3-2
三年と二年生を送り出した後、僕等は相も変わらずに午前中は体力づくりをメインに授業は進み、現在はお昼休みとなり、昼ご飯を食べる為に僕とリーベは食堂に向かう。
「二人で食堂を利用するなんて初めてだね」
「はい、普段はニーア先輩やテーゼ先輩たちが一緒でしたから」
「そうだね」
食堂は、他学年他クラスが利用するために、Dクラスの先輩たちは気を使ってか、僕等と共に食堂を利用してくれる。
確かに、朝、クレアさんが言った通り、Dクラスは他学年、他クラスの人からつまはじきされているのが見てとれて、先輩達と一緒に行くのは心強かったし、先輩たちはもう慣れているのか周りからの影口など気にせず、普通に食事をしていた姿を僕は見習いたいと思っている。
「慣れないとね…先輩たちが返ってくるまで一週間、僕ら二人だけで乗り越えよう」
「はい?」
一人じゃなくてよかった。リーベもいてくれてよかった。
そう思いながら食堂の扉を開く。
開けば、食堂の扉に気が付いた者たちの視線が向けられ、「あれ、今日は二人だけ」「他の奴らはどうしたんだ?」という疑問の声が聞こえてきた。
他の先輩方は課外活動中で一週間おりません
そんなことを思いながら、空いている席を見つけそこに座り、僕等は昼飯を注文する。
注文はいたって簡単で、タブレットのような石版にメニューが書いていて、それをタップすることで注文が完了し、それをウェイトレスの人が運んできてくれる。
注文の仕方以外はこっちの世界のファミレスのような感じだな。
「蓮さんは今日は何を食べられますか?」
「ん…午前、めっちゃ動いたし、あ、これ食べたいかも」
隣同士に座って、僕等は石版を眺めて、それぞれの料理を頼む。
この世界というよりもこの大陸は、僕等みたいな異世界人を召喚や転生した結果、僕らの世界の文化が入り交ざっている。
一番わかりやすいのが料理。
和食、洋食、中華などなどでみる料理名が石板に書かれていた。
味に関しては少し違ったりするけれどもそれはそれでおいしかったりするので、冒険したい奴にはよいだろう。
そんなことを思いながら、僕等は食事を済ませ、教室に戻る為に移動すれば、前の方から、三鷹君と藤さん、マオさんが歩いてきた。
この学園にやってきてこの日が久しぶりに三人を見る。
三人の後ろにはたぶんSクラスの取り巻き達であろう人を数人つけており、あぁ、めんどくさいなと思ってしまった。
「あら、どなたかと思えばリーベと藤井さんではないですか」
マオさんの厭味ったらしく言われたあいさつに、マオさんの両サイドにいた二人は相も変わらず、「おっ、久しぶり」「あら」と声をかける。
そのやり取りに後ろの人達が何故かにらんでくるのに対し、怖いと思ってしまった。
よくよく、その取り巻き達の特徴を見れば種族はどうやら人族で、身なりもいいことを見ると、貴族のご子息ご令嬢の方々だろうことが分かる。
「あら、少し見ないうちにリーベさん、成長しましたか?」
「あ、はい、この前成長期が来ました」
藤さんの質問に、リーベはどもりながらも、そう、返していた。
神族は人よりも成長が遅い代わりに、定期的に来る成長期で一気に成長するみたいだけど、リーベはその三回目の成長期ではそんなに成長していないみたいだったけど、マオさんとは成長前から身長差はそれなりにあって、現在は、その身長の差が大きく開いてる。
そして僕もまた、リーベさんよりも身長が低いが、それでも少しの差、すぐに追いついて追い抜くのさ。
そう思っていれば、
「体は私より大きくなったみたいだけれども容姿はあまり変わらないようですし、能力値もあまり変わってないんじゃないのかしら??」
「それは…」
厭味ったらしくいうその台詞。
容姿が変わってないだと?目の前の人物は何を言ってるんだ?成長前も幼さ残る可愛さがあって、そばかすだって僕にとってはチャームポイントではと思ってしまったけれども、成長後は、幼さは少しなりを潜め、そばかすが無くなったのは寂しくなるけれども、無くなったからと言ってリーベの魅力が減るわけでもなく、もう好きだなぁって
「そこの巻き込まれは私の言葉に何か言いたそうですね」
「何でもないです」
まさか考えていたことが口にしてしまったのかと思ってしまったが、そうではなかったようで、「巻き込まれは黙って引っ込んでなさい」と僕は眼中にありません宣言をされた。
というか後ろの取り巻きもまた、僕の事を見て笑っていやがる。チクショウ?
