第21話「おつかいだよ」
「ヌクモフのヒレと……ピリカラの……むね?」
「そうそう、今日はお肉祭りよ。なのであなたが買いに行って、メイリンに『オマケしてください』ってちゃんと言ってね?」
「うん、わかった!」
わたしは家を勢いよく飛び出して、メイリンさんの血肉屋さんに行くんです。
ママにもらったお金は落としたりしないように、ポッケの中に入れてるの。わたしのお財布は丸くてちいちゃいやつだから、くしゃくしゃに丸めて入れたの。
西地区のその道は、いっぱい、いろんなお店が並んでいるから、メイリンさんのお店だけじゃないんだよ。
べじたぶる屋さんに、おギョ屋さん、コロスケ屋台に━━あー、コロスケ屋台だぁ。あのお方はたまーにしか、こちらの地区には現れないので、来た時はめずらしい。
すごーい、めずらしいなぁ。
あれを見たら買わなくちゃって、ママも思うやつだ。
だから、わたしも思うんだけど……食べたいなぁ。おっちゃんの販売するコロスケは、こう、歩いている時に、食べるのがいいんです。
お家で座って食べるのよりも、おいしい。
おいしい……コロスケ……食べたいなぁ。
あっ、そう考えてたら、わたしったらコロスケ屋台の前に立って、あのお方を見てました。
そうしたら、コロスケ屋台のおっちゃんと、おめめがばちこん合いました。
「おう、いつものかわいいお嬢ちゃん……ママはどうしたね?」
「ママはおうちだよ」
「ほお、ひとりでお買い物かい? コロスケ食べる?」
「コロスケ食べたい……けど、コロスケの分のお金はないかも」
「ありゃ、そうなのかい……しょーがねーな。どれ、お嬢ちゃんとお嬢ちゃんのママにはよく買ってもらってるからな━━ほらよ、今日は特別サービスだ。コロスケ食べな」
そう言って、おっちゃんはサクサクホクホクの茶色くておいしいあのお方をわたしにくれたんです!
やりました! ロハです!
うれしいなー。たまーに、いいことってあるんだね。生きてるだけで、たまーに、いいことってあるんだなぁ。
「ママにちゃんと教えてね、おっちゃんにサービスしてもらったって」
なんて、おっちゃんは笑いました。
わたしはうんって返事して、今度こそメイリンさんのお店に向かいました。
わたしが到着すると、ちょうどだーれもお客さんがいなくて、メイリンさんにすぐめっかってしまいましたよ。かくれんぼだったら、しょぼいやつだね。
「お、きやがったなユフィ━━お前のその柔らかそうなお肉をいつか切り……なに食ってんだ?」
「こおふへ!」
「ああ、コロスケか。ってお前、勝手に買い食いしちゃ、ダメなんじゃないのか。フィレーナにおつかい頼まれたんだろ?」
「うん。コロスケは、ロハだよ」
「マジかよ、お前やべーな。どんな手を使ったんだよ。まあいい、それは黙っといてやる。なに買いにきた?」
「えっとねー……ん?」
なんだっけ……確か、マモンス……チンパラ……ピリカラ! そーだ、ピリカラのやつだ。
「ピリカラひとつ!」
「どの部位だよ……まあ、いっか。フィレーナのことだから、むね肉あたりだろ。いつも買うくらいでいいよな」
「あと」
「あと?」
なんだっけなー。
マモンスちがう。キモッシー……ちがう。おギョじゃなくって、メイリンさんのお店だからー、えっとー……。
「あ!」
「どうした、イカレたか?」
「ヌクモフ!」
「おー、ヌクモフの、どこの肉よ?」
「どこ?」
どこだっけ?
ママは、なんて言ってたかな?
あたま、て、あし……あし?
ちがうなー。
「うんとねー……おしり?」
「おしり? ほんとに?」
「……うん」
「あんましフィレーナは買わない気がするが、まあ、ウマイのは間違いないからな。たまにはおしり肉も食べたくなるか━━」
メイリンさんにお値段を言われたけど、よくわかんなかったから持っているお金ぜんぶやった。
「いや、こんないらねーし。そうだな━━半分でいいや。半分返す。ほれ」
半分返されたね。あっ、あと、言わなくちゃいけない言葉を忘れてた。
あぶないあぶない、これを言えって、ママに言われてたんだった。
「オマケしてください!」
「なっ、なにぃーっ!
嘘だろ……この量をこの値段にしてやった上に、さらにオマケを要求された……やばい、こいつやばい。怖いよ怖いよー。わ、わかった……よし、わかった! わたしも女だ、覚悟を決めた。お前はやばい、そんなお前に将来やられないよう、今のうちに媚びを売っておく━━おらよっ、これとこれとこれも付けてやらぁ、うっへっへっへっへーっ!」
「ママー、血肉屋さんこわいー」
あるいていたヌケックくんが、ヌケックくんのママに言ってました。
ヌケックくんは怖がりなんだね。
「おらっ、持ってけこんちくしょー。今日の売り上げマイナスじゃー!」
「ありがとう!」
「ついでにこれも持ってけオラー!」
なんだろう、ただの紙切れかな。
イラネって思ったけど、くれたのでもらおう。
「そいつは福引券だ。白狼の季節の7日から抽選大会やるから、持ってきな!」
わーい。なんだかわかんないけど、もらっとこー。そういえば前の世界で聞いたことがあるよーな、ないよーなやつだけど、やっぱしらないかも。
まあ、いーや。
それにしても、袋がお肉でぱんぱんぱんなので、重たいー!
ちょっと歩いただけで、もう地面におろすよ。
だって重いんだもん。
「あら、どうしたのユフィちゃん……それ、重たいの?」
あ、ヘッパーおばさんだ!
やりました、これでわたしは助かったかもしれない。いのちびろいをした。
「あらま、重いわね……すごい買ったのねぇ、お客さんでもきているの?」
やさしいヘッパーおばさんは、わたしのおうちまで重たいお肉を運んでくれました。ありがとうございました。




