表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

特異性発揮物体 4-061

作者: vaniglia

 最後に眠れたのはいつだったか。夢と現実の狭間を漂う意識でふと思った。

 ついさっきまで眠っていた気もするし、あの時からまともに眠っていない気もする。それすらも分からないくらいには意識が虚ろだ。

 いや、もしかしたら実際は数日も経っていないのかもしれない。窓も時計もないこの部屋では何もわからない。

 灰色のコンクリートが丸見えの、なんの装飾もない貧相な私の部屋。私の髪の色と同じ、無機質で、汚らしくて、冷たい色。私にはそのくらいが丁度いい。


 あの日は、久しぶりに叔父さんの家族も集まってのホームパーティだった。生意気だけどそれがまた可愛い弟の誕生日パーティも兼ねていて、終わったらみんなでプレゼントを渡す筈だったのに。

 私たちは何も知らないでチキンの脂で口と手をベタベタにしている弟を見て、顔を合わせて笑っていた。その時の事を思い出して今も口角が上がりそうになる。


 ───けれど。

 思い出してしまう。

 それを壊したのは私。みんなみんな、私の顔を見て狂ってしまった。


 お母さんは金切り声を上げながら、さっきまでチキンを切り分けていたナイフをお父さんに突き立てた。

 叔父さんは愛おしそうに撫でてていた我が子の頭を、鬼のような形相で捻って殺した。


 悲惨だった。

 血が飛び散り、家族の骨の欠片が壁に突き刺さり、さっきまで仲良く談笑していたみんなは、いつしかそれが人だったとも分からない、血塗れの肉の塊になっていた。私は家族だった人がただの肉塊に変わるのが信じられず、かと言って怖くて止めることもできず、ただただ部屋の隅で食べたばかりの食べ物を戻すしかできなかった。