今に見てろよ、俺の鑑定能力や転移魔法を成長させてお前らをギャフンと言わせてやる?
ギャフンと?
「あ、マオ。そろそろ行かないと時間無くなる」
「俺、お腹へって死にそうなんだよね」そう、僕等の今の空気を一ミリも読む気のない三鷹君がお腹を押さえながら口にする。
「そうね。前の授業で分からなかったところを質問してたらいつの間にかこんな時間だったからね」
「そうそう、だからねぇ、藤井達に構わずに食堂行こうよ」
「は、はい?」
おい、ちょっと待てよ?
僕が最初に絡んだような物言いにモノも押したいけれどもヘタレな僕は何も言えずに、あまつさえ、バカにするSクラスを僕らが避ける形でその集団は廊下を進む。
通り過ぎる時に聞こえた。「さすが最弱なDクラス」「何も言い返してこなかったわ」とか言ってきやがるし、その中で「神族ってマオ様みたいに綺麗な金髪じゃないのかしら」「そういえば、まぁDクラスに入るぐらいのだから出来損ないなんだろう」と、リーベまで馬鹿にされた。
でも言い返せなかった僕は情けない。
そんなこんなで先輩達のいない一日目が終了した。
寮には僕とリーベ、寮母しかいないせいで、部屋に戻れば生活音が聞こえず、自分だけしかいないのではと思ってしまうし、今日の昼頃の情けない僕の事を思い出してさらに空しくなって視界がぼやけてしまう。
でもたまに聞こえてくる上からの物音に、一人ではないと言い聞かせながら僕は枕を濡らしながら床につく。
そして二日目の授業は、昨日同様に体力作りがメインの授業だった。
基礎体力は大切なことは、入学当初に教えられていた為に分かっているのだが、それでも僕は魔法の練習がしたかった。
魔法が扱えるようになれば、自分自身に自信がつくかもしれない。
自信が付けば、ヘタレをぞつぎょうできるんじゃないかと思ってしまっていた。
そう思いながらも、先程まで酷使した体は地面とお友達状態になっていれば、
「蓮さん?大丈夫でしょうか?」
大地とお友達になっていれば、心配そうな瞳で僕を見つめるリーベ。
だけれども、リーベさん
「ごめん、その体制は…見えそうです…」
前かがみでこちらを見るせいで、胸元が大きく開いているその洋服から、その服の中が見えてしまいそうで、精神衛生上よくないが、そんなラッキースケベで僕の気分は向上してしまう。
チクショウ?
少しキョトンとするもすぐに理解したリーベは「ひゃぁあぁぁ、す、すみましゃんッッ?」と良きよいよくしゃがむが、いきよいよくスカートの裾が広がるから足が…
嫌、僕は何も見ていない。というか、リーベさん、少し僕に対してのスケベトラップをどうにかしてくれませんか?ワザとじゃないのは知ってるんですけれども、数が多いです。
そんなことを考えていれば、
「うんうん、最初の頃よりもましな体力になって来たんじゃないかな?」
遠くの方で僕らの様子を観察していたのかヴァール先生が、笑いながらこちらに話しかけてきた。
「おかげさまで」
「わ、私は、そこそこ体力があると思っていたのですが、先輩達と比べたらまだまだでした…」
僕は帰宅部で、学校行事によくあるマラソンでもドベから数えた方から早いほど、体力がない。親にさえ、お前はやればできる子な筈なのに、体力がないから、とさへ言われ続けた男である。
「それで次は何ですか?腕立てですか?屈伸ですか?」
「ハハハ、投げやりだね」
本当は、魔法が扱えれるようになりたいけれども、体力もないのも事実である。事実なのだが、ヴァール先生の言い方に少々…
なんであんなにマーレさんはヴァール先生の扱いがひどいのか何となく理解してしう。もしも僕がヘタレではなければ目の前の人物に罵声の一つか二つ小声ながらでも口に出すことができるだろう。
「そろそろ、魔法のまの字でも教えようと思ってな」
そう言ったヴァール先生の言葉に、元気になってしまった。
現金だな…
「まず最初に、リーベは魔法は成長期が来る前は使えていたんだろう?」
「はい」
「成長が来てから、うまく魔力が込められなくて」としょげるリーベに可愛いなと思いながら、様子を見守っていれば、
「まぁ、成長前のリーベの魔力が少なかったはずさ」
「はい」
「だから、魔力を三分割で例えて、三分の一を使おうとするだろう」
「え、そんなに魔法って魔力使ったりしちゃうの?」
