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転生事件 ~女子高生が集団で異世界転生しました~  作者: りりちん
第一部 生まれたよっ!
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第5話「いろいろ考えます」

 木でできた動くおもちゃを動かして、パパはわたしを楽しませてくれるのです。なんてことのない、動くだけのおもちゃなのに、すごく楽しくて、わたしは「あきゃきゃっ! あっきゃ~、きゃっきゃっ!」と笑いすぎて、こうふんしてお漏らししてしまうまで、止まりません。お漏らししても止まりません。


 なんでこんなにおもしろいのか、自分でも不思議なのです。


 わたしは、前のわたしのことを覚えています。わたしはもっとお姉さんで、赤ちゃんではなかったはずです。もっと頭もよかったし、言葉だって話せたし、いろんな知識もあって、お漏らしもしなかったはずです。


 だけど、今が赤ちゃんだからなのか、赤ちゃんとしての感想や感動ばかりに支配されて、大人な考えが浮かばないのです。しっているはずなのに、思い出せない。そんな感じです。


 成長したら戻るのかもしれませんけど、戻らないかもしれません。でも、こんなにはっきりと、お姉さんだったころの自分を覚えているのだから、忘れるはずはありません。きっと、もっと大きくなれば、しっていることを正しく考えられるようになるのだと思います。今は赤ちゃんだから、赤ちゃんあたまで考えられることしか考えられないのだと思うのです。きっと、そうです。


 なかなか寝つかないわたしのために、今日はめずらしくパパが、絵本を読んでくれました。


「おしゃべり猫ちゃんは、しゅうかいにまよいこんだ人間のこどもにいいました。ここは人間のくるばしょじゃないから、かえりなさい。人間の子供もいいました。ぼくのなまえはきもきちです。ぼくは猫になりたいのです。だからしゅうかいにさんかさせてください」


 へんなお話だなぁ……と、うっすら考えながら聞いていたわたしは、もうそのあたりでおねむになっているのです。お話がもりあがるころには、もう夢の中にいるのでした。


 ママのはなしかたもパパのはなしかたも、どっちも好きです。絵本は限られているので、同じお話をされることもありますが、ママとパパとでは違う印象をうけたりするので、まったく飽きがきません。なんかいでも、楽しめます。コスパ最強です。


 夢の中のわたしは、またお花ぐるぐるトンネルの向こうにいる、前のママとパパのところへ行くのです。


 でもやっぱりふたりはなにもしゃべりません。にこにこ笑顔で━━あれ? ママがVサインをしています。これは、いままでになかったことです。


 やったネ、とか、そんな意味なのでしょうか。わたしはなにも<やったネ>していないのですが。


 がんばれ、とか、そういう意味なのかもしれません。なんだかわかりませんが、ママがわたしになにかを示してくれたことで、とてもうれしい気持ちになりました。


 もっとここにいたかったけれど、背中を引っ張られたわたしは元の場所へと帰されます。


 あんまり長い時間は、いられないのでした。


 わたしは帰されると、だいたいそのまま目を覚ますのです。嬉しい気持ちと、悲しい気持ちと、さびしい気持ちとかがいっぺんに押し寄せてきて、泣いてしまいました。


 夜中に泣いてしまったので、おねむなママとパパにめいわくをかけてしまい、もうしわけなく思います。でも、ママもパパも怒ったりせずに、わたしをやさしくあやしてくれます。


 ━━ありがとう、ママ、パパ。

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