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転生事件 ~女子高生が集団で異世界転生しました~  作者: りりちん
第三部 魔術師学校の転生者たちだよ!
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第45話「謎の手紙と差出人」

「で、なんて書いてあるのよ?」ミリナちゃんが言います。


 紙切れ一枚だけなので、もう見えているんだけど……なにも書いて……ああ、イリスさんは裏側にして渡したのか。


 気づいたので、くるっと裏返し。そこには━━


『ちょーしのんなよ転生者クラス』と、ただ一行の文字列が……。


「あ、なるほど……」と、ミリナちゃんは納得顔だ。「言われなくてもそんなに調子には……乗るかも」


「乗るのかよ」と、イーメちゃんの姫つっこみ。


「だってわたしらの最終目標は魔王でしょ。調子に乗るくらいじゃないと無理よ」


 と、確かに一理あるようなないような……わたし個人としてはミリナちゃんの意見に賛成なのですが。イーメちゃんも「それもそうだな」と頷いてくれた。


 我らが姫様にも“ファリス仮説”は説明済みで、魔王討伐という目標もとっくに共有している。そのため、試験を前に俄然やる気になったイーメちゃんが、例のノールック魔術などをやっちゃったわけなのだが……。

 調子に乗っている、ということであれば一番それに当てはまるのはケシンくんなのだが。ユーリくんもか……男どもはしょうがないね。まったく。


 なんにしても、わたしたちをよく思っていない生徒がいるのは仕方ない。そのほとんどは、わたしたちの能力に対する嫉妬からくるものだろうから。なので、どうしようもないと言えば、どうしようもないことなんだ……わたしは紙切れをくしゃっと丸めてダスト箱に投げ入れようとした。その直前に『ちょっと待って』と頭に声が響いたので、動きを止める。


 リーリカちゃんの頭の上になにかが飛び乗った。


「わっ、ネロさんきた」頭の上が重くなったリーリカちゃんが傾き、その体重がわたしにのしかかった。


『さっきのイリスちゃん、あやつられていたよ』リーリカちゃんに乗った黒猫のネロさんが、突然そんなことを言いました。


「なになに、なにそれどーゆーこと!」


 割って入ったアリンちゃんが、文字通りミリナちゃんとイーメちゃんの隙間を割って現れる。


「なっ、痛いわよアリン!」押されたミリナちゃんが壁にちょっとぶつかる。


「ネロさん、イリスさんがあやつられてたって……いったい誰に? どうやって?」わたしはリーリカちゃんの頭の上にいるネロさんに向けて訊きました。そして顔を向けた際、ネロさんの土台となっているリーリカちゃんの顔とも向き合ってしまったわけで、完全に不意をつかれた上、めちゃくちゃ自然にチューされました。リーリカちゃんに。お口に。


「………………」


 なぜか誰もなにも言わない(やった本人でさえ)のが意味不明ですが……わたしもなにも言わなかったので一瞬時間が止まったようになった。


 ネロさんの声が響く。


『その紙のニオイでわかるよ。人をあやつれるのは魔物だけだから、学校に魔物がいるよ』と、衝撃の事実が告げられた。


「えーっ、魔物って魔物のことぉーっ!」アリンちゃんが叫ぶ。


「おいおい、マジかよ……」イーメちゃんも、さすがに驚きを隠せない。


 もちろん、わたしたちもみんな驚いています。ネロさんが嘘を言うはずがないことは、前提として信じているから大丈夫。


「ちょっと、それはどうゆうことですかネロさん?」委員長キャラだけど、今はただの図書委員のファリスちゃんも近くにきた。ネロさんの声は、転生者であれば聞くことができる。逆に言えば、ネロさんの声が聞こえるかどうかで転生者か否かを判断することも可能なのです。


 という、この情報は別に伏線でもなんでもないただの設定。この世界の、わたしたちの設定です。誰が設定したものか、わたしたちにはわからないけれど。


「まさか、魔王がわたしたちのことを調べるために━━」真っ先に、その可能性が思い浮かんだ。もう嗅ぎ付けられてしまったのだろうか。


『んー……』と言ったネロさんは、なぜかリーリカちゃんの頭に鼻を近づけてすんすんと匂いをかぎました。そして『魔王のかんがえたことじゃないとおもうよ。ぐうぜん、そうなっただけだよ』と言いました。


「どゆこと?」アリンちゃんが首をかしげる。


『人間が、魔物にとりつかれたんだよ』


「魔物に?」


「それって見てわかる感じ?」イーメちゃんも、ネロさんに尋ねました。ネロさんの声は頭の中にしか聞こえないけど、わたしたちの声は頭の中でも肉声でも、どちらでもよくて、ネロさんはちゃんと理解してくれます。


『わかるよ』と、ネロさんははっきりと断言しました。


「よーし、みんなでとっつかまえよー!」


 元気よく言ったアリンちゃんがルームを半分出たあたりで、ファリスちゃんに服を掴まれて戻されました。


「先走らない! というか、見た目で魔物だとわかるような生徒がいるのなら、もうみんな気づいていないとおかしいわよね?」と、ファリスちゃんは冷静に語る。


 確かに、そんな人がいたら……わたしたちは知らなくても、絶対誰かは気づくはず。でも、そんな話は聞いたことがない。たとえばその人物が一年生なのだとしても、入学からはもうだいぶ時間が経過しているのだから、なにかしら噂くらいは出ていてもいいはずなのに、それもない。

 わたしは、魔物みたいな人なんて見た記憶はまったくない。けれど、ネロさんが嘘を言っているとは思えないし思いたくない。


「う~ん、やっぱり見てみないとわからないよね……ネロさんにさがしてもらおう」


「それはいいけど、もう次の授業がはじまる時間よ」


 ファリスちゃんに言われて、みんなそのことを思い出した。休み時間も長くはないのだ。


「そんじゃあ、次の休み時間に集合ねっ!」言って、アリンちゃんは急いでシーポンちゃんたちのところへ向かう。


「なぜかアリンコが仕切ろうとしている」リーリカちゃんの声がわたしの後頭部から聞こえた。

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