 泣きながら、出すものもないのに嘔吐(えず)いていたら、いつの間にかグチャグチャという粘着質な音が止まっていた。吐瀉物で汚れた口を拭いながら顔を上げる。

 目に入ったのは地獄。この世の物とは思えない、愛する人達の血と肉と脂で汚れた部屋。その真ん中で、動く影があった。


 弟だった。

 弟は傷だらけの体で、お父さんの腸に叔母さんの指を詰めた、おぞましい腸詰めを引き摺って私に歩み寄ってきた。

 訳が分からない。

 認めたくない。

 けれど、それでも弟は生きていた。唯一生き残った家族を、私は血に汚れるのにも構わず抱き締めた。

 何があったかは分からない。けれど、あんなに優しいみんながそんな事をする筈がない。悪魔に魅入られたのだ。でなければおかしい。


 ちゃんと、警察の人にもそう言うから。お姉ちゃんは何があっても味方だから。そう、嗚咽しながらも繰り返し弟に語りかけた。

 けれど気付いた。弟が動かない。喋らない。

 不思議に思い、涙を堪えながら顔を上げると、弟は白目を向いて死んでいた。

 さっきまで生きていたのに、私の、腕の、中で、弟が、死んだ。



「あ、ああ、ああああ……」



 意識が現実に引き戻される。

 私は一人。温かい家にいるのではない。惨めで汚らしい、コンクリートの部屋にいる。

 そして、家族を殺したのは私。

 私のせいでみんなが死んだ。



「ああああ! ああああああっ!」



 耐えられない。愛した家族があんな風になったのも、私のせいでみんなが死んだのも、私の腕の仲で弟が死んだのも、全部全部耐えられない。

 私が悪いんだ。全部私が。

 顔の火傷跡が熱を持つ。


 それ知った時は、それを教えてくれた人が持ってたライターで自分の顔を焼いた。

 私の顔が悪いんだ。それなら無くなればいい。見るに堪えないほど焼け爛れて、誰も見たがらないような顔になればいいんだ。

 けれど、そうなる前に止められた。痕が残るくらい酷い火傷だったけど、けどそれだけだった。

 今では私を傷付けられそうな物は全て没収されてしまっていた。


 けれど、それでもこの衝動は収まらない。私が殺したのに。今も安穏と生きている。私のせいで死んだのに。

 ザラザラとしたコンクリートの壁に顔を擦り付け、肉が裂け血が流れるのにも構わず傷付ける。

 すぐに壁が私の血と肉で紅く染まった。

 それでも止めない。

 止めてはいけない。

 このまま、私の顔が無くなって、ちゃんと向き合って─────そして、みんなに謝りたい。




 ────────────────────




「睡眠ガス、充満しました。対象4-061意識喪失」


「そう。今週何度目かしら」



 収容手順通り、透過率が50%以下に抑えられたレンズの監視カメラを通して対象が倒れるのを確認する。


 特異性発揮物体4-061。

 普通の一般家庭、警察、研究所の回収班。その全てが原因不明の狂気に囚われて殺し合った悲惨な事件。

 その中でただ一人生き残った、たった12歳の少女がそう呼ばれていた。



「対象の精神状態は日を追う事に酷くなっているように思います。いずれ自ら命を絶ってしまうのでは?」



 監視員の危惧にため息を返して頷く。



「ええ。分かっているわ。対策も申請してある。けど、まだ実験が不十分だから許可が降りづらいのよ」



 対象4-061を収容して8ヶ月。標準的人型特異性発揮物体の対応書に従い、対象がなるべく人間らしくない部屋を望んだという理由で受理された収容室の変更。

 希望されたコンクリート壁をまさかあんな風に使うなんて想像もしていなかった。



「医療班に指定防護服を着用させて治療に向かわせて。治療には対象3-183の使用を許可する。対象が目を覚ます前に完了させるのよ。いいわね」


「了解」



 指示を受け監視員が医療班にそれを伝えた。

 少しして、収容室のカメラに顔のアクリル部分が磨りガラスのようになっている特殊な防護服を着た医療班が写った。

 彼らは対象の触れないよう、またできるだけ顔を視界に入れないように対象3-183を使用しての治療を始めた。



「対象の自傷行為を防ぐ為にも拘束してみては? 鎖や手錠など使わなくても拘束服を使えば良いのではないかと思うのですが」



 先日、拘束具による自傷行為の危惧を理由に却下された事を踏まえて、監視員が拘束を提案する。


 確かに、拘束服なら対象を傷付ける心配はない。使えそうには見える。だが、それは既に検討された上で却下されていた。



「壁はダメでも床があるわ。あの狂気は到底防げる物じゃない」


「何がなんでも、という意思が垣間見えますね。いっそ収容室の硬質な物を全てスポンジで保護してみるのは?」



 監視員の冗談混じりの提案。私も冗談で返す。



「あら、それはいいわね。あなたの提案という事で提出しておくわ」


「勘弁して下さいよ」


