第26話「わかいよー」
わたしは死ぬおもいをしたから、すごくビビリ虫になって、いっつもおもらしする人になったよ。
だって、すごく、すごーくこわかったから。
暗いところとか、夜はこわくなった。
またあんな、魔物がくるかもしれないから、おもらしするの。
ママはわたしがしんぱいでしんぱいで、ずっとくっついているようになった。ママはおもらししないけど、してもいいと思う。
でもしない。わたしだけもらす。
アシェッタお姉ちゃんたちとセントラルこーえんにきたけど、ママもついてきた。だいじょーびだよぉ、って言ったけど、ついてきた。だいじょーびじゃないからって。アシェッタお姉ちゃんたちは戦えないから、だいじょーびじゃないって。
「おこしくださいましたー。こちらが食べられない死肉だんごで、こちらが食べられないピッツァ~です」
お店やさんごっこ。
わたしの食べられないお店に、アシェッタお姉ちゃんとフェリコットちゃんが買いにくるやつ。おかねは緑色の葉っぱが五百ネンで、茶色の葉っぱは千ネンなの。
「じゃあ、食べられないピッツァをください」
「なんこですか。いっこですよ」
「じゃあ、いっこください」
「はい、かみしこまりやせた。千ネンだよ」
「はい、これでお願いします」
あー、この葉っぱは欠けているやつだから、八百ネンの価値しかないな。だめでーす。
「お金がたりませんよ。魔術警備兵をよびますね。にげてもむだだよ、もう、おまえはたすからない」
「えー、ちゃんと払ったのに!」
こうして、アシェッタお姉ちゃんはお金がたりなかったはんざいしゃになって、しけいになりました。
あー、たのしかったー!
「ユフィ、なんつーか、無茶苦茶なお店やさんだね。我が娘ながらすごいわ」
さすがママ、わかってるー。ほめられたよ。
「でも、普通の子とやる普通の遊びより楽しいですよ」
「アシェッタちゃん、それはつまりユフィが普通の子じゃなくて、これも異常な遊びってことだよね?」
「あっ、あっ、そーゆうつもりじゃなかったんですけど━━」
「いいよ、冗談だから━━でもまあ、変わってることは認めざるを得ないわよね。この子、他のみんなとは、なにかが違うのよねー。たまーにビックリするような事言うし。わたし、教えてもいないのにさ」
それはねー、えっとねー、なんでだろ?
そうだ、前の世界があるからだ。でもね、そのことは言わないことになってるの。
ベイビーズの時に、ミリナちゃんとそうだんして決めたんだよ。
そうだっけ?
あんまし覚えてないけど、たしかそーだった気がする。前の世界のことはね、秘密なの。わたしと、ミリナちゃんだけの。
まだお砂場でお店やさんごっこをしていたわたしたちのところに、しらないイケメンがきたよ。
すげー勢いでこっちきた!
こわいよー!
あっ!
ピキーンってなった!
なんでだ! ミリナちゃんいないのに。
「き、きみの名はっ⁉」
とつぜんちかよってきたイケメンがしゃべったけど、その前にママが立ってかまえた。やっつける時のかっこうだ。このイケメンやっつけるのかな。ばーんって。
「待ちなさいっ、うちのユフィになにか用!」
「あっ、すいません━━ぼくはパトリといいまして、こーゆう者です」イケメンは、めーしをママにわたしました。
パパも持っているやつだね。めーし。わたくしはこういう者です、のやつ。自分の名前と、会社の名前とかかいてる。わたしもパパにもらったんだー。
「はあ……異世界研究所所長 パトリ・イルファンマ……さん。って、なにそれ。あなた、だれ?」
「はい、ご理解いただくのは難しいとは思いますが、ぼくたちは異世界の存在を知っている者たちの集団でして、日夜それについての研究を━━」
イケメンがわたしのほうをチラチラ見ながら、ママになにかいってる。でも、ママなんもわかってないかんじだ。頭かいてる。きょーみもなさそう。
「長々とご説明してもらってなんですが、まったくわかんないわ。で、そんなわけのわからない人が、ユフィに声をかけた。わたしはユフィの保護者ですから、この子を守るためならなんだってやるわよ?」キッて、イケメンにらみつけた。ママこえー。
ママのきはくがキンってなったね。こいつは、あかいいろのきはくだ。これは、こわい。イケメンはやっつけられると思う。たぶん、3秒で。
『ユフィちゃん? 聞こえるかい? ちょっときみのママをどうにかしてほしいんだけど……ああ、ぼくの前世での名前は石浜悟だよ、きみの名前は?』
わー、このイケメン、頭のなかで話すやつできた!
