第4話 課外活動
空は晴天、道のりも順調に目的地である、都市国家であるジャールの領土まであと少しであった。
現在、学園を出て北東の方角に約一日歩き、二日目の昼頃近くにジャール国を囲う城壁が視界にうつりだすと同時に、僕ら同様に、ジャール国に向かう冒険者や商人達の数が多くみられていた。
「どこから出てきたんだろうねこの人数」
来る途中も人はちらほらいたけれども、それでも四、五人程度。確かに場所とすれ違ったりもしたけれども、それでもここにいる人数は大体30人ぐらいである。
「ははは、迷宮があるからね。迷宮に挑戦したい冒険者や冒険者向けに商売をしている商人たちが集まりやすいんだ」
そう最後尾である僕等の後ろを歩くマーレが笑いながら説明する。
「そうですね。僕らが下見にしたとき、迷宮に挑戦する冒険者達で街が溢れかえってましたし、ギルドも大混雑でしたよ」
そのマーレの隣にいるヴァルトさんがため息を漏らしながら口にする。ヴァルトさんの言葉に「人が多いのか」と口にすれば、
「まぁ、迷宮は私達のギルドランクの力とお金で貸し切りにしているから、邪魔な障害物はいないようにしているよ」
マーレの口から、冒険者達のことを邪魔な障害物扱いした。出会ったときは、少し厳しいけれども、優しい爺さんと思っていたけれども、一緒に暮らすようになって、嫌、ヴァールと出会ってから急激にマーレの口が悪くなっているように感じている。
やはりあれかな、旧友と出会うと、その時の性格が出てしまうというあれなのかなと思いながら前との距離が開かないようにと足を速める。
そこから2時間ぐらい歩き、ようやく町に入る為の城壁の門が見えた。そこには、役30人ぐらいがれるを成していた。
「おぉ、今日もよく並んでやがる」
先頭を歩くエーデルがげんなりしながら口にする。
「うわぁ、ここの迷宮はそんなにも人気なんですか?」
「そうだな…」
テト先輩の言葉にエーデルは少し悩んで「れるに並んでから少し説明しよう」と口にし、少しずつ動き出している列に僕等も並ぶ。
「んで、迷宮自体は軽い説明だけは受けていると聞いたが」
「はい、迷宮は摩訶不思議な場所で、迷宮の核である魔石から力を受け、迷宮を維持、迷宮内の魔物を生み出しているとヴァール先生が言ってました」
「後は、迷宮の魔物を倒せいた時低確率で物が落ちたりするって」
テトの説明に付け加えるようにテーゼが口を開く。
「そうそう、それと迷宮にはギルド協会がつけたランクが存在してランク一は初心者でも全層クリアできる場所でランク十が俺達Sランクのギルドだけが入場できる迷宮になる。それでここはランク三で、そこそこの冒険者たちでもクリアできる迷宮だ」
迷宮の説明するエーデルの「ランク十の迷宮はSランクは入ることはできてもクリアできるかは分からない」そういう風に僕は聞こえた。
「だが、迷宮が人気なのは早い話、テーゼ嬢ちゃんが言ったとおりに迷宮内の魔物を倒せば、低確率でアイテムが落ちる。そのアイテムが冒険者や商人たちのお目当てなわけさ」
エーデルは懐をあさり、一つのアイテムを取り出す。
「これは、この前いった…ランクなんぼだっけ?」
「ランク六の迷宮よ」
カメーリエの答えに「そうだそうだ」と笑いながら、手に持っている小瓶に再び視線を移し、
「これはランク六の迷宮で手に入れた強化アイテムだ。これを飲めば防御力が10分間上がる前衛にとってありがたいものだ」
エーデルさん曰く、この小瓶の中の液体を飲めば小型モンスターの攻撃の物理・魔術攻撃は大抵防げ、中型モンスターの攻撃も一定は防げれるらしい。
「いいな?私も欲しい?」
「僕も欲しい?」
そのアイテムの存在を聞くや否や、双子は興味津々にその小瓶を見つめている。
普段は何気ない事でいがみ合い周りを巻き込むくせに、こういった面白いことは真っ先に飛び込む双子の姿に思わず苦笑が漏れてしまう。
だけれども、そのアイテムに興味を示しているのは双子だけじゃなく、前衛で戦うメンバーもまた、双子みたいな行動には示していないが視線はそのアイテムに興味が向けられていた。
その一人にアルスも入っていたから「あれがあれば、アッ君も怪我の数が減るね」といえば、渋い顔させて低い唸り声が聞こえてきた。
列は進み、列に並んで約一時間で僕らは門を超え、都市国家であるジャール国に入国する。
