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紡ぐ物語 -FUTURE-  作者: 稀世
02:中立チェルシアン学園
30/47

第8話 クラス対抗戦Ⅱ





「さて、クラス対抗戦まで二週間ちょい、ようやくトーナメントが発表された!!」


ドンッと黒板を叩きDクラスのみんなの視線をそこに集中させる。

黒板に貼られている一枚の紙に三つのトーナメントが書かれていた。

上から三年、二年、一年と書かれ、三年は四組しか無い為にシード権などは無くそのまま二回戦で決勝である。

二年からはDクラスが作られた事によって五組、シード権が発生するもそのシード権はSクラスで埋まっており、それは一年も同じであった。

そして、二年のDクラスの初戦はBクラスで二回戦から、一年はAクラスとの対戦で一回戦からであった。


「この紙に書いている通り、俺のクラスの一回戦は一年組からとなる。二年生は一年が終わった後に二回戦目だからな」


クラス対抗戦は三日間に分けられており、一日目は全学年の一回戦と二回戦を行い、二日目に一年と二年の決勝戦、三日目に三年の決勝戦となっていた。


「ちなみに優勝クラスには食堂一品一ヶ月無料券がもらえるぞ!!」


優勝商品を聞いて、こよなく食堂の食事を愛しているニーアと双子は喜びの声をあげ、以外にも以外の甘党であるアルマもまたその眉間をピクリと動かす。


「んじゃぁ、今から一日目のチームを発表するぞ」

「え?そんなのあるの?」


「その学年全員で出るのかと思った」とグーテが言えば


「こらこら、そうなれば三十対五じゃ、話にならないだろう」

「えー!!そうだと思ってたのに」

「そうだよ、そうすれば近くにいる奴に魔法放てば絶対に当たるし」


「倒し放題だと思ったのに」と声を揃えて言う双子に去年、クラス対抗戦を経験しているテトとニーアは苦笑を浮かべる。


「予選の人数は五人、決勝戦が十人だ」

「それだと、一年生は結局全員出ないといけませんわね」

「あぁ、一年はそれプラス二年生の予選に二人、決勝には全員での出場となっている」


ヴァールの言葉にテトが反応する。


「せ、先生その言い方だと、今年は決勝まで行くという風に、聞こえて…」

「そりゃ、今年は決勝目指していってんだが?」


当たり前に答えられた言葉にテトは顔面を青ざめさせ、口から魂を出すように表情がごっそりと向け落ちるも、すぐに我に帰る体全体で震え出す。


「そ、そんなの無理だよ…」

「はいはい、今年はギブアップ無しだからなテト」

「っっっ!!」


その言葉に事情の知らない今年入ってきた一年組の僕等はその言葉に首をかしげる。

事情を知っているニーアは困った風に微笑み、アルマは視線を向けているがその表情は以前と変らず眉間に皺を寄せているだけであった。


「まぁ、去年の話はしないけれども今年は一年も入ってくれた事で人数もギリギリ足りないぐらいだ。お前達の本気ならばそんなそこらの一般生徒など目じゃない!!」


それはつまり自分達の敵はSクラスであると言っているようなもの。

ヴァールの言葉を他のクラス、そのAからCクラスが聞けば激怒し、クラス対抗戦並びにその日常生活に支障をきたしてしまうだろう。


「ちなみに、自分の武器に特性がある奴は武器の特性を使用したら失格になるからな」


そこまでヴァールが言った所で本日の授業を終了の鐘が鳴る。


「んじゃぁ、これで授業は終了だが、クレアとアルスはこの後俺の所来い」


そういい残し、ヴァールは教室を後にする。


「この頃、呼び出しが多いわね」


隣の席のレレスが話しかけてきた為に、片付けの手を一旦休めレレスのほうへと視線を向ける。


「あぁ、ヴァールにいろいろと教えてもらっているんだ」

「あら?授業中だけじゃ不足なの?」

「不足?というよりも僕がまだ、今教わってる魔法を操れ切れてないから他の人を巻き込まないように個人練習に付き合ってもらってる」

「何それ、何それ!!」

「面白そう!!」


いつの間に話を聞いていたのかグーテとテーゼまでもが話しに入ってきた。


「ねぇねぇ、私達も」

「僕たちも行きたい!!」


案の定、予想通りの言葉を言う双子。


「クレア、そろそろ行かないと」

「あ、待って」


いつの間にか帰り支度を整えたアルスが後方に立っており、僕も止めていた手を動かす。


「ねぇねぇアッ君」

「駄目」

「まだ何も言ってないじゃない!!」


双子がキラキラとした眼差しでアルスに話しかけるが、アルスは次の単語を言う前に答えた。

その対応に不満を持ちブーブーと何かしら文句を言う双子をレレスは「言い年して恥ずかしくないのかしら?」となだめれば「見た目が子供だから恥ずかしくないもん」と見た目は10代ぐらいのロリショタ、だが実際年齢は17歳である。