じゃあ、仲間だ。ミリナちゃんと同じく、前の世界の仲間だった。助けないと。
『前の名前はユキだったよ』って、まずはおしえてあげたー。これはママにも秘密だけど、前の世界の仲間なら、言ってもいいことになってる。ミリナちゃんと決めてたから。
『ユキ……桂木雪か! よかった、やっぱりきみも転生していたのか。あの時きみは校庭に出てしまって━━』
こーていにでてしまって?
あ、ママがイケメンに近づいた。やばい。はやくダメーって言わなきゃ。そのイケメンはやっつけなくていーんだよ。
でも、いしはまさとりって、誰だっけ?
そんなの、いたかなー? 前の世界に。
『ほんとうに仲間なの。いしはまさとり、しらないよ?』
『えーっ! あ、そうか……ほら、ぼくは英語の授業を教えていて、眉毛の繋がっていた━━』
「あっ、まゆげつながりせんせーだ!」
「えっ、ユフィこの人知っているの? てか、眉毛は繋がってないわよ?」
「そうです、そうなんです! ぼくは前世で━━つまりは異世界でそーゆう名前で呼ばれていたんですっ! ではなぜその名前をユキ……ユフィちゃんが知っているのか。その通り、ユフィちゃんは前世でぼくと会っている。ぼくのことを知っていたんですよ!」
「ちょっと……なに言ってるのかわかんないんだけど。そんな話、信じるとでも?」
「信じるしかなくなりますよ。ねえ、ユフィちゃん」
「ユフィ、この男が言っていることは本当のことなの?」
「うんっ!」
あ、しまった。おしえてしまったー。まーいいか。ミリナちゃんいないし。でも、あとで怒られるかもなー。おこられて、なぐられたら、わたし、おもらしするからね。
「うそでしょ……」
「嘘じゃないんですよ。異世界はあるし、ぼくたちは前世で一緒だった。そして、それはぼくとユフィちゃんだけというわけでもないんです。あの日あの時、わけもわからず死んでしまった仲間たちが、他にもたくさんこの世界へと転生している。わたしはそんな仲間たちを集めて、情報交換をしながら異世界━━つまり、ぼくたちが元いた世界を探ろうとしているんですよ!」
あははー、すごーい。
まゆげつながりせんせーは、若い、イケメンになっていた。
すごく、おもしろい。
だって、まゆげつながりせんせーって、こんなに若くないから。イケメンでもないから。
変なのー!
ママはまだいろいろ聞きたいことがあるみたいで、わたしにも、なにか聞きたいみたい。
まゆげつながりせんせーといろいろお話して、むずかしー顔をしているね。
わたしはまだガキンチョだから、もう少しだけ大きくならないとダメなんだよ。
もう少し大きくなって、アシェッタお姉ちゃんよりお姉ちゃんになったくらいに、やっと、いろいろわかるんだよ。
だってね、ベイビーズ時代の終わりころに、天使さんの声がね、そう言っていたんだ。
だから、わたしはまだもう少し、大きくならないといけないの。
まゆげつながりせんせーとは、その時にちゃんとお話できると思うから。




