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目覚め - 3

「DNA…?」


〈そう、DNAとはデオキシリボ核酸の略称で多くの生物において遺伝情報の継承と発現を担う高分子生体物質のことだ。おもにわかりやすいものを挙げるとすれば血液などのことだな。〉


「それがどうして必要なの?」


〈我々メタモル人は他の遺伝子構造や原子構造を真似することによりそれらに非常に近しいものに変化することが出来る。変身する人種という意味もあり我々の種族はメタモル人という。そしてまず変身するのに必要不可欠なのものが〉


「私たちの血……?」


〈その通り。〉


変身能力は本来生命維持装置が近くにある場合、または命の危険を感じた場合などのごく僅かな時間のみ許可されたものだが、今回は後者でありしかも生命維持装置が大破しているためしばらくは変身した姿で過ごさねばならないだろう。

もし対ノウズ戦闘スーツがあればそれでも代用は可能だったが、まずこの星では目立つため自由に動くことは不可能な筈だ。


今回はひとまず友好的な原住民を利用し、その後のことはまた後で考えるとしよう。


私が説明を終えるとセシルという個体は腕を組んで悩んでいるようだった。ダメか…?と思ったその時、もう一人のライラという個体が頷いた。


「いいよ。」


「え、本当?」


「うん。死にそうだって言うし、ここは協力するしかないと思う。」


「むぅ、ライラがそういうなら……。」


〈ありがとう。それではすまないが早急に遺伝子情報を私にくれないか?そろそろ身体がキツくなってきたんだ。〉


本当はもう少し時間はあるが、ここは話を進めるためにも急かしておこう。私が懇願すると、ライラが小さなナイフを取り出し、ん。とそれをセシルに渡した。


「うわぁ、マジかぁ。やだなぁ……。」


〈血は数滴程度で大丈夫だ。量はあまり必要ではない。〉


「うぅー。わかった……。」


彼女は渋々といった風にナイフを指に当てると、それを引いて指を切った。最初滲むように出てきた血は、やがて血だまりとなり私の身体の上に落ちてきた。


ジュルッ


「ひぇ…っ。」


落ちてきた血液を瞬時に体内に取り込み、解析を開始する。その間ライラはヒールと唱えると、セシルの指の数を治していた。なるほど、あれが私の身体を癒した魔法というものか。非常に興味深い。


「ひとつ質問。」


〈なんだ?〉


私が魔法を眺めていると、ライラが手を挙げて尋ねてきた。


「遺伝子情報とやらは血液でないとダメ?」


〈いや、そんなことはない。たとえば皮膚の一部であったり、あまり情報としては高くはないがそれこそ髪の毛でも問題ない。〉


わかった。と頷くと彼女は髪の毛をぷちんっと一本抜き取ると、それを私の身体に落とした。長い髪の毛だったために多少時間はかかったが、これも問題なく取り込めた。


ギュムギュムッ


「ず、ずるい!それなら私も髪の毛でよかったじゃん!」


「確認しないセシルが悪い。」


「アンタがナイフを渡してきたんでしょうが!!」


「受け取ったのはセシル。使ったのもセシル。私はなにも強制してない。」


「ぐ、ぐぬぬぬぬ……。」


どうやら先ほどの件で諍いが起こったようだった。しかし私は今は遺伝子情報の解析の肉体の変化に忙しかったため、構っている暇はなかった。

そしてようやく解析が終わり、肉体の変化が始まった途端私は急激に肉体が熱を持ち気持ちの悪さに悶絶した。


そういえば初めての変身はキツいと聞いたことがある。私は基本的に今まで生命維持装置の中で暮らしていたためにこの能力を使う機会がなかった。

今回使ったのが初めてなのだが、こんなにもキツいものなのか。おぇええ。


徐々に高くなる視線に慣れず、私は棚から落ち地面でもんどりうって倒れた。思わずぐげぇ、おぇえと私の出来上がったばかりの声帯から漏れだす。四肢が伸び指が生え、髪の毛が伸びる私の痛みは筆舌にし難くまた見るものをドン引かせた。

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