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プレリュード - 4

大変お待たせ致しました。

前話も少し加筆しておりますので、そちらからお願いします。

依頼当日


私たちは入念に準備を済ませると森の中へと歩を進めた。


今回の依頼は調査と採取、そして私にとっては格上のモンスターの討伐だ。どこまで慎重に行っても損はない。私たちは森の様子を確かめるとともにウォーウルフの痕跡を探していく。途中見つけた薬草の群生地では決して刈りきってしまわない程度のものを採取していった。


「見つけた。」


時刻も夕暮れ時、なかなか見つからないなあとボヤくのも何度目か。ライラがついにその痕跡を発見した。


「爪痕?」


「そう。ここは彼らの縄張りの一部だという印。爪を研いだ後でもある。セシル、罠の用意を。」


私はわかったと頷くとトラバサミや毒肉などを設置していく。頭のいいウォーウルフにこんなものが効くとは思ってはいないが気休めにはなる。それに本命はライラの設置型の魔法陣トラップだ。魔法陣の上を通ったものを察知するものや攻性魔法が一時的に込められたものだ。有効効果時間は一時間から数時間とまちまちだが、これから夜明けまでなら十分の効果である。


本日の探索はここまでとし、私たちは途中で発見した辺りを一望できる高台で一夜を過ごすことにした。




「これで良し、っと。うわー、もう真っ暗だね。」


「明日は早い。早く食べて、身体を休めよう。」


簡素なテントを作り野営に備えていると辺りはすでに暗闇へと変わっていた。夕飯は事前に用意していた干し肉に途中採取することが出来た木ノ実だ。もう少し贅沢をしようと思えば出来たが、その分荷物が嵩張り移動に差し支えるためこのようなものとなってしまった。


「流石に慣れたけど、やっぱり温かいものが食べたいね。」


「なら早く依頼を済ませないと。明日は今日の反省を生かしてもっと効率良くいく。」


わかってますよー、と返事をして食事をさっと済ませると次は武器の手入れに移る。大きな修理などは出来ないが、日頃のメンテナンスを欠かさないことがいざという時の備えとなるのをセシルはここ数年で嫌という程理解していた。多くの冒険者はこれが出来て一人前とも言っていたことで、自分でもやってみてわかった。


予備の武器も込めてセシルの武器は三つある。一つは普通の長剣。メイン武器の一つで基本はこれを使っている。そして本命ともいうべきサブ武器のもう一つの長剣。これは実家から頂いた名剣で本来なら自分では手の届かない武器だ。故に今はサブとして扱い、いつかこの名剣に似合う立派な剣士となることを夢見ている。そして最後にナイフ。これは何かの事情で長剣が使えなくなった時のために持っているものだ。


盾は少し小ぶりな物を選んでおり、女性の自分でも振り回されるようなことはないし剣にも集中出来るというものだ。最後に道具やアイテムの整理、確認を行う。


手入れが終わると見張り番の順を話し合う。結果、私が最初に見張り番を務め、次にライラとおおよそ2〜3時間で交代することにした。


「なにか問題が起こったら起こして。すぐ起きる。」


「わかった。じゃあおやすみ。」


おやすみ、と返すと彼女は毛布にくるまりそのまま静かに寝息を立て始めた。


長く冒険者をやっているとこういったことも出来るようになるのだろうな、と少しばかり感心する。



パチパチと、枯れ枝が燃える音が静寂な夜に響く。夜空は星々が輝き幻想的な風景を作り出していた。時折聞こえる風のざわめきや、フクロウの鳴き声が心地よく感じた。


どれほど時間が経過した頃だろうか。焚き火をたまにつついて火を維持していると、夜空が急に眩しく大地を照らし始めた。何事かと顔を上げるとなにかが燃えるように空から落ちてきている最中だった。


「な、なに!?」


それはいくつもの光に分かれて大地へと降り注ぎ、その内の大きな塊がいま自分たちがいる森へと落ちてきたのだった。大きな揺れと、まばゆい光にセシルは動揺するがそれはすぐさま好奇心へと変わった。


「ライラ!起きろ!大発見だ!これ一番に報告したら昇格出来るかもだぞ!!」


相棒のもとに駆け込み身体をゆすり、さらに顔をぺちぺちと叩くとようやく彼女は目を覚ました。


「ぅ、うーん。なに、どうしたの?」


「寝てる場合じゃないよ!急いで用意して!私は先に行くから、ライラもすぐに来て!」


言うが早いか、セシルは暗闇の中へと飛び込んでいった。勿論装備はキチンと整えて。


そして彼女は出会った。己の運命を変える存在へと。

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