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草原の入り口に10人の騎士達がいた。
その騎士達は夜、森を通るさいに襲ってきた魔物を倒したさいに付着した血が各々甲冑や鞘や剣を汚していた。
「はぁ、本当に魔女とかいるのかよ」
「さぁな?村人達に嫌われてんじゃないの?」
「ハハハ、言えてんな」
各々、好き勝手に言葉を発しながら進軍する。
けれども、その中で二名だけ他のものとは違い静かに後ろに付いて行く。
そして一軒家が視野に入るか入らないかの位置まで来た時、一人の騎士が倒れた。
「なっっ敵襲か⁈」
「どこから‼」
周りのものったいは慌てだす。
打たれた者は脳天には穴が開いており、その穴の周りが軽く凍っていた。
遅れながらも戦闘体制に入ったが、その死体の近場にいた騎士は一歩遅れ脳天を打ち抜かれる。
けれども戦闘経験のある騎士達はすぐに体制を立ち直し、攻撃を開始する。
『炎の精霊よ 我の元に集え 猛る灼熱の炎で喰らい燃やし尽くす蛇へと 我の前に姿を見せよ』
3名の騎士の詠唱は長く、一語一語唱えるたびにその騎士の額には脂汗が滲み出していた。
詠唱の終わりが近い事に「詠唱を終える!!攻撃範囲にいる者は速やかに後退!!」一人の騎士が高らかに叫ぶ。
『炎蛇』
最後の一語を唱え3人の目の前に出現した魔法陣から姿を現したのは高温の炎で出来た蛇であった。蛇はまっすぐに発射される。
放たれた蛇は、自身が触れたモノを消し、余波によって草は燃だす。
だけれどもその攻撃はただのあてずっぽだった、けれども
『私の氷の壁では全ての炎も凍りつかせる』
騎士達の耳に詠唱のようで、だが、先程自分たちがした詠唱と違い短く、何より詠唱っぽくなかった。
だが、その言葉が聞こえたと同時に、蛇は瞬く間に凍りつき、ドオンッっと大きな爆音と共に弾けとんだ。
爆発で起きた爆風によってほとんどの騎士達は吹き飛ばされる。
「な、何でだ!?」
「クソッッッなんだ!!」
騎士達は爆風へと視線を向ける。
爆風がだんだんと晴れ出し、一人の姿が騎士達の視界に映る。
「制御も出来ぬ魔法とは役不足にも良い所だ」
弓を片手に持ち、金髪の青年、マーレは騎士達を睨みつける。その睨みに「ヒィッ」と情けない悲鳴をあげる騎士達が出るも、一人だけマーレへの元へと歩み進む。
「他の奴とは違うようだなっっ!!」
「・・・」
マーレの言葉の途中で踏み込み走り出した青年は手に持っていた槍の刃先をマーレへと振り下ろすも、その刃先は弓の弓筈で弾かれ青年はすぐに距離をとろうと後退するも、
『矢は氷であり』
装填された氷の弓は青年を狙い、放たれる。けれども青年も頬擦れ擦れで避け体勢を整える。けれども先ほどの攻撃で被っていたフードは取れ、その青年の容姿にマーレは驚愕した。
「まさか・・・人族の兵の中に魔族がいるとは・・・」
マーレの言葉に眉間に皺を寄せ
「俺は魔族じゃない・・・人族だ。あんなものと俺を一緒にするな」
再び、槍の刃先がマーレを狙うもののその攻撃は次々と防がれる。その事に青年の苛立ちはつのるもののドンッと一軒家の方から聞こえた爆発音にマーレの意識は目の前の青年からその爆発へと一瞬だけ向いてしまった。その一瞬を青年は見逃さず首の動脈を狙った攻撃を放つ。すぐさま弓の上半部で弾くもののその刃先は右肩を貫く。
「ガアッッッ!!」
「ハハハ、気を抜いたお前の負けだ」
「クソっっ!!」
すぐさま距離をとり後退するも、右肩の激痛に膝を付く。その様子に満足したのか先ほどの爆発のほうへと視線を向け「あっち見てみなよ」と青年の言葉通りにマーレも視線を向け驚愕に声を漏らす。
その視線の先にいたのは
「リュイ様、予定通りに」
「うっ・・・あっっ・・・」
一人の女騎士とその女騎士に髪を捕まれ引きずられているケイルだった。
「貴様!!」
マーレから漏れ出す殺気に、青年と女騎士、遠くに離れている騎士達を当てるが、すぐに我に返った女騎士はマーレに見えるようにケイルの首元に剣を当てる。
「抵抗をやめなければこの娘の首と体が離れるぞ」
「ぐぅっっっ」
人質がいるせいで動けないマーレを見、ケイルは「ごめんなさい、ごめんなさい」と言葉を漏らす。
