第2話 目覚め
エンビディア国からの新入生を迎えてから二か月が経過し、弥生(3月)から卯月(4月)に変わる時期
ここ、ラーネン都市は、チェルシアン魔法学園の新入生達の親や関係者がこの都市に訪れだす。その為、この時期は、どこもかしこも騒がしくなる。
宿屋は、チェルシアン魔法学園から近い地区から早々に埋まっていくも、今年は去年以上の来客を迎えるようで満席の宿屋があふれ、まだ空きのある宿屋を探し回る使いの者達や、食事処は思った以上の客に食材が足りず、市場や、露店から食材を買いまわる者たち、小さな接触で大きな騒動を起こす他種族同士の喧嘩、を止めに入るギルドから雇われた冒険者たちがあちこちいた。
去年も小競り合いはあったが今年は去年以上に多く、冒険者ギルドも人手不足に困っていた。
なぜ今年が去年以上に忙しいという理由は去年まで来なかった者達が今年はやってきたからであった。
チェルシアン魔法学園に入学する異世界人である勇者を見に各国から様々な貴族がラーネン都市に訪れだした。
その中には、各国の王やラーディス教団の教皇もラーネン都市に滞在していた。
王たちの護衛の為に騎士団が、ラーディス教団の教皇を見に信者達がこの都市に集まってきた。
ラーディス教団の信者に至っては、街のあちこちで勧誘する信者たちが後をたたず、何より、勧誘を断る者たちに対し信者たちが暴行する事件が多発し、ラーネン都市は去年のこの時期に起こった事件数をゆうに越し、一層にピリピリした空気を纏う。
よく晴れた休日。
「あ!!クーちゃんとアッ君、いい所に!!」
外出するために、寮の階段を下りようと踊り場に出た時、上の方から声をかけられた為に、声の主へと視線を向ける。
「ニーア…とリーベと、藤井か…」
三階に続く階段を下りて来ていたニーアとその後ろに続く今年Dクラスに入ってくるリーベ・ディ・フォリーと藤井蓮がその後ろに続いていた。
だが、なぜだろう。
ニコニコ笑うニーアから何か嫌な気配を感じていた。
そしてその予感は当たっていた。
「この二人の武器を裏商店で見つけてきて欲しいのです!!」
「…えぇ…急に、何で…」
困惑する僕と、ニーアの言葉に首をかしげるアルス。
「本当は私とテトで行く予定だったんですが、急用がはいてしまって…」
「僕等だって今からマーレとの用が、」
「それなら大丈夫です!!先生が今頃、根まわ、交渉しているはずです」
「言いなおしても意味は一緒だよ」
ニーアの言葉通りならば選択肢は一つしかない。
「選択肢なしか…はぁ、分かった。だけどねリーベ、僕らと一緒に歩くならその翼を隠してほしいんだ」
「僕らは一緒に行動しない」と付け加えれば、リーベは怯えた表情を見せ、何か言おうと口を開こうとするも、その口から言葉は出ず、結局は「わ、分かりました」と、その翼を隠す。
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学園と都市を繋ぐ橋を進む。
橋の終点、都市の方には、不機嫌さを晒しながら無表情にヴァールにキャメルクラッチ(プロレス技)を決めているマーレがいた。
言っては何なんだが、遠目からその様子を見ている野次馬達がちらほらいるのが確認できた。
僕らはいつもの事な為に「またか」と思っていたが、後方から悲鳴交じりの言葉が聞こえてきた。
「うわぁ、あの人って、まさかって、下の人って大丈夫なの?」
「っっと、止めないでいいんでしょうか?!」
二人の言葉に、僕らはいつもの事だと伝えつつ、「巻き込まれたいなら止めはしない」とアルスの言葉に、二人は首が取れるのではと思えるほどのいきよいで首を横に振った。
そんな態度に、思わず苦笑が漏れながら、僕は口を開く。
「久しぶりマーレ」
「あぁ、クレアにアルス」
「凄く曲がってる…」
マーレへと声をかければ、無表情さから一片、いつも通りの微笑が返される。
