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第1話 スキル屋







 日の暮れ始めた街道を歩く一人の男。

 その足取りは重く、その足音は男の感情を表していた。


「はー……今日も失敗か」


 男は冒険者を生業としている戦士だった。

 10代の頃はSランク冒険者なんてものに憧れていたものの20代にもなればやがて現実が見えてくる。

 Sランクになると豪語して村を飛び出したのが10年以上も前のこと。

 冒険者の壁と言われるDランクになることができたのは丁度20歳の頃だった。

 しかし、そこからは色んなことが上手くいかなくなった。

 そうして迎えた30歳。

 肉体の衰えも僅かではあるが感じ始めていた。

 そこへ今日のEランク向けのクエストのことがのしかかる。

 パーティ仲間たちがいないこともあり受けた簡単なクエスト。

 採取クエストだったというのに通りすがりのモンスターを刺激してしまいあっけなく失敗。

 彼がDランクになれたのもいくつかの偶然の重なりが大きい。

 それはこの日のEランククエストの失敗でも分かる。


「潮時かな……」


 男はまたため息を吐く。

 そうして今朝鑑定した自分のスキルを思い出す。

 斧術(中)と肉体強化(小)の2つだけ。

 男は弱くはない……だが決して強くもなかった。

 スキルの取得には年単位の経験値が必要と言われ、それを取得しても実用できるようになると言われている(中)にするにはさらに何年もの訓練が必要だった。

 男は先に記述した通りもう30。

 スキルの取得は才能に大きく左右される。

 30で新たなスキルの取得なんてほとんど見込めないし、ましてスキルのレベル上げなんてものをしていたら肉体はさらに衰えてしまう。

 夢を見る時間は終わった。

 そろそろ現実を見ないといつか死んでしまうかもしれない……そう考えて引退したら何をしようかと頭を悩ませる。

 今まで魔物やダンジョンなんてものと向き合ってきた。

 悪いことばかりではもちろんない。

 だがいざ新しいことをとなると何をすればいいのか分からない。

 

「ハァ」


 男が三度ため息を吐いた……そんなときだった。

 一軒の店を見つけた。


「? こんなところに飲み屋なんてあったか? いや、道具屋か?」


 いや、いくら冒険者たちへの物資を扱う道具屋だったとしてもおかしい。

 なぜならここは街の外。

 辺りには人は一人もいないし、何より数は少ないがこの辺りは魔物だって出る。

 その店はいかにも古びた木造の建物だった。

 あちこちがツギハギだらけで今にも崩れ落ちそうだ。

 辛気臭い店ではあったが、男は誰かに話を聞いてほしかったのかもしれない。

 ふらふらと吸い寄せられるように店の前に立った。


「汚ねえ文字だな……え~と? ス……キル……屋……?」





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