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プレリュード - 3

ライラは同い年にも関わらず私の倍は強い冒険者だった。最初に出会ったときは「なんだかボケっとした人だな」としか思っていなかったが、いざパーティーを組んでみるとそれは頼りになる後衛だった。痒いところに手が届くというか、いやそれ以上に私の実力を何段階にも押し上げてくれるあmさに縁の下の力持ちというものだった。


ちょっとだけ調子に乗ってしまった私が一度だけソロで依頼を受けた時などひどいものだった。危うく死にかけたのだ。そんな時も後ろからこっそりついてきていたライラに助けられ、情けないのなんのといったら……。


あれから私も少しは実力を上げ、驕ることなくライラの助言などを聞きつつ経験をつみようやく昇級試験にまでたどり着いたのだった。


「さて、依頼はこんなもんか……。」


手にした依頼ははぐれウォーウルフの討伐、薬草採取、最後に生態調査の計三つだ。薬草採取や生態調査は新人冒険者でもやっているような基本的な依頼のひとつだ。薬草は値崩れを起こさない程度に摘み取ればいいし、生態調査に関しては歩合制ではあるものの成果なしでも小さな子供のお駄賃程度は貰えるので小銭稼ぎには丁度いい。


そして問題ははぐれウォーウルフの討伐。これが一番の難関だ。通常ウォーウルフは群れを作りそれで狩りを行う。群れの中にはリーダーがおりそいつがすべてのメスを囲っている。そのたの雄は群れの中ひっそりとリーダーに目を付けられないように生きているのだが、たまに強い個体が生まれるとそいつが反乱を起こすのだ。成功すれば新しいリーダーに、失敗すれば群れを追われはぐれとなる。


今回の相手は名前の通りはぐれなわけなのだが、舐めてはいけない。脅威度は50を超え、これは一般的にC級冒険者が三人以上で相手をしなければならないほどだ。いまだD級の私では手も足もでない相手だったが、私にはライラという強力な仲間がいた。彼女自身はC級だが、その実力はB級と肩を並べるほどであった。


B級とは脅威度60前後を単体で討伐出来るほどの実力があり、後衛専門であるライラも難しい立ち回りにはなったが以前にも今回と同程度の相手を単独で倒した経験があった。今回はそんな彼女の胸を借りるつもりで依頼を受けることにしたのだった。


「すみません。この依頼をお願いします。」


「あ、セシルさん。以来の受注ですね。拝見させて頂きますね。」


ふむふむ、と受付嬢が確認する。


「随分と難しい依頼を受けられるんですね。脅威度50以上はなかなか難しいとは思いますが、たしかセシルさんのパートナーはあのライラさんでしたものね。あ、勿論ライラさんも同行されるんですよね?」


「もちろん。私も死にたがりじゃないからね。」


「かしこまりました。それでは一応ギルドカードを確認させて頂いてもよろしいですか?………はい、ありがとうがざいます。ではいつもの様に説明させて頂きますね。」


こほん、と受付嬢が咳払いする。


「この度はご依頼受注ありがとうございます。私からは簡単な諸注意をいたしますがよろしいですか?


本依頼は討伐が一件、生態調査が一件、採取依頼が一件でお間違えないでしょうか。はい、ありがとうございます。我がギルドではおもに依頼の斡旋を行っております。したがって依頼中に受けた負傷等には一切の保証を致しかねますのでご了承くださいませ。また依頼の失敗につきましては違約金等はございませんが信用が落ち、依頼受注の際拒否される場合がございますのでお気を付けください。道具等になにかご入用のものがあれば左手の売店にて通常価格の一割引きにて販売されておりますのでどうぞ。


最後に、本日中であれば以来のキャンセル料も無料ですので、気が変わりましたらいつでもどうぞ。


それではこちらが受注された依頼を証明する木札でございます。ありがとうございました。」


私は木札を手にすると、待っているであろうライラのとこへ急いだ。


「いってらっしゃいませー。」




「ってなわけで、この三つを受けてきたのだけれど、どうかな?」


足早に宿へと戻った私は早速ライラへと相談をする。すると彼女は少し嬉しそうに頷いた。


「ん。討伐依頼を二つではなく、少し難しいのを一つにして採取や探索を二つにしたのはいい。ただこれは本当に少し難しいのだから、きちんと準備しなきゃダメ。出発は明日にして、今日は準備にあてるのが妥当。情報も大事。わかった?」


「りょーかい。」


その後軽い打ち合わせを行うと、その場で解散することにした。各々自分に必要になるものが別だからだ。

私はもう一度ギルドへと立ち寄ると薬草や水などを購入しておき、夜には寝る前に剣の手入れを入念に行った。

武器の良し悪しが生存に大きく関わることは誰もが知っていることだ。しかしランクのせいか良い武器は絶対的に高ランクの者に優先されることが多い。私は幸いなことに冒険者になる前に実家から装備一式を貰っており、その性能は申し分ない。それどころかたまにひがみや妬みなどで絡まれることも少なくはなかった。


だから私は早く強くなりたい。強くなって、この剣に見合う良い剣士とならねばならなかった。




明日は早い……。

夜更かしは肌にも悪いし、明日寝不足でここぞという時に集中力が切れるのは避けたい。


おやすみなさい………。

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