ヴァールとのやり取りを見ると、本当にこの二人は仲がいいのだなと思ってしまう。
マーレの下には今だ固められているヴァールが「うわぁ、変わり身はやぁっ!?」とうめき声に近い、余計な言葉を口にするために、さらに背骨が本来曲がってはいけない方に曲げられていく姿にどう反応すればいいのか困ってしまうなか、マーレは、僕らの背後にいる二人に視線が向けられる。
「後ろの子が例の子?」
「あ、あぁ、うん、右から藤井、リーベ」
「ッッ!!藤井 蓮です。よ、よろしくお願いします」
「ひぃぃぃ、リーベ・ディ・フォリーでぅぅぅ。よ、よろしくお願いします」
BGMが悲鳴のせいか、はたまた目の前でヴァールのやり取りのせいか、二人の恐怖値がどんどん上がっていくのが分かってしまう。
リーベの自己紹介を聞き終えた時、マーレは少し眉間に皺をよせ
「へぇ、神族…容姿から見ると純血…」
「え?」
マーレの言葉にリーベが反応するも、その反応に返される言葉はなく、逆にその視線はリーベを品定めするように見るも、すぐに先程、表情に戻り
「私は二人の保護者のマーレといいます。Dクラスとは去年から親しくさせてもらっているから君達にも今後関わっていくだろ」
そう微笑むマーレに対し、向けられた二人は何故か引きつったような悲鳴に似たような返事を返していた。
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僕等が向かったのは学園から北の方角にあるヘラウス地区にある冒険ギルド。
外装は日本の昔建てられていた木造建ての役所のような二階建てとなっており、外からでも聞こえてくる中の騒がしさや、ガラスとガラスがぶつかる音、確か、ギルドには食事や酒を提供するスペースがあると聞いたことが、この時間帯で酒を飲む冒険者もいるのだな。
「ギルド協会に来るの初めて」
「まぁ、お前達には当分は必要ない場所だからね」
冒険者になるのは簡単で、年齢は5歳以上、それなりの実力を備えていれば冒険者になれるが、チェルシアン魔法学園は、学業を優先しているために、在学中は冒険者になることが許されていない。
その為にチェルシアン魔法学園に現在在籍している者たちには冒険者の証であるプレートは持っていない。
「中に入ろうか」先を進むマーレが扉を開け、中に入る。
僕等もその後に続くようにギルド協会の中に入る。
建物内にはちらほらだが、様々な武器を背負う冒険者達や、やはり飲み食いができるスペースでチームで騒いでいる冒険者達がちらほらいた。
室内の構造は、エントランスあたりは二階までぶち抜けている空間の為に、そこまで狭い感じはしないはずなのだが、入ってすぐの横の壁に依頼用の掲示板があるせいか、そこに冒険者達が集まり、雑談しているせいか、入り口あたりは少し手狭に感じられた。
その掲示板あたりにいた冒険者の一人がこちらに視線を向け、すぐにその表情が驚愕に染められた。
「おい、あの人ってラオファンの!!」
「うおぉ、マジだ!!今日は昼からだって聞いてたのに!!」
「本当に、綺麗な金髪」
一人の声から広がるように、周りの者に伝わりだす。
マーレが所属している、エーデルが率いるラオファン。全員がギルドランクAランクで構成されていた。
冒険者には、ランクが存在し、登録当初はFランクから始まり、ギルドの規定以内の依頼数をクリアする事でランクが上がるも、Cランクからは昇格クエストを受け、それをクリアしなければ、昇格は認められない決まりとなっており、ラオファンたちは、無事にそれらをクリアしてAランク、そろそろSランクの昇格クエストに受けるのではないかという話が噂話が出ていた。
Aランクの事もあり、周りからのギルドたちから視線を集める。
それは、今も同じで、冒険者ギルドにマーレが来たことによって、周りの視線は一斉にこちらへと向けられる。
