第12話「懐かしいです」
わたしはわたしのピンク色の脳ミソの中で、隣のベイビーにお声をかけました。
『わたしはユフィだよ』
『わたしはミリナだよ』
『前のお友だちだよね』
『前のお友だちだよ』
『わたしはユキだったよ』
『わたしはミナだったよ』
『しってるよ』
『しってるよ』
わたしたちはお互い様をしっていたのです。
ミナ……ミナ……わたしはミナをしっているのです。前の世界ですごくすごーく仲良くしてくれた、たいせつなお友だちです。
もっと詳しくナシをつけたいけど、今はまだまだピンク色の脳ミソなわたしの頭では、詳しくナシをつけることができないの。
なんだか悔しいです。
『会えたね』
『会えたよ』
『もっと大きくなろうね』
『うん、大きくなって、大きくなろうね』
だからわたしたちは、大きくならないといけません。もっと大きくなって、ちゃんとナシをつけられるようにならないと、なにも伝わりません。
「あら、なんかこの子たち……あ、どうもすいません、なんだか仲良くなっちゃったみたいで」
ママがミリナのママにぺこぺこぺこりんと頭ふりふり、にこにこして話しかけました。
「いえ、うちの子もお友だちができたみたいで━━わたし、メルルルーストゥっていう宿泊施設で働いてます、セラといいます」
「あ、ども━━わたしはフィレーナです。引退しましたが、元は魔術師協会のほうで働いてまして……」
「え、そうなんですか!」
なんて、わたしのママとミリナのママはさっそく意気投合?
すぐに仲良しさんになりまして、わたしもすごく嬉しいの。ほら、ミリナも嬉しそうに笑ってます。
「ばいばむぶぅ!」
「あきゃーす、あべぶぅ!」
やっぱりお声ではなにをおっしゃっているのかイミフですが、わたしもミリナもすごく楽しくて、楽しくてしかたありませんでした。
ぶっちょーづらのパパはひとりで、でかでかお肉をむしゃりむしゃり、ごくりんこと勝手にやっていて、シーンとお静かに座っておりました。
ずっと前を見ているお顔がまじめで、きもいのです。
そしてミリナのママの前にはミリナのきもいパパがいませんでしたので、気になってきいてみたのです。
『パパはいないの?』
『パパいないの』
ミリナにきいてみたら、ミリナのパパはいませんでした。おなくなりしたのではなく、おわかれしたのだそうです。
ミリナのママがミリナのパパをのーさんきゅーになったのでしょう。よくある話ですよね。
うちもそうならないように、きもいパパも構ってあげたらいーのになぁ、って思いましたけど、ママはもうミリナのママとおしゃべりに夢中で、パパのことは忘れていました。
パパもおとなしくしていて、ママたちのお話のお邪魔をしないおりこうさんなので、ずっとお肉ばかり食べていて、やっぱりきもいのでした。
お肉ばっかり食べてると、お肉になっちゃわないかなって、わたしは心配なんですよ。