プレリュード - 2
その日、私はいつものように朝起きると窓を開けて大きく伸びをした。なんとも心地の良い朝だ。
朝の体操を終えると私は下の酒場兼食堂へと向かいいつものモーニングセットを頼んだ。最近は冒険者稼業もだんだん慣れてきたのか、宿屋の固いベッドに最初のころはいつも身体を痛めていたのが嘘のように熟睡できるようになっていた。
思い出と我が成長に思いふけっていると朝食が運ばれてきた。慣れと言えばこの朝食もそうだろう。黒く硬いパンに薄味のスープ。小さい頃はそれなりに良いものを食べてきたせいか最初はなんの嫌がらせかと文句を言ったりして周りに迷惑をかけてしまったこともある。今となっては赤面物の黒歴史だとまだまだ青かった自分にため息がでそうなった。
そんな自分にも最近は相棒と呼べるような存在が出来た。後衛職専門ではあるのだが幅広い攻撃魔法と支援魔法が魅力的な相棒である。また同じ女性ということもあり冒険者同士としては気心知れた数少ない相手でもある。そんなこんなもあり最初は臨時のパーティーとして組んだのが、今では正式にコンビを組むこととなり今にいたる。あらゆることに精通しており非常に頼りになる存在なのだが、そんな彼女にも弱点はある。
とにかく朝が弱い。冒険者という職業上、どうしても朝が弱い人間が多い。その中でも彼女はグンを抜いており気づけば昼過ぎに起きてきてもそもそとおそい昼食を食べていることも珍しくはなかった。最近は私が早寝早起きを共にさせることにより改善しつつあるが気を抜けばまた前のような生活に逆戻りだろう。
そうして私が朝食を食べ終わり一休みしているとようやく彼女が食堂へと降りてきた。
「セシル、おっはー。」
「おはようじゃないぞ、ライラ。私はもう朝食を食べ終わっちゃったよ。」
「セシルはせっかち。せっかちはモテない。」
「そんなこと望んでないから結構です。」
しばらくして頼まれた朝食がやってくるとライラはもそもそと食べ始めた。ちなみにたべる速度も遅いので私にとっては良い食休みと最近はなっている。紅茶などといった嗜好品はいまだないのか、飲み物といったらもっぱら水か安酒くらいしかないので私は仕方なく水の追加を頼む。待っている間暇なので食事をしているライラと今日の予定を確認してみることにした。
「今日は少し森の奥に潜ってみようかと思うんだけど、ライラはどう思う?」
「いいと思われ。実力的にも問題ない。夜の見張り番は間隔が短いとは思うけど、蜜蝋に区切りをつけてそこまで達したらで。何日も潜るわけじゃないなら多少の無理はおっけー。」
「わかった。以来の内容はどうする?」
「薬草の採取と魔物の討伐を二つから三つでいい。最近はセシルも冒険者に慣れてきて実力もついてきたからそろそろ昇級試験も頃合い。上がれば私と同ランク。いぇい。」
「ならそうするね。私は先にギルドに行っていくつか依頼を見繕ってくるよ。」
そう言って飲み物を一気にあおると私は先に席を立った。
ライラはもそもそと食べながら手を振ってきたので行ってくる、とだけ言って食堂を後にした。