「じゃぁ、僕等は行くね」

「頑張ってらっしゃい」


そう見送られたまま二人は教室を出る。



現在、Dクラスが使用している教室は三号館の二階の南端の教室、僕等が目指す場所は一階の丁度教室の真下の教室であった。


「少しは進歩して欲しいな…」

「大丈夫、前よりも言う事聞いてる」


目的の教室まで行くまでに二人は雑談を交わす。


それは、今から行われる個人授業に関してのものであった。

入学式当初は一週間に一、二回程度であったが、クラス対抗戦に向けてほぼ毎日個人授業をしているが成長している感じがなかった。


「最初は影みたいだったのに今じゃ、見た目も変ってきてる」

「不思議だよね…」


過去、暴走させてから、あまり力を発動させていない為に、発動中のその魔法を確認できていなかった。

だが個人授業を始めた時にその魔法をじっくりと確認した。

影のように黒一色なのだが、水のように波打っており手を突っ込めば水のように波打った。

まるで影の形をした水溜りのようであった。


それに初見である僕とヴァールは驚愕し、暴走時を目の当たりしていたアルスにとってその光景は異質に感じたようだった。


何せ、あの時発動した時はそのような反応など無く、ただただ全てを飲み込む闇であったと。


僕はそれを“凪”と呼び範囲、操作、効果の練習を、アルスもまた前回の属性判定で発覚した光魔法をヴァールに教えてもらっていた。



「着いた」


“準備室”と書かれた扉の前に辿りつき、ドアを数度ノックをすれば部屋の中から入室の許可が聞こえ、僕らは教室に入る。


教室内はさまざまな本や紙、道具など乱雑に置かれた室内の奥に置かれた机の前に置かれている椅子に座っていたヴァールがこちらに視線を向け「遅かったな」と一言を零す。


「ちょっと、グーテとテーゼに捕まっていました」

「あぁ、あの双子ちゃんは面白い事には首をつっこみたい体質だからねぇ」


そう言葉を交えながらも、ヴァールは軽く手を振れば右側に置かれていた本棚が音を立てて移動する。

先程まで本棚のあった場所の後ろの壁に隠し扉が現れた。


「さて、本日の特訓も開始しようか」


ヴァールはニヒルと面から出ている口角を持ち上げ僕らにそう言ったのであった。





+*+*+*+*+*





パンパンッ


晴天の青空に上がる数発ののろし。


[では、今からクラス対抗戦の開会式を行います]


そして流れだす放送音に第一グラウンドに集合している全校生徒は一気に気を引き締める。



本日から三日間にかけて行われるクラス対抗戦。

主な会場は、見た目は第二、第三とは大きく違い、グラウンドの周りに観客席がある、俗にいう闘技場の形をさせた第一グラウンド、第一グラウンドはこういったイベントごとには必ず使用される。


第一グランドの観客席は約千人前後。

本日もその観客席は生徒やラネーン都市の市民達、生徒たちの保護者などが観客席が埋められる。


[一回戦目は一年Aクラス対一年Dクラスです]


大戦表の発表に観客席はざわめく。

何せ、優秀なAクラス対劣等なDクラスなのだ、もうすでに結果など見え見えな大戦に楽しみに見に来た観客達は残念なタメ息を、言葉を漏らす。


[試合開始は30分後、一回戦を戦うクラスは第二、第三グラウンドで練習を行って下さい]


第一グラウンドが本会場ならば、第二、第三は次の対抗戦に出場するクラスの練習場所となる。

練習には魔法を当然使用するために各グラウンドには結界担当の教師が最低でも一人は配備される。


第二グラウンドは一年Aクラス、第三グラウンドが一年Dクラスの練習グラウンドと決まり、各グラウンドに結界担当者が配備されるも、第二グラウンドに集まっているAクラスの生徒は殆どが軽いアップのみ。