「ハハハ、あの家はさしずめ貴様らの家なのだろうな」
青年、リュイは笑いながら「何かあの家に大切なものでもあるのか?それともあの家自体に思いれでもあるのか?」とニヤニヤと言葉を吐く。その言葉にマーレは苦虫を噛み潰した表情をする。
「まぁいい、俺達は時間が無いんだ。お前等こいつを死なない程度に痛めつけろ」
遠くに離れていた騎士達はリュイの言葉通りにマーレに対し意識がギリギリ保つぐらいまで痛めつける。それは先ほどの魔力を防がれた腹いせに、強敵を痛めつけられる優越に、騎士達の表情は嬉しそうに歪められていた。
+*+*+*+*+*
「クレア・・・」
「っっっ」
朝、目を覚まし僕等が感じたのは違和感であった。
1階に降りても自分達より早く目を覚ましているはずのケイルとマーレの姿はどこにも無く、次に向かったのは外はひどい様変わりをしていた。
きれいな草原だったのがいまでは焼け野原となった元草原であった。
それだけで、自分達が寝ている間に戦闘があったのだと知る。
「まさか・・・連れて行かれた?」
「そんなまさか!?2人はそんなそこらの人族より遥かに強い」
「でもクレア・・・2人がいないっていう事は・・・」
「っう・・・」
視線を彷徨わせ二人を探すが代わりのように落ちていたのは白い弓であった。
「あれは!!」
白い弓の元へと駆け寄り、その武器を持ち上げる。
持ち上げたのとタイミング良く、僕らの間を吹き抜けるように風が吹く。
――オネガイオネガイ――
――ハヤクシナイトアエナクナッチャウ――
「へぇぁ?!」
突然聞こえた音に驚愕し声を漏らし、持っていた弓を落とす。
突然の反応にアルスが驚愕し「クレア?」と一瞬緩んだ手を握り直す。
「こ、声・・・今声聞こえなかった?」
「声?」
僕の問いにアルスは首をかしげる。その反応で聞こえたのは自分だけなのだと理解するも、何故突然聞こえたのか疑問に思いながら落とした弓を拾い上げる。
――オトサナイデオトサナイデヨ――
――ユミヲオトシタラキミハボクラノコエガキコエナクナッチャウヨ――
「弓・・・?」
再び聞こえた音に、再び弓を落としそうになるが次に聞こえた音にそれは阻止された。
――ソウダヨ――
――ボクラハカゼノマナ――
――カゼノオンケイヲフヨウシテルソノユミヲモッテルカラキミハボクラノコエガキコエル――
音に言われた“風の恩恵”で以前ケイルの狩りを見に行った時にそんな事を言われた事を思い出す。なら自分が聞いているこの音は風のマナの声?と理解した時、一際大きな風が吹いた。
――ハヤクシナイトキミノカゾクガイナクナル――
――イマオエバマダマニアウ――
――ジャナイトシンジャウ――
「死ぬ・・・?」
「クレア?えはぁ?!」
さっきから様子のおかしかった僕を見ながら不安そうに声をかけたアルスだったが突然に、弓と一緒に抱きしめられた事に驚愕し、なおかつ僕が翼がを広げる音が聞こえたアルスがサッと変え入れるのを知りつつも僕はそのまま翼を動かす。
そうすれば一気に足は地面から離れ、僕は空高くを目指し翼を動かす。
「クレア!!急にどうしたの!?」
「2人が・・・早くしないと2人が死ぬって」
「死ぬ!?」
唐突の言葉に驚くも僕の表情が冗談を言っているようには思えなかったアルスはすぐに表情をも度に戻した。
+*+*+*+*+*
「ふふふ、これは上玉じゃないか」
村の外れの森で村人が一箇所に集められ、その村人が逃げ出さないようにその回りを騎士達が見張りをしていた。その村人、騎士達は同じ場所に視線を向けていた。騎士達は顔を赤面させ、村人は恐怖に顔を歪めさせていた。その先にいたのはここを率いる騎士のリーダとリュイ、リュイの隣でいまだ深々とフードをかぶった者。その者達の中心にいるのは満身創痍になっているマーレと見た目は軽傷ながらも、着ていた服が先の戦闘とここまで来る間に引きづられたせいでスカートの丈が太ももまでの長さへとなっている寝巻き姿のケイルであった。
ケイルの姿にリーダーは下心丸見えの表情でケイルを見ており、ケイルはその表情を見たくないという顔で視線をずっと下へと向けていた。
「兵士にするのはもったいないが、このご時世だ。戦場も人手が足りないのでな、名残惜しいが戦ってもらわないとな」