「例えだよ蓮君よ」
僕の発言に、苦笑を浮かべながら、「基本は少量で使えるんだけど、説明するとそういうのってめんどくさいだろう」という言葉に、確かにと思うけれども、僕は誰かに教えるということはしないためにどこか実感が持てずにいた。
「説明を続けるよ、で、成長期後、再び魔法を使おうとするだろうけど、成長前と成長後の魔力量が圧倒的に違うせいで、同じ感覚で魔法を使おうとするけど体が出来てないせいで無意識にセーブをかけてしまって魔法が発動できないわけさ」
「そんなに増えたような実感は…」
「そりゃそうさ、まだひよっこの君達が分かるわけないさ。こういうのは熟練の奴が実感するものさ」
「あとは、自分の限界まで魔法をつかったりとかかな」と言い、付け加えるように「俺のクラスは限界まで魔法を使うから、自分の限界ラインは把握しているはずさ」と口にしていた。
確かに、Dクラスの先輩方は好戦的に見える。
特に二年生方は特にと言いたいぐらいに。
入学してからの授業で、第三グラウンドを使えば、僕ら一年は体力づくり、先輩たちは対人訓練なのだが、訓練であることを忘れるように不通に魔法を連発、人の急所を狙ったり、端から端までぶっ飛ばしたりと、誰かが血を流さなかったという日はなかったという程、好戦的だった。
「だからリーベは、使用する魔力量に慣れることをメインに授業を始めて、問題は蓮君なんだよ」
「僕?」
「そう、転移魔法は簡単に言ってワープとゲートの二種類のみ」
「それだけ?」
「それだけってお前さんはなぁ…確かに二種類ってのは少ないと感じるだろいうけれども、ゲートはこの世界のあらゆる場所に結べ、ワープは自身を移動させることができる」
その言葉に、
「瞬間移動とか、物を引き寄せたりできるようになったり?」
魔法は二種類だけれども、使いよう次第では、いろいろ使い道があるんじゃと思えば「確かにそうなんだけど」とヴァール先生は苦笑を浮かべながら、
「だけれどもその分難しい魔法でもある。だから、もしもの場合を考えて魔法を打ち消せれるやつがいなければ、俺も怖いんだよ」
ヴァール先生が言った、もしもについてを考えて、ゾッとする。
漫画や小説で見るように、練習もせずに一発で魔法が扱えるようになれるんじゃないかと思ってしまっていた。だって現に、三鷹君や藤さんはそれぞれの魔法を理解した後、難なく魔法を成功させて、それからは、特訓させて技術を学んで強くなっていった。
でも僕の場合は、失敗すれば最悪死んでしまうんじゃ、死ななくても体の部位が無くなったり、出現場所が変な場所だったら生き埋めだったり、水死したり…
その事実に僕は自分の魔法が怖くなった。
「安心しな蓮君。俺が安全に教えてやるからそう怖がるな」
にししと笑うヴァール先生に、「せ、先生らしい」と言ってしまったが、「そりゃそうさ俺は教師だからね」と笑いながら答える。
「未知なものを怖がるのは当たり前だ。まぁ、だからと言って蓮君だけ魔法の特訓をしないということはない」
「え?」
「蓮君はもう一つの鑑定の特訓をしようと思います」
その言葉に僕は
「それは特訓する必要のある魔法でしょうか?」
と口にしてしまったが、しょうがない。
だって鑑定って、ステータスを確認するようなものだと僕は認識していた。
「必要、必要、超必要よう。この大陸で鑑定持ちは10人ぐらいしかいない」
「10人は多いのでは?」
10人の数にうなれば「え、少ないのでは?」とリーベが驚いたように言ってきた。
嫌だってしょうがない、こっちでは10人に1人の何とかだったり、100人に一人の何とかだったりと、一体それは何人中に1人何だ?と思ってしまったりしてしまう。
「まぁ、話は戻って、鑑定にも種類がある。人のみの鑑定だったり物だったり、植物だったりとかだったりと分かれていたりする」
「じゃ、この場合は僕は人を鑑定できると」
「そうだね、で、他のも鑑定できないかやってみようと思ってな」
そういって、ポケットから取り出した水晶を取り出すながら、
「され、一年諸君。先輩達が返ってきた時に、自分達も成長したと胸を張れるように頑張ろうじゃないか」
そう口端を釣り上げて笑う。
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