本格的な練習をする者はおらず、それをグラウンドの外から見ていた結界担当者は、


「うわぁ、こりゃぁ舐めきってるな」

「まぁしょうがないじゃないか?相手がDクラスなんだから」


そう軽い話をしながら軽めの結界を維持させる担当者たち。


「そういえばDクラスはどうなんだ?震えたりしてるのか?」

「あ…それがさっきから二年と何かしら話してて動いてないんだよな」

「はぁっ!?もうすでに勝てないからって練習する気もないってか」


第三グラウンドの入り口付近で固まっているDクラスに教員達は呆れつつ、同情のため息を送る。


「お、ようやく行動し始めた」


その言葉通りに、一年組が何か呆れつつ各々、広がりアップをし始め、二年組の三人、特に黒髪のふくよかな体系の生徒はオロオロしながらも一年生のアップする光景を見ていた。


「ははは、アイツって確か、去年初回で降参したDクラスの委員長だろう?」

「あ、確か…」

「あれは傑作だったよな、相手の気迫に負けて逃げ帰る姿」


だんだんと大きくなる声は第三、第二グラウンドに響き渡る。





+*+*+*+*+*





「き、危険と思ったら降参していいんだからね」


第三グラウンドにたどり着きテトが最初に言った台詞に僕ら一年は呆れたような視線をテトに向ける。


「テェートォー先輩…いい加減そう言うのやめて欲しいんですけどぉ」

「そうそう、僕等が勝てないみたいな言い方、癇に障っちゃうだけど?」

「でも、でも、攻撃当たったら痛いし、女の子とか怪我して跡に残ったりしたら」

わたくしそういうの気にしませんわ」

「そうそう、この中で一番美人さんのクーちゃんが怪我するなら納得するけど」

「嫌々、テーゼも美人だよ!!僕の中でダントツの美人さんだからね!!」


話の内容に勝手に名前を出されたクレアこと本人である僕ははもうすでに諦めており、何かしら突っ込めばさらに状況を悪化させてしまう事に気づきこの頃突っ込むことをやめた。


「まぁまぁテト、落ち着くです。これに優勝すれば食堂一品一ヶ月無料券がもらえるんですよ!!」

「あぁ、そうすれば甘い物が一品追加可能だ」

「ニーアもアルマも!!無理だよ!!一回戦目で負けちゃうよ!!」


負ける。

はっきりいうテトにいい加減に呆れる一年は「私達もアップを始めましょう」とレレスの言葉で各々が邪魔にならない所に広がり体を解す。



「テトがマイナスなことばかり言うから一年達も呆れちゃったじゃないですか」

「うぅ…」

「いい加減にその性格を直せ」


バンダナの影がかかっている為に余計に凄みの増すアルマの睨みにテトはその巨体を震わせ小さく丸々。

そんな時、結界を張っている教員達の方から雑談が聞こえてきた。


「ははは、アイツって確か、去年初回で降参したDクラスの委員長だろう?」

「あ、確か…」

「あれは傑作だったよな、相手の気迫に負けて逃げ帰る姿」


その言葉に一年の動きが一斉に止まる。

だがグラウンドの外にいる担当者は、それに気づいていないのか、笑い声が響き渡り声もでかくなりだす。


「何なんですの!!」

「あいつら…」


響き渡る笑い声、先ほどの言葉を言った教員やAクラスに物言おうと体を動かす二人に対し


「い、いいから、怯えて逃げたの…本当の事だし…笑われたって仕方が無い…でも、」


テトは顔を伏せていたが、顔は赤面、涙目となっていたのを遠めでもわかった。


「では、そうですね。遠距離の得意なクレアにお願いしましょう」

「…あー、了解『風の恩恵を受けし白き弓よ 僕の下に来い』」


唐突に振られた言葉に、一瞬理解できなかったが、レレスが見ている方を視線でとらえたことによってその言葉の意味を理解し、ピアスの魔石から弓を取り出す。


「あ…確か『水の精霊よ 大気に存在する水をこの手に集め 敵を凍らす矢となり 敵共々砕け散れ 氷の矢フリーレンボーゲン』」


長ったらしい攻撃魔法の詠唱を唱え的を絞る。


絞る時に後ろから「わぁわぁわぁ!!」と間抜けな叫び声が聞こえてきたが総無視し、矢を放つ。


的は結界担当者であり、隣接している第二グラウンド。

唐突な攻撃魔法に結界担当者は驚愕し結界を強化しようとしていたが遅く、氷の矢は結界をガラスのようにパリンッと音を立て破壊。

結界担当者たちの真横擦れ擦れで過ぎ去った氷の矢は第二グラウンドの結界までも容易く壊す。そのせいで他所はスピードが落ちた矢はAクラスの防御魔法によって防げたが、唐突な出来事に周りの者はまだ頭が付いてきていないのか、グラウンド内には沈黙が続く。


