第28話「とおでだよ」
昨日はセントラルな公園でベローンくんがバチスクより人気になった新しいトレカの忠義王のレアなカードをカリパくんから盗んで事件になってた。
カリパくんからカリパクしたんだって。
わるいやつだー。
前からわるいやつだってわかってたけど、やっぱりやらかした。
おもった通りだった。
だから今日はもう、事件はおきない。ベローンくんはお父さんにすごくおこられて、お漏らしして閉じ込められて、そこでもまたお漏らししたって聞いた。
ベローンくんのママから。
だから、やつはしばらくしゃばにはこない。たぶん、せまくて暗いところに、しばらくいる。
わたしはねー、今日はママとミリナちゃんとミリナちゃんのママのセラと一緒に遠くの街まで行くことになってるんだよ。
だってね、そこにまゆげつながりせんせーたちがいるんだってさ。まゆげつながりせんせーと、あと他にもなんかいるってきいた。
なんかね、わたしの前の世界の人たちが、けっこういるらしい。みんなで、そこに集まってるから、おいでって言われてた。
だから、ママとパパとセラが相談して、いっかい行ってみることになった。
行くのは、馬車で行く。遠いから。
パパは仕事だから行けないから、ママとセラがわたしとミリナちゃんを連れて行くことになった。
まゆげつながりせんせーの他にだれがいるかわかんないけど、たぶんみんなしってるやつだ。みんなきっと、ピキーンなるとおもう。
ピキーンなりすぎて、頭いたくなんないかすごい心配だね。だいじょーびかなぁ?
「中央の噴水前で待ち合わせ━━馬車もそこにくるから」
ママとおててをつないで、セントラルな地区まで歩いて、おっきなふんすいのところまできたよ。
でっかい人のお口から水がふきだしているところ。
下に、でっかい人の口があって、そこから水でてくる。きもいふんすい。きもすい。
「あっ、きたきた」
ママが見ているほうから、セラとミリナちゃんきた!
ピキーンきた!
「ユフィちゃーん!」
ミリナちゃんが走ってきて、こけて、泣いた。
「うわーん!」
「ミリナちゃん、だいじょーび?」
けがはしてなかったから、すぐ泣くのやめた。えらいね、ミリナちゃん。
「もう、走ると危ないんだから、もっと落ち着いて行動しなさい」
セラに怒られて、ミリナちゃんしゅんとなった。「ごめんなちい」って言った。
あはは、ごめんなちいだって!
あははははー!
「なんで笑ってんの、ユフィは……」
「あっ、馬車きたみたい」セラがゆびさしたほうから、ほんとうに馬車がきたよ。
白いお馬のやつだから、目立ってる。ふつーは茶色とか、茶色なのに、あれは白い。きっと高い馬にちがいない。
「あのお馬、お高い?」ママにきいてみた。
「え、馬の値段? さあ、安くはないと思うけど……うちじゃ飼えないよ?」
飼わないよ。
だってお家せまいし。
パパの寝るとこなくなるよ。
わたしとママとミリナちゃんとセラはとうちゃくした馬車にのって、椅子にすわった。もこもこの椅子だった。おしりがもこってなって、もこもこってする。きもちいいわるい。
「まゆげつながりせんせー」
「うん、パトリさんね。わたしは正直、今でも信じきれてないんだけど━━ユフィは嘘つかないし、初対面のイケメンと話が合う説明も、それ以外ではつかないから。まあ、信じるしかないのよねぇ」
「異世界なんて、本当に……」
「そうね、誰も見たことがないからあるなんて証拠はないけど、同時にないってことも証明できないからね。見たことがないからないとは限らないって話かな」
「ミリナは……前の世界ではミ……なんだっけ」
「ミナだって言ったじゃん。ママすぐに忘れるぅ」
ミリナちゃんももう前の世界のお名前をげろっていたよ。もうバレちゃったから、ぜんぶげろったみたい。もう、隠さなくてよくなった。
「ミナ、そうだった、ミナ。あんまり変わらないような気がするんだけど」
「ね。ユフィもユキだから、なんとなく似てる。そういうもんなのかな」
それはたぶんぐーぜんだが、ぐーぜんでもないかも。もしかしたら天使さんにきくとわかるかもしれぬが、天使さん会えないからきけない。この頃は声がすることもないから、天使さんもきっとおいそがしい。
「なんにしても、一度パトリさんの異世界研究所とやらに行って、詳しい話を聞きたいからね。セラもきてくれてよかった」
「ええ、まあ、わたしも気になるし。信じられない話だけど、ミリナの言葉を信じたいから」
「同感だ。この子たちが真実を語っているのなら、あとはこちらの認識次第。ここからはわたしたちの仕事よ」
お馬はパッカラパッカラ、馬車はごっとんがたたんって、けっこう遠くまできた。
こんなところには、きたことがない。
ママにきいたら、シェイホンっていう町だった。はじめてきた。ずっとわたしの家のあるところから出たことないから、すごいおでかけになったね。
この町に、まゆげつながりせんせーのお家があるそうな。
イケメンになったから、オサレな家にでも住んでるかもしれない。
前の世界では、たしか、ひとりで狭いところに住んでたはずなのに。
わたしとミリナちゃんは前の世界でもちゃんとしたお家に住んでいたけど、まゆげつながりせんせーはひとりで狭いところに住んでいたんだよ。
それは、すごい、覚えてた。




