第9話「緑色の妖精さんです」
ママに抱っこされているわたしは、ママの足元になにかがいることに気づきました。
ネズミさんか、ナイトクロウラーさんかなぁと思ってじぃーっと見ていたら、そのなにかがピョンっとママの肩に乗っかって、わたしのお顔のすぐ近くにきました。
『こにちわ』
緑色をした、ちいちゃい生き物さんです。人間と同じく2本の腕と2本のお足がありますけど、からだが緑色をしているし、お顔がボールみたいにまん丸なので、人間じゃないです。身長も5センチくらいしかないですから、ほんとうにちいちゃいのです。
あら、あたまにお皿がありました。こういう人たちを呼ぶお名前が、たしかあったはずです。
『あなたは、だあれ?』わたしはあたまのなかのお声でききます。猫のネロさんとお話したときとおなじです。得意なのです。
『オイラはパッカだよ』パッカさんは言いました。
そうでした、こういう人たちはパッカというのでした……でしたっけ?
パッカさんはママの肩のうえでヘンテコおもしろおどりをおどって、わたしを笑わせました。
「あきゃっきゃ!」
「おっ、どちたのユフィ? なにかおもしろかったかな?」
ママは自分のお肩にパッカさんがいることに気がついていないみたいです。パッカさんのように、わたしには見えるのにママとパパには見えないものが、ときどきあらわれることがあるのです。パッカさんも、そーゆうヤツです。
『あんたのお名前なんてーの?』
『わたしはユフィです』
『いかした名前じゃーん。ユフィはたぶんマブいナオンになるね。オイラが保証するぜ』
パッカさんがなにを言ってるのかよくわからないですけど、わたしは『ありがとう』とお礼を言っておきます。パッカさんはいい人なのです。わたしにはわかります。
『じゃあさ、あんたがマブいナオンになったら、また会おうぜー』と言われました。
『うん、わかった』
こうして、わたしとパッカさんはマブいナオンになったら会う約束をしてバイバイしました。
ママはずぅーっと気づきませんでしたが、パッカさんが出ていった窓の外から、ご近所さんの犬さんがワンワンワンワーンと吠えるお声が聞こえたので、犬さんには見えたのだと思いました。わたしと犬さんは、同じなんですね。
「あんあーう」わたしは犬さんのマネをしました。
「えー、なにそれユフィ。あははっ、なんかかわいい。なんて言ったのかなぁ?」
ママはパパの大好きな焼きキモッシーをお皿にのせながら、わたしのお顔にスリスリします。ふんわりママのにおいは、しあわせのにおいなのです。