「では、村人と一緒に馬車に乗せます」
「あぁ、頼んだぞリュイ」
指示を下したリーダーは自身の愛馬へと足先を向かわす。
「貴様ら立て」
「っ」
リュイの指示にケイルは肩を震わせる。これは恐怖ではない、怒りであった。
「覚えていなさい!!貴方達にきっと報いて見せます!!」
怒りの炎で瞳を輝かすケイルにリュイは迷うことなく頬叩く。頬叩かれた衝撃で後方に飛ばされるものの傍にいたマーレがケイルの下敷きとなる事によってケイルのダメージはたいしたものではなかったが、マーレにとっては先ほど騎士達の暴行によって出来た傷に響き、うめき声を漏らす。それに対しケイルは短い悲鳴を上げすぐさまにマーレの上をどき「父様申し訳ございません!!」と言葉を漏らす。
「次俺の手を煩わせれば今度はそいつ共々罰してやる」
「さっさと馬車に乗れ」とリュイは二人から視線をそらし馬車へと向かう。
「父様・・・」
「大丈夫だ・・・私が何とかする」
自身の武器を家の前で落とし今ここに持ってきていない為にケイル自身何も出来ない。
ケイルはクレアが生まれる前ならば神族での上位に位置するほどの魔力量、コントロールを持っていながらクレアを産んでからその魔力は一気になくなった。
神族の女性は特殊で子を産む時、自身の魔力ほぼ出産の時に消費してしまう。その消費された魔力は出産までの魔力まで回復はされず、最低限の魔力しか残らない。例えるならば器がありその器を並々に注がれるものの出産という大きな衝撃が器を襲い、その器に穴が開いてしまい元のようにその器にあった並々とした量の魔力が溜められず少ししか魔力がたまらなくなってしまう。
その為、多くの神族の女性は結婚をするものの子供をつくろうとはしなかった。その結果神族の数は減る一方となっていた。
ケイルもまたそれであるものの、自身の弓である特性のおかげで弓を使用している時は普段下級魔法しか発動できないケイルさえ中級の魔法までなら発動できる。それはその弓に付属している風のマナによる“風の恩恵”のおかげであった。
「・・・すいません・・・」
捕まって久方ぶりに自身の無力さを直面し唇を噛む。
馬車に乗ったケイルとマーレ。馬車の中には既に村人がおりその村人達は二人に対し恐怖の対象とし絶対に近づこうとはせず、二人を避ける形で奥へ奥へとつめていた。
二人もまたそんな村人を刺激しないようにと入ってすぐの場所で腰を下ろした。
揺れ始めた事に馬車が動き出したのだと二人は理解し、家に帰れるのがいつになるのかと、家に残してしまった子供達は自分達がいない事に対して不安に思っているんじゃないかと思いを募らせ、早くここから抜け出さなければならないと2人はそう決意する。
+*+*+*+*+*
「それにしてもあの女と男が魔女として村人に恐れられてるとはな」
「何たる臆病な村人だ」そう笑うリーダーにリュイは
「恐れながら、シンア小隊長。女の方はたいした力ではありませんが、男の方は我々の上級魔法を一人で防いだ男です」
「何ッ!?」
リーダー、シンア小隊長はリュイの報告に表情を歪めさせ「ならどうやって捕まえた!!」とリュイの実力が劣っているといっているような発言にリュイの左後方で馬に乗っている人物の方が揺らぐものの、それだけであった。
「はっ、どうやら2人は身内同士のようで女を人質にとれば男の方をやすやす捕まえられました」
「ハハハ、何たる卑怯な手を使うなリュイよ」
その手段を非難するような発言に対しリュイの瞳が一瞬鋭く光るものの「申し訳ございません」と謝罪する。
「まぁ、いいさ。男は上級魔法を防げれる実力・・・その実力を戦場でも発揮させる為にその女は私が人質として預かろうじゃないか」
舌舐めずりをするシンア小隊長にフードをかぶった人物は「外道め」と小声で呟くも、その音はシンア小隊長には聞こえなかったが、リュイには聞こえていたようで視線を向けられるもののその視線は怒りではなく同意の意を込めていたものであった。
簡単な村人の護送。騎士達誰しもがそう思っていた。
けれども、数分後に自身達に降りかかる災厄に騎士達は、村人は恐怖し、死を迎えるもののいるだろう。
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