ジャール国は中立をいうだけあって城壁内は様々な種族が集まっていたし、ラーネン都市が学園を中心にしている都市の為か、ラーネンを利用する人、住んでる者たちの多くは商人や一般市民が多くいるのに対し、ここジャール国は迷宮で稼いでいる為か、冒険者、それに連なる商人達が集まり、それを表すように門の正面の広場にあるのは鍛冶屋や防具屋、専用ショップや食事屋といったお店が多かった。
「じゃ、今日の予定を発表するからこっち側にいらっしゃい」
カメーリエさんの集合によって広場の端っこによる僕等Dクラス。
「みんな集まったわね。じゃ、予定をはい、エーデル」
「おい?お前さんが集めたんだからお前さんが言うんじゃねぇのかよ?」
「あら?普通はリーダーがこういうの仕切るものじゃないの?」
「ねぇ」とカメーリエさんはマーレやヴァルトさんに視線を移せば、二人はいつもの事のように「そうそう」「かっこよく決めてください」と答えていた。
「くそぉ、んじゃ言うぞ。本日の予定はまずは冒険者ギルドに行って、そこで皆にはギルド長に会ってもらう」
「え、そんな偉い人に会ってもいいんですか?」
「あぁ、なんせ俺達はここの売りである迷宮を朝の10時から昼の15時の5時間も貸し切りにさせてもらうんだからな」
貸し切りの言葉に「ひぇぇぇ」や「やった?」「邪魔な障害物がいない?」と口にする者までいた。冒険者達を障害物扱いするなんて絶対双子のどっちかだろうなと思いながら、僕も僕とて、自分の魔法で巻蔵食らうやつが少なくなるなと内心ほっとしてたりする。
「で、ギルドに行った後は今日泊まる宿に向かう」
「宿にはもう私達が、泊まる予約をしているから泊まれないってことはないから安心してちょうだい」
そうカメーリエさんが言えば「姉さん?」と双子が嬉しそうにはしゃいでいた。
「で、宿の後は自由行動だから晩御飯までに戻って来いよ」
その一言に、一斉に一部のメンバーの歓声が沸く。
門から冒険者ギルドの協会は遠くなかったが近くもなかった。歩いて約30分ぐらいの所に合った。
ここのギルド協会はラーネン都市のギルド協会よりも大きく、ラーネン都市が二階建てだが、ここは四階建てである。
そして何よりも人の出入りが多い為、「よし、まず俺達が受付をしてくるから、坊ちゃん嬢ちゃん達はここで待機だ」とそういってエーデルさんとカメーリエさんが先にギルド協会に入って約20分ぐらい経っているが戻ってくる気配はまだない。
「暇だね」
「あぁ」
あくびを噛み殺しながら、呟けば、隣にいるアルスから返答が返ってくる。
暇つぶしにと思って、ギルド協会に出入りする冒険者達を見ていたがどうも同じような顔に見えて来てしょうがない。
確かに種族ごとに特徴とかあるもそれを差し置いてもどうしようもなく、さっきと同じ人たちが行ったり来たりしているような感じであった。
「マーレ、エーデルさん達まだかかるのかな?」
同じように、エーデルさん達の帰りを待つマーレに話しかければ少し考え、
「そうだね…私も思っていた以上に時間かかっているような気がしているんだよね」
「前回来たときはこれほど時間かかってなかったと思うんだけどな」と零せば、マーレの横にいたヴァルトさんも「確かに」と懐から懐中時計を取り出し時間を確認していた。
「しょうがない、私が様子を見てくるからヴァルト、この子達をよろしく頼むよ」
そう残し、マーレはギルド協会の方へと向かった。
+*+*+*+*+*+*+*
エーデルとカメーリエがギルド協会に入ってもう数十分が経過し、しびれを切らしたクレアからの催促、まぁ、クレア以外にもDクラスの子達もちらちらとこちらを見て来ていたからそろそろ様子を確認するのにいい頃だったから、ギルド協会の中を様子見するために動く。
ギィィィと気の軋みの音を響かせながら扉を開けなかを覗く。
「だぁかぁらぁ、言っているだろう‼迷宮を貸し切りる経って五時間だけだ‼」
「はぁ⁈そもそも貸切るのがおかしいんだろうが‼」
「そうだ‼迷宮はテメェ―らだけが使用するもんじゃねぇ‼」
「もう‼人の話聞いてるかしら⁈私達はもうここのギルド長から許可を頂いているのよ‼」
「どうせコネで何とかしたんだろう‼」
「テメェ―らがS級ギルドなんのも疑わし‼」