だが、その空気もまた僕等Dクラスの手によって壊される。


「あー、あー、そんなに脆いとは思わなかったな」


「手加減したんだけどな」とどこか棒読みになりながらもそう答える。


「そうそう、というか雑談して余裕そうにしていたわりには」

「案外、結界も防御魔法もよわっちいんだねぇ」


自分達が煽られているのだと、バカにしたものだと理解したAクラスと結界担当者たちは、様々な暴言を吐くもそんな言葉は響かない。

何よりも


「口で言うのは簡単よ、行動で示して欲しいわね」


レレスの言葉に、先ほどまでまとまっていないAクラスの者達は「獣族の分際で!!」や「ハーフの奴らが何をほざく」と一致団結させたように綺麗に暴言を吐く。

例え隣の者が自身達の種族の悪態を吐くも、そんなの目の前の敵がいるのだから気にするそぶりも無く自身達もその悪態を吐く。

だけれども、それは冷静になったときの争いの種になるなど現在の者達は知りもしないだろう。


そして、タイミングは良くか悪くか、一回戦の開始10分前の放送がなる。


「あら、そろそろ行かないといけなくなっちゃったわね」

「んじゃぁ、Aクラスの方々は」

「またのちほど」


去り際の言葉を残し僕らは第一グラウンドに向かう為に出入口へと足を進める。

その途中、今だ固まっている二年生、特にテトへと視線を向け、


「テト先輩、必ず勝利をしあなた方の汚名を返上させてあげますわ」

「え?」

「そうそう」

「だから、観客席で楽しみに見ててよ」

「ちょ、ま」

「まぁ、次に負けるとか降伏しろなんていったら手元狂うと思っていて」

「ひぃっ!?」

「負けはしないけどね」


好き勝手に言葉をテトにかけながら第一グラウンドへと足を進める。





+*+*+*+*+*





「何で皆…」


先ほど一年達からかけられた声は皮肉めいていたけど、僕が思っていたようなものじゃなかった。一年生達にはそんな表情はなかった。

同情も軽蔑も、多少の呆れは入っているんだろうけどいつもと変らない態度だった。


あぁ、なんて自分は恥ずかしい奴なんだろう。

勝手に見下されるのだと、軽蔑されるのだと人を貶めてしまっていた。

彼ら、彼女らはあんなにもまっすぐしているというのに…


ギュッと下唇をかみながら鼻をすする。

「さぁ、泣くのはまだ早いですよ」そう声をかけられ僕の右手をニーアが取る。

「そうだな、涙は優勝してからにしろ」といつも通りの声音で左側をアルマが一緒に歩るいてくれる。


そんな二人にまた込み上がって来る感情を噛み締める。


あぁ、何て自分は素敵な仲間たちを持ったのだろうと…





+*+*+*+*+*





今現在、観客席は今さっき繰り広げた試合に唖然と驚きつつもそれよりもその結果にもまた驚愕していた。


[あ、っっ!!勝者一年Dクラス!!]


驚愕しつつも自身の本来の役目を思い出す放送の人は声を裏返させながらも先ほどの勝利結果を告げる。

だが、そうしても観客席も生徒たちも今だ動けずにいた。




それは一回戦目の試合前まで戻る。



[両者入場]


その放送と共に入場両者。当然観客席は、


「秒殺されるなよ」

「痛い目見る前に降参しろよ」

「Aクラスもそんなやつらさっさと退場させてやれ!!」


などと好き勝手にいうものの闘技場へと入場した各クラスの空気は様々であった。一年Aクラスは殺伐とし、同種族でしか近づかず他種族が一歩でも近づいた時には「こっちくんなこの家畜やろう」や「惰弱」などと罵りあい。

片や一年Dクラスは一年Aクラスと違い他種族とでも仲が良く「頑張っていきましょう」や「後衛はクーちゃんとレーちゃんだよね。前衛の私達がしっかり稼いでくるからね」と仲良くしあっていた。


その光景に観客席の市民達は「あーDクラスの一年生は今年も仲良しなのか」と「Aクラスの空気めっちゃ悪いじゃん」と声が出始める。


[では、両者準備を始めて下さい]


その合図と共に両者は後衛と前衛に分かれ、自身の武器を取り出す。

だが、一年Dクラスの後衛陣は武器を出すことは無かった。武器を出すのは前衛陣だけであり、それに対し、後衛陣はやる気がないだの勝つ気が無いだのと好き勝手に言われ、ここで観客席で観戦していたテト達もまたその光景に唖然としていた。


