳しい日程は年明けてから、
1月中にお知らせします」
「是非お越しください。母と一緒に喜んで
御案内させていただきます」
「ありがとうございます。今回は母もおばさんも
ほんとに驚いて喜び感謝していました。孫の僕
からも、孫のあなたに心からお礼を言います。
本当にありがとうございました」
孔明は深々と頭を下げた。
「そんなに頭を下げないでください。ほら、
皆が見て笑ってるじゃない」
孔明は頭を上げて笑った。
静江もつられて笑った。