「それじゃ、明日は対象4-061の第4実験が予定されてるわ。準備よろしくね」



 少し笑みを交わして私は監視室を出る。

 腕時計を見ると既に日が変わっていた。

 どうやらまた集中し過ぎたようだ。窓が無いとこれだから困る。

 そろそろ寝よう。この研究所はありとあらゆる危険を寄せ集めた宝庫だ。寝不足でいては、どこでミスするか分からない。中にはちょっとした事で世界が滅びかねない物もある。

 それを防ぐ注意力を回復させるため、私は私室に向かった。

 頭の中では、この際一周回ってバカバカしい対処法もいいかもしれないと思いながら。



 ─────────────────



 いっそ暴力的なまでの目覚まし時計の音で目が覚めた。

 もう少し寝ていたかったのに。文句を垂れつつも、対象4-061の実験責任者という立場上、起きない訳にはいかない。

 まだ自分の温もりが残るベットから無理矢理体を引き剥がし、無駄だと知りながら寝癖を手で撫で付ける。

 私の寝癖は頑固で、ヘアアイロンだのなんだのと道具を駆使しなければとても直るものでは無い。朝の体が思い時間に格闘するのは疲れるが、いい加減慣れたものであった。


 ベットから降り、未だ抵抗する瞼を擦りながら洗面台に向かうと、途中で来訪者を告げるブザーがなった。

 はて、何か来客の用事があっただろうか。少なくとも上の立場の誰かが来るという予定は聞いていない。それなら、このまま出ても構わないだろう。

 扉の横のパネルを操作し、オープンのパネルをタッチすると空気の抜ける間抜けな音がして扉が開いた。

 その向こうには昨日の監視員が立っていた。



「あなたね。待ってて。今用意するから」


「……もう少し女性らしさを意識した方がいいと思うのですが」



 言われて自分の格好を振り返る。髪は寝癖であっちこっち飛び跳ね、服も寝やすさ重視で手も足も出てる。言われてみればそうなのかもしれない。

 純真な監視員は顔ごと目を背けつつ注意してくれるが、そもそもこんな所にいて女らしさだのと言ってられない。そうは思いつつも既にそんなものは諦めていた。

 まだそっぽを向いたままの監視員に中で待つよう促し、今度こそ洗面台に向かう。

 寝癖を直すために格闘しつつ今の状況を聞いた。



「準備は?」


「概ね完了しています。レベル1実験員の選定も済み実験室の用意も整ったので、後は対象の移動とその許可を」


「実験員は4人よね。男2人女2人にした?年齢は4人とも近い?」


「問題ありません」



 優秀な班員だ。結果に偏りが出ない為に、出来うる限り条件を整える。寝る直前にそう言えば指示し忘れたなと思ったのだが、なんの問題もなかった。



「ならいいわね。それと、一つ気になる事があるんだけど」



 頭の左側の特に厄介な所に手を伸ばしつつ、声を上げた。声は聞こえないが、ちゃんと聞いているだろう。



「あなた、ちゃんと睡眠は取った?」



 息が詰まったような気配を感じた。

 そんな気はしていたのだ。私よりも遅くまで働いて、更に私が指示したとは言え準備にも関わって今起こしに来る。とてもじゃないが眠る時間があったとは思えない。



「……仮眠は取りました」


「それがなんの役に立つっていうの。今日の実験からは外すわ。しっかり寝なさい」


「しかし」


「あなたの不注意で世界を滅ぼす気?」



 監視員が言葉に詰まった。

 当然だ。世界を滅ぼした責任を背負えと言われて背負えるやつなんかいない。

 そして、この研究所にはうっかり()()()()()()()だけで冗談みたいに世界を滅ぼすような物もある。寝不足だったでは済まされないのだ。



「いい? ここはただの研究所じゃない。世界を守り、解明する研究所。徹夜の研究成果が賞賛されるのは外だけだと思いなさい」



 そう。徹夜なんて以ての外。疲労が溜まっていれば注意力も判断力も反応速度も何もかも鈍る。故に上から下まで全てにおいて徹底して休息は重視されている。

 と言っても、彼のようにまだ経験の浅い職員はそれを理解していない事がある。外では徹夜をしようが成果さえ上げれば賞賛されるだろうが、ここでは違う。

 どんなに優秀な成果を上げようと、しっかりとした休息を取っていなければまず厳重注意を受け、その後疲労のせいでトチ狂った報告をしていないかの検証がなされる。

 慎重には慎重を重ねても足りないのがこの研究所なのだ。



「失礼しました。睡眠を取ってきます」


「ええ。けれど、できればその前に実験室に寄ってすぐ行くと伝えてくれるとありがたいわ」


「分かりました」



 先程と同じように空気が抜けるような音がして、監視員が部屋を出ていった。

 さて、私の寝癖もようやく直ったところだ。待たせても悪いし、さっさと朝食を食べて実験室に向かおう。確か、献立によると今日の朝食にはソーセージ(腸詰)があったはずだ。