[…では只今より一回戦を開始します]


高らかに鳴り響く笛の音に一斉に動き出す。

すなわち勝敗も動き出したのであった。

統制もクソも取れていないのに対し片や一人が突っ走るがあとの二人がそれに合わせる様に取りこぼした敵を確実的に落としていく。

弱者だ、劣等だと甘く見ていた結果が、自身の力を慢心していた結果が目の前に広がっている。


「う、嘘だ、こんなの…」


魔法を発動される前に鞘に入っている剣によって詠唱の中断、尚且つ運よく発動したとしてももうすでに双子のどちらかによる妨害魔法によって強制中断させられ暴発、それは術者に跳ね返り酷い末路を迎える。

それは反則なのではと咽から出そうになるが審判者である教師は何一つ言わないために反則にはならずその妨害魔法による被害は跡に立たなかった。


「何で、何でこうなるんだよ!!何してんだよお前等僕を守れよ!!」


リーダーは咆える。自分が倒されれば負ける。

AクラスがDクラスのような劣等に敗者に負けるなんてありあない。

近場にいる他種族の同じチームのメンバーに声をかけるもその生徒は我が身かわいさにリーダーを助けることなくただただその光景を見ていた。


「終わりだ」

「え?」


暗転する視界。襲ってくる痛覚にそのリーダーは叫ぶ。痛い痛いと喚き散らす。


それはあっけない幕引き。

反撃を与えることなく一年Dクラスは前衛三人によって勝利を掴み取った。

その事実に観客席も、まだ意識が保っている生徒達も審判者も声を上げる事ができなかった。

だが、いち早く我に帰った放送の者だった。鳴らされた試合終了の合図によって審判者もDクラスへと勝利の旗と共に、


「勝者!!一年Dクラス!!」


勝利宣言を口にする。


それによって観客席もポツポツと言葉を漏らしていくもまだ動けない者が半数であった。


「ふざけるなふざけるな!!獣族の分際で僕を!!僕の顔に泥を塗りやがって!!」


意識を戻したリーダーは自分を倒した相手へと掴みかかる。

同じ前衛の双子は思わず「アッ君!?」と声を漏らすも等の本人は動揺するそぶりも無くただただ無表情にそれを視界に写す。


「お前等、人生負け組みは勝ち組の僕の土台になってればいいんだ!!何調子こいて勝ちやがる!!ふざけるなよ!!何か反則してんだろう!!」


引っ張られる学ランの襟元。

強く引っ張られたころによって留めていたボタンがブチッと一つ取れ、つられるように二つ三つ取れる。

そうすれば留めていた前は開かれる。

そこでようやくアルスは現状が自分に厄介な事になり始めていることを理解し目の前の生徒をどうにかするために考え込んでいたせいか、勝手にヒートアップしている目の前の生徒の身勝手な暴言はアルスには届いてなかった。


「獣風情が!!人族の僕に攻撃しやがって獣畜生が!!」

「ねぇ、いい加減にしてくれるかな」


一年Aクラスのリーダーの生徒の腕をその声の主は掴み、ひね上げる。ひね上げられた生徒は激痛と共に再度、土の上へと転がるように倒れこむ。


「自分の弱さを人のせいにするなんて良いご身分だねAクラスの生徒は」


その言葉は目の前に転がっている生徒だけではなくそのクラス全体に向けられた言葉。


「たかだかお前達が言う劣等であるDクラスの前衛の三人に負けるなんてさぞなけなしのプライドが傷ついたでしょうね」

「なぁっ!?」

「認めたくないでしょうが認めてくださいね、自分の弱さを」


透き通った青い瞳に睨まれる事に対し恐怖を、恐れを感じつつも知らず知らずにその瞳にその場にいる意識ある三名は虜になっていた。


「…クレア」

「何?」


ようやくここで反応一つ見せなかったアルスがクレアの名を呼ぶも、その声音はどこか拗ねているようだった。


「何拗ねてるのさ?」

「拗ねてない…」


明らかに拗ねている声音にクレアは少しため息をこぼしながらも苦笑を浮べ、「皆が待っている。先輩達に勝利報告するんだってさ」とアルスの腕を掴み歩き出す。アルスもまたその動作を受入れ歩き出す。

ふと、Aクラス三名へと視線を移せば今だその表情は呆けており、若干その頬が赤く染まっていた事に苛立ちを覚えた。






2019.09.16:本編修正・追加

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