そうすれば、いつもと違うメンバーでこの冒険者ギルドにやってきたことをだれもが理解し、口を開く。
「マーレさんの後ろにいる人達って誰か知ってる?」
「嫌、初めて見る」
「え?まさか、ラオファンとは別行動?」
見慣れない者、周りの者たちは憶測でモノを言い始める。
時間がたつごとに増えていく視線に、
「何ででしょう、ビシビシと背中に視線が」
「これが、美形達の傍にいるモブの気分…」
後ろを歩いていたリーベと蓮が思わず言葉をこぼしたことに、苦笑を浮かべてしまうも、藤井の言葉思わず「何言っているのさ」と思わず事あを返せば、悲鳴じみた言葉が返ってきた。
なぜこれ以上に、怖がられてしまっているのか、理解はあっても納得はできなかった。
「…はぁ、少しの辛抱さ」
「辛抱って…」
藤井は納得してない視線を向けてくるも、ここでの幼児はそんなに長くはない。
すぐにでも終われば、すぐにでもここから脱出できる。
「失礼」
「あら、マーレさんこんにちは。本日はどのようなご用件でしょうか?」
空いている受付嬢へと話しかけたマーレ。
女性は、素敵な笑みを浮かべ、言葉をつづけながらも、後ろにいる僕らに視線を向け、うち一人に声をかければ話しかけられた女性はマーレへと視線を向けた後、僕等へと視線を向けてきた。
「後ろの方は?」
「あぁ、私の家族とそのクラスメイトです。今日は私がギルドの倉庫に保管させてもらっている物を取りに来たので、そこに通してもらってもいいでしょうか?」
冒険者ギルドはBランクから有料で、倉庫を貸し出しをしていた。
場所によって倉庫の数や、倉庫の大きさは違い、ここの冒険者ギルドもまた、倉庫の数は少ないが、倉庫の広さは結構ある為に、複数で借りる人たちもいるようだけれども、マーレの場合は個人で借りているようだが、マーレ曰く、どこにモノが置いているかわからなくなるほど置いていると聞いていた。
マーレの言った言葉に、受付嬢は驚愕し、しばし僕らとマーレを交互に見ていた。
その態度に、
「何かおかしいことでも言いました?」
「いえ、でも、種族が…」
「そんなことをあなたが気にすることでもないと私は思うのですが」
そう笑うマーレだが、声音から苛立ちが感じられた。
それに気が付いたのか受付嬢は「いえ、あ、倉庫ですよね?」と席を立ち、受付の中へと入れさせてもらった。
倉庫はどうやら受付内から行く仕組みなのかと、受付の中を見回す。
受付内は、よく病院などで見るような感じであった。
受付を入ってすぐに三つの扉の前で止まれば「こちらの扉が倉庫へと続いています」と三つの扉の左側の扉を開けた。
マーレは案内してくれた女性にお礼をこぼし、「さぁ、行こうか」と一度後ろを振り返り中へと進んでいった。
明かりがともる、階段を下りていく。
下りていく中、
「マーレ怒った?」
というアルスの言葉に、前を進んでいたマーレが困った風に笑い返す。
「怒ってはないですよ。えぇ、ただ、何でしょうね…めんどくさいと感じてしまいましてね」
「めんどくさい?」
「見た目が似ていなければ、他人は私達を家族とは認めないのだと、容姿が違っていたとしても、血が繋がっていないとしても、人によって家族という形はあるのではないのかと思っていまして」
マーレの言葉に、少しドキリとした。
昔から、母親であるケイルと自分の容姿の似ていなさに、前世のある自分はどことなくコンプレックスを感じていた。
ケイルは金髪なのに、僕は黒髪、ケイルは黄緑色の瞳なのに僕は青色、そうやって、違う場所ばかりを見つけて、家族な筈なのに、自分は本当に?と考えてしまうと気が合った。
あぁ、昔の自分も見た目のつながりを探してしまっていたな
過去の事を思い出していれば、ふとマーレと視線が合った。
「安心しなさい。周りがどう思おうと、お前がどう思おうと私達は家族だから」