 ──────────────────




「ごめんなさいね、遅くなったわ」



 対象4-061の第4実験が行われるのはここ、第3実験室だ。対象4-061専用の実験室に改修されたこの実験室は、簡単に2つに分かれている。

 片方には対象を拘束する拘束台があり、更に天井の四隅には半透明のレンズの監視カメラが設置され、その映像はもう1つの部屋にあるモニターに接続されていた。この2つの部屋を隔てる仕切りには分厚い半透明のアクリルガラスが嵌め込まれている。


 全て対象4-061の顔を認識しないようにする為の必要措置であり、実験を行う私達の命を守る生命線と言えた。



「予定通りです。問題ありません」



 先程の監視員とは別の研究員が答えた。

 手元にはバインダーとストップウオッチを持っている。



「良かったわ。それじゃ、対象の搬送をお願い」



 マイクの前に座る研究員が頷く。彼女は全館放送のスイッチを入れ、研究所全体に勧告を発した。



「特異性発揮物体4-061の実験を開始。対象は規定通りのルートで搬送予定。指定防護服を着用していない研究員及び実験員は速やかに退避すること。繰り返す。特異性発揮物体4-061の実験を開始対象は──」



 対象はまず麻酔ガスで眠らされた後、顔を完全に隠して拘束具で括りつけられて連れてこられる手筈だ。


 程なくして、指定防護服に身を包んだ研究員が彼女を連れてきた。そのまま部屋の中央にある拘束具に固定され、気付け薬を注射された後顔を隠していた袋が取り除かれた。

 はっきりとは認識できない。全て半透明のアクリルガラスに阻まれる。けれど、でなければ私達が死ぬ。クリアなガラスを通して観察したい所だけど、こればかりは仕方がなかった。


 やがて意識が戻ったようで、ゆっくりと顔を上げる。



「これより、対象4-061の第4実験を始める」



 私の宣言で、実験が始まった。




 ────────────────────




 強い光を感じて目が覚めた。一瞬何もかもが夢で、私は住み慣れた自分の部屋で眠っていて、横では起こしに来たお母さんが眉間に皺を寄せているのかと思った。

 だが、違う。そんなはずはない。あれは夢ではないのだ。


 はっきりとしない意識が、スピーカーの耳障りな音で叩き起こされた。



「これより、対象4-061の第4実験を始める」



 実験……実験。

 だめ、だめ、絶対にだめ!