ギルド内は二対複数での騒動が起こっていた。
「何をやっているのやら…」
そう言葉を漏らしながらギルド内へと足を踏み入れる。
騒動が起こっているのは受付の前。その為に受付にいるギルド職員はその騒動に呆れながらも巻き込まれないようにと身を縮めており、受付付近には騒動によって受付を利用したいのに利用できない冒険者達が依頼書を持っていたり、納品であろう薬草やモンスターの部位を持つ者達が困惑している光景に思わずため息をこぼしてしまう。
「エーデル、カメーリエ」
「マーレ‼」
「ちょうどよかったマーレ‼こいつらを何とかしてくれ‼」
声をかければすぐに反応した二人は、文句を言う冒険者達の相手を私に任せようとする。
というよりも、声をかけた為に一斉に向けられる避難な視線。中には殺気立つ視線もあることに再びため息をついてしまう。
その行動をどうとらえあのかわからない冒険者達が「何だこの優男は‼」「はぁ、ひょろっちいいやつだな」と見た目で判断してきた人たちが一斉に口を開き大合唱するものだから、
「静かに」
少しの殺気を混ぜて相手側にそう言いながら視線を向ければ、その集団からドンッ、ゴンッと何かにぶつかる音が聞こえたり悲鳴じみた声が漏れ聞こえてくる。
「エーデル、カメーリエ」
「「はい」」
「こんな戯言を聞いている時間はないでしょう。子供達がそろそろ我慢の限界のようですから早く事を進めてください」
「う、うっす」
エーデルが私達のギルドリーダーのはずなのにと、思いながらも「なら、子供達を中に入れて問題ないですよね」と言おうとしたけれども、それよりも早く、
「ちょっとちょっと‼どうしたのどうしたの‼」
「喧嘩?喧嘩よね‼よし買おうじゃない‼」
「あらあら、私達は外でいい子に待っているのに中でそんな面白いことしてるなんてひどいです」
先にギルド内に入ってくるは二年生の血の気の多い子達を先頭に
「ちょっと‼三人共、ダメだって‼」
「そうです‼待てです‼そうですよねアルマ‼」
「嫌、こいつら動物じゃねぇーから、おい、レレス、足上げんな」
血の気の多い子達を止める為に三年生がその後を続き、
「あははは、本当に入っていったよアッ君」
「クーちゃんがそそのかしたくせに」
「うわぁ…でも本当に喧嘩の一歩前じゃないですか…」
扉からひょっこりのぞき込むは私のかわいい子供達とヴァルトであった。
後で注意しなければそう思いながら、
「しょうがないねぇ」
と言葉を漏らしてしまう。
+*+*+*+*+*+*+*
中に入っていったマーレを確認して、あと何分かかるかなとアルスと話していれば、中から感じた殺気に話していた僕らの動きは止った。
だから、「これは何か中で喧嘩事が起こっているようだね」と口にすれば、真っ先に反応したのは
「何⁈」
「なんですと‼」
クーゼとテーゼであったし、行動も双子が早かったが、
「ふふふ、これはこれは、待っている私達を放置して、これはいけませんわね」
レレスまで双子についていくとは思わなかった。そんな三人を止めようとテト先輩とニーア先輩がアルマ先輩を引き摺って止めに行くもい、三人の方が動きが早く、三人に続くようにギルド内に入って言って行ってしまうその光景に思わず笑ってしまえば、隣のアルスがため息をこぼしていた。
ん、アッ君?反抗期ですか?
「違う」
「あれ、僕今声出してた?」
「出してないよ」
「しいて言うなら何となく」と返された。
「こら、クレア」
「マーレ」
声がした方に視線を向ければ呆れながらも苦笑を浮かべるマーレがこっちに視線を向けていた。
「外で待ってなさいと言っていただろう」
「僕のせいじゃないよ」
そう言いながら僕はマーレの傍に歩み寄る。
「思ってたよりギルド内って綺麗なんだね」
「そりゃ、ギルド職員の人達が毎日掃除してるからね。でも床はすぐに汚れるけれどもね」
その言葉通りに、ギルド内は清潔感はあるけれども、土足な為に、床は泥や砂で汚れている。
室内に視線を向ければ、この場にいる冒険者達がこちらに視線を向けていることに気が付く。
その視線は、興味、好奇心、嫌悪、見下しなど様々な視線が入り混じっていた。
その視線がどうしようもな鬱陶しかった。
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