ふと、笑われたその顔に思わず、「し、知ってる」と返してしまうも、本当のところ嬉しいと思った。言われないよりは、こうして言葉にしてくれた方が僕は嬉しかった。
地下二階の所で会談は終わりを迎えた。階段の終わりとともに現れた鉄の扉。その重い鉄の扉を開ければ。木造から一変し、石造りへと変わった。
石の廊下を歩き、扉を五つ過ぎた所で、一つの扉の前で止まった。
「ちょっと待っていなさい」
そう言って、右太ももにつけられているレッグポーチから水晶が取り出された。
その水晶は六角形になっており、その水晶の中に青色の模様が浮かんでいるように見えた。
その水晶を、扉の、水晶と同じ形をさせた穴に差し込めば、扉が一瞬だけ光、ガチャリと、鍵が開く音が聞こえたと思えば、扉はひとりでにかってに開く。
その光景に様々な反応を示していれば、マーレは笑いながら、
「さぁ、好きな物を取ってきなさい。大抵のアイテムは私には不要なものだから」
開かれた扉の中には様々なアイテムが保管されていた。
長剣やハンマー、槍など、他にも盾やアクセサリー、鏡といったマーレが使用しなさそうな物まで保管されていた。
そして微かながらにも感じられる魔力の気配に、これらが普通の店では買えないものであると気づかされる。
魔力が宿ている物はこの世界では魔法具または宝具などがあげられる。
僕がケイルから受け継いだ弓やマーレが使用している弓は宝具に属するものである。
宝具は、遺跡から発掘されるものな為に、一般の武器屋には出回ることはない。だけれども今目の前の部屋にはそれらが眠っている。
その事実に、興奮を覚えてしまった。
「んじゃ、言葉通りに僕等は片っ端から両剣を回収していくね」
「あぁ、もともとそのつもりで、今日は誘ったのだ、遠慮せずに持っていきなさい」
その言葉に「やったー」と心の中でガッツポーズをしながら室内へと入った。
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「君達も何か気になった物があれば持って行っていいよ」
今だ、部屋の前に立ちつくすリーベと蓮へとマーレが話しかければ二人は大げさながらに肩を、体をビクつかせる。
その反応にマーレは苦笑を漏らし、
「ヴァール、君達の教師から頼まれているからね。彼から報酬も貰う予定だから気にしないでいいよ」
笑いながら話しかけながら部屋内を見れば、楽し気に剣類をあさっていくクレアとアルスに視線を向け「うちの子たちが良いモノ取って行ってしまうかもしれないよ」と再び苦笑を漏らす。
その様子に蓮とリーベはお互いへと視線を向け「ありがとうございます」とマーレへとお礼の言葉を口にし、クレア達よりも遅れながらも室内へと入っていった。
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「何か私でも使えそうな物は」
室内に置かれている様々な品に目移りしてしまう。
最初は武器だけが置いてあるのかと思ったけれども、よく見れば、装備品や素材なども置かれていた。
「こんな綺麗な物、本当に貰ってもいいのかしら…」
ここに来る前は、私がもらえる者は、全てお古や不必要になったものばかり。
だから、こんな風に綺麗な物を自分が選んでもいいと言われた時、嬉しいと思ったと同時にどうしたらいいのかわからなくなってしまった。
そんなことを考えながら歩いていれば、足元にあるものに気が付かずに「わぁっ?!」と変な声を上げ、周りの者を巻き込んでこけてしまった。
その音で、品物を選んでいた藤井様やマーレ様方が私の方に視線を向ける。
その事に私はどうしようもなく恥ずかしく、その場をう置くことができなかった。
「だ、大丈夫?怪我とかしてない」
動かない私に、近くにいた藤井様が、駆け寄ってきてくださった。