「んーっ!」



 声を上げようとしたが、それはゴムの口枷を噛まされていて叶わなかった。

 これまでに3回、実験をされた事がある。

 1回目は私の顔を隠して。その時は何も起こらなかった。

 けれど、2回目と3回目は違った。私は顔を見られた。そして、死んでしまった。私に触れて、弟のように体を震わせて死んでしまった。


 また、実験をするんだ。私の顔は隠されていない。また誰かが死ぬ。他でもない、私のせいで。



「んーっ!んーーーーっ!!」



 止めるよう叫んだ。けれど、口枷を嵌められては声に出すことなんてできるはずもなく、私の喉からは呻き声だけが漏れた。

 激しく首を振った。

 だめ、止めて。これ以上私に誰も殺させないで。



「レベル1実験員入室」



 ああ、もう遅い。人が入ってきた。顔を隠しもせず、無防備に。

 1人だけかと思ったのに、その後ろからはまた人が入ってきた。

 男、男、女、女。

 計4人。

 あの時の記憶がフラッシュバックした。



「んーんーっ!んーっ!んーーーっ!」



 思い出したくない。そう思うのに、私の思い出の中で家族がズタズタに引き裂かれ死者の尊厳なんて欠けらも無い殺され方をされる。


 もう嫌だ。

 死にたい。

 誰か殺して。

 私が悪かったです。

 私のせいで人が死ぬのを見たくない。

 お願い。

 もう、殺して……。


 けれどその願いは叶うことはなかった。

 私の顔を見た4人があの時と同じように静止する。

 その直後、獣みたいな声を上げながら鬼のような形相で殺し合いを始めた。


 あの時は顔を背けることができた。だから、耐えられた。さっきまで動いてた人が、なんなのかも分からないような肉塊にされるのを見なくて済んだ。

 今は違う。拘束されているせいで顔は少ししか動かせず、できるだけ逸らしたとしても視界にはお互いに引き裂こうとする人達の姿が目に入る。


 涙が出てきた。叫ぶ事もできない。目を背ける事もできない。ただただ、動かないように拘束され、身動きの取れないまま咽び泣くしかできなかった。


 ごめんなさい……。

 ごめんなさい……。

 ごめんなさい……。


 最後に残った男性の一人が、先に死んだ女性の肋骨でもう片方の心臓を抉りだした。その後も怒りが収まらないかのように、動かなくなった男性の死体を突き刺し続ける。男性は返り血と自らの血で真っ赤に汚れていた。


 もう引き返せない。

 最後の1人になった。彼は私に触れ、そして死ぬ。目の前でおぞましい光景を見せられ、その生き残りを私に殺させる。


 きっと神なんていないのだ。天の玉座に座るのは、どこまでも残酷で、人の心を弄ぶ狂気の悪魔。


 刺し続けて満足してのか、原型の無くなった死体と脳みそが張り付いた骨を捨て、生き残った男性がゆらゆらとわたしに近づく。


 ぴちゃり、ぴちゃり、ぴちゃり。

 絶望の足音。死神の忍び笑い。

 男性が私の前に立ち、手を伸ばし、私の体をまさぐった。

 嫌悪感はない。あるのは尽きることの無い申し訳なさ。



「……ん…」



 ごめんなさい。

 ……ごめんなさい。

 私のせいで、あなたは死にます。せめてあなたの、あなた達の魂が、永遠の楽園に辿り着けるように祈ります。


 男性の体が震えた。胸を抑え、口の端に泡を浮かべて苦しむ。

 最後に、男性が私に手を伸ばした。私はそれに返すことができない。

 血の海に沈み、男性は遂に事切れた。


 残ったのは地獄。あの時と変わらぬ、この世の惨劇。



 ────私の中で、心が壊れる音がした。




 ───────────────────




「何秒?」


「14秒です」



 私の質問にストップウオッチを持つ研究員が答えた。


 14秒。その意味は計り知れない。

 今までの実験では、対象の顔を見た実験員は彼女に触れた瞬間に心筋梗塞で死んでいた。例外のなかったその時間が、ここに来て14秒。



「前回までとの違いはなんだ?」


「人数?」



 その結果を受けて研究員達がざわめく。

 14秒も耐えたということは、対象が発する何らかの要因に対する耐性があったという事だ。それを解明し、利用できれば対象の影響を軽微な物に出来るかもしれない。



「あなたはどう思う?」



 隣で計測していた研究員に訪ねる。

 彼は少ししか悩んだ後、ストップウオッチの液晶を叩きながら言った。



「私も人数かと思います。今までの実験では1人の実験員による実験しかしてきませんでしたから。更に影響を受けた人物が1人の場合と複数の場合、それに人数の増減が関係するのかも調べたいです。もちろん、我々の理解を超えた耐性が最後の実験員にあった可能性も否定できませんが……」


「けれどその可能性はとても低い。そうね、私も同意見だわ」



 興奮冷めやらぬと言った面持ちで議論を飛ばす研究員達に聞こえるように声を張り上げる。



「議論はやめなさい!今は実験の後処理をする事!各々言いたいことはあると思うけど、それは明日の会議でやりなさい! 記録を取っていたものは纏める事!いいわね!」



 研究員達が返事をしてそれぞれ分散する。

 ある者は何人かを連れて指定防護服を持ちだし、先程の女性研究員は同じように実験終了のアナウンスと退避勧告を放送する。

 あとは、それぞれの意見をぶつけ合い、今回の実験員の結果として記録するのだ。


 私は退室する研究員達に続き、部屋を出た。

 やることは沢山ある。実験申請の手続き。

 忙しくなるぞと思い、改めて気合を入れ直した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