その優しさに、嬉しくなると同時に不甲斐なさがこみあげてきてしまった。
この見知らぬ世界に召喚され、尚且つ藤井様は勇者様方の近くにいたせいで巻き込まれてしまった方。
「リーベ?」
「あ、だ、大丈夫です!!す、すいません!!」
再び聞こえてきた声に、慌てて上半身を起こすも、視線を藤井様に向けることができなかった。
それを察してくださったのか、藤井様は「気を付けてね」とそう残してまた先程の位置まで戻っていってしまわれた。
少し、寂しいと感じてしまったけれども、その思いを振り払うように一度首を振り、先程躓いてしまったモノに視線を向ける。
「これは、棒?」
微妙な高さ、私の足首ぐらいの高さから出ている棒に私はこけてしまったのだと自覚すると同時に無性にその棒が気になってしまい、私はその棒を掘り出すことに決めた。
上に乗っている宝石や装飾品をのけていく。
その途中、少し古びた外見の木箱を見つけ、その中を確認する。
木箱の中に入っていたのは六つのブレスレットであった。
五つはわっかのような形状だが、一つだけ幅約三センチあり、石が三つほど埋められ、尚且つその細工もまた素朴ながらも綺麗だと思った。
そのブレスレットを見つめ、ふと私は「藤井様が必要になる物では」と根拠のない考えが頭に浮かんでしまった。
いつもならば、渡したら困ってしまうのでは、私からはイヤではないか、そんなことを思ってしまうのに今回だけはそう思わなかった。
「喜んで下さったら嬉しいです」
先程とは違う感情がこみあげながら再び作業を進める。
それから数分。
その棒状が私の手にあった。
約二メートルほどの長さに、その棒状の先は矢先のように尖り、その先端付近に布がつけられていた。
「旗…あ」
布は長方形で長く、その布に描かれた白い鳥を中心に茨が、薔薇が描かれていて、その柄から視線を外すことができなかった。
「それが気にいったの?」
「えあ、はぁっっっ!!」
唐突に聞こえた声に驚愕し、その拍子に隠していた翼をいきよいよく出現させ「はぁっっっ」背後から聞こえてきた声の主へと直撃したのが分かって、恐怖心が沸き上がる。
「クレアさ…あ、あ、ごめ、ごめんなさ」
「別にいいよ。僕のほうこそ急に声をかけたし、というより翼をどうにかしてくれたら嬉しいんだけど」
かけられた言葉は思っていた言葉ではなかったし、態度も怒っていなかった。
少し驚愕していれば「毟る?」その言葉に慌てて魔法をかけようとしたけれども、再びクレアさんの顔に翼をぶつけてしまい、早くしないとと、また同じことを数回繰り返し、ようやく魔法が成功していたころにはクレアさんの表情は可哀そうなものを見るような視線になっていた。
「…で、僕が声をかけても気づかなかったリーベさんは何か良い物でも見つけたの?」
「うぅ…すいません…その、この旗と…あと、あれ?あ、この木箱です!!」
クレアさんの足元付近にあった木箱を指さして答える。
「だって、マーレ。貰っていくよ?」
「あぁ、私は一行に持っていってもらっても構わないよ」
マーレさんの許可も貰えたことに私は嬉しく、笑いがこぼれてしまった。
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「が…あのような物、持っていたかな?」
ふと零した言葉に、回収を終え、私の元に戻ってきていたアルスに届いていたようで
「どういうこと?」
「あ、あぁ」
その質問に少し考えながらも
「嫌、私がただ忘れているだけなのかもしれない」
と返し、クレアが一生懸命手入れしているのだろう、アルスの柔らかい髪をなでながら、再び視線はリーベが持つ旗に向けた。
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2020.06.27 本編修正・追加




