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紡ぐ物語 -FUTURE-  作者: 稀世
01:出会いと別れ
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第1話 出会い



もしお前と出会えてなかったら僕はきっと

この世界に絶望していた



大切な人達を奪っていくこの世界を

恨み、恨み続けて

僕は後悔しかしない人生を送っていたはずだ




それがどんなに空しく、満たされない人生

きっと途中で僕は人生に幕を降ろしていただろうね



だから君に出会えて

本当に良かった



 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


ザァッと草原を吹き抜ける風を肺一杯に取りこんだ時に感じる鉄と人が焼けた匂いが肺を満たす。

不快に感じ再び深呼吸を浅く繰り返す。ようやくその不快感は薄れるものの完全にはなくならなかった。


「     」


遠くから聞こえてきた声に反応し体を声の方へと向けた時、タイミングよく背後の方から聞こえてきたドンッと空気を震わす音に体は無意識に震えながらも視線を先ほどの方向へと戻せば、音がしたであろう場所から煙が上がっていた。

爆発地点までの距離はかなりあるが爆発の衝撃のせいか焦げ臭い匂い一層強まり不快感より一層強まる。


「クレア」

「・・・ケイル」


先ほどから声をかけていた女性、ケイルはクレアの少し後方に立っており、腰まで伸ばされている見事な金髪は日の光を受け、キラキラと輝きながら風に遊ばれ、優しく細められている目元から覗く黄緑色の瞳はこの草原と似た優しくて柔らかい色をしていた。


その草原のような黄緑色がとても綺麗で、山を越えた場所にある町で時々見かける、黄緑色の宝石よりも綺麗で気に入っていた。


「早く家にかえりましょう」

「うん」


先ほどの爆発など起こってなどいないかのようにケイルは振る舞いクレアの手を繋ぎ家の方へと歩き出し、クレアもケイルの引かれる形で歩き出した。



ここ大陸フルスカルは様々な種族が争いながらも共に暮らしている大陸であった。


大陸は小さな国がいくつもあるものの大国三ヶ国を中心に動いていた。

まず一つ目の国は、秘術によって他の国よりも技術の発展が進行している人族の国、エンビディア国。

そして二つ目の国は、様々なマナが集まっているため地域ごとによって気候が変わっている魔族の国、デセオ国。

そして三つ目の国は、自然豊かで様々な恩恵をその大地に宿す獣族の国、パシオン国。


三ヶ国はとても危うい関係で、過去数回三ヵ国同士の戦争が開戦されており、どちらも引き分けが多くそのまま睨み合いが続いていた。


だけれども先月に王の代替わりが終了すると同時にエンビディア国がパシオン国に対し、宣戦布告と同時に睨み合いであった現状を破り、再び侵略を開始したのであった。これに対して、デセオ国は自国に被害がない為か傍観に徹していた。


そして現在の戦争の状況は、二ヵ国が接している国境付近で今だ、こう着状態が続いており、そのせいで、エンビディア国側の国境付近の村々に多大なる被害が生じていた。

とある村は数少ない働き手である男達を兵として戦場に送り出し、またある村は攻撃の流れ弾が着弾、死者や重傷者でさらに働き手がいなくなり、貧しい村はさらに貧しくなり、今日を生き残れるかどうかを日々不安と戦っていた。

そしてクレア達が暮らしている草原もまた国境の近くであり、草原の近場には村もあった。

その村はまだ被害は最小限であるが、いつ回りの村のように戦争の余波が襲ってくるか日々怯えていた。



「ねぇ、クレア」

「何?」


本日の昼食である野兎の干し肉の入ったスープを口に含みつつケイルへと視線を向ける。


「今日、私の(とと)様から手紙が来たの」

「うん」

「その手紙にね。近々、私達の家に来るようなの」


ケイルの言葉に腕を止める。

なにせ、生まれて5年、ケイルの家族とあった事が無いのであった。

ケイル曰く、ここより遠い大陸で暮らしている為、めったな事では会えないのだと悲しそうに言うた為に、その理由を、それ以上の事を聞いてはいけないのだと僕は理解した。


普通の子供だったら無神経ながらも理由を聞いていたのだろうけど、見た目は5歳児だけれども精神年齢は25歳であっる。

所謂いわゆる僕は、転生者。だけれども転生者は転生者だけれども僕はこの世界、この異世界とは違う場所、地球という場所で一回目の人生を送り、そして不幸な事故で一回目の人生を終えたのだけれども気が付けばこの世界で二回目の人生を送ることに。

だから普通の子供たちよりも早く言葉を覚え、2本足で立ち上がったり前世で持っていた知識を利用しながら違和感なくちょっと成長の早い子供として健康に成長している。


今は歴史書などの難しい本などを読むなどしケイルを驚かせる事が少しだけ楽しんでいるけれども本人には秘密である。


「それでね・・・クレアに聞きたくて・・・」


少し思いに更けていれば場の空気は少し緊張しているせいか

猫背であった背をただし、ケイルへと視線を向ける。


「そのもし、父様が一緒に暮らした言って言ったら許してくれるかしら?」

「へぇ!?」


ケイルの言葉にすとんきょんな言葉を漏らしてしまう。

その反応を悪い方に捕らえたのか、体を左右に揺らしながら


「わ、私の父様が来てくれたら今よりもっと品数だって増えたりするわ」


と、父様が来たらこういったメリットがあるのだと少し早口に言葉を漏らす。


「嫌、ケイルの父親だよ?僕の意見なんて聞かなくてもケイルが一緒に暮らしたいなら僕はそれで大丈夫だよ」

「え!!そ、そう‼うふふ、嬉しいわ」


ケイルの実年齢は知らないけれど今、目の前で見せている表情は明らか母親という顔というよりも、姉だと言ってしまえば通じてしまうのではという若い女性のような表情を浮かべており、その光景に苦笑を浮かべながら、止めていた食事を再開させる。


「あ、あ!!父様のお部屋はどうしましょう?」

「あー・・・一階の物置部屋に使ってる部屋は・・・?」

「そうね!!・・・でも二階の空き部屋もあるでしょ?クレアも男同士じゃないと話せないことあるんじゃないの?」


「大丈夫」というケイルだが、その表情は自身の部屋の横の部屋を使って欲しくてたまらないという表情をしている。

自分が「それもそうだね」と言ってしまえばケイルはその意見に賛同してくれるがその表情はきっと今にも泣きそうな子供のような表情をするのだろう。

そんな事を思いながら


「大丈夫だよ。同じ家にいるんだし聞きたいことがあったら聞きに行けばいいんだから」


と笑いながら答えればケイルは「じゃ、じゃぁ‼食事が終わったらお部屋の掃除をしましょう!!」といきよいよく食事を再開させる。


「ケイル・・・そんなに慌てて食べたら・・・」

「っっっっ!!」


言葉通り大きめにちぎったパンを咽に詰まらせ胸と咽の中央当たりを叩く姿に再び苦笑を浮かべてしまった。



「これで掃除は終りね」

「ふぅ・・・」


思ったよりも部屋の掃除をしてなかったり、中の整理などしてなかったせいなどでもうすでに窓から見える景色は橙色へと変わっていた。


「んー久々に体を動かしたら体中がつらいよぉ・・・」

「何歳の発言・・・」


「酷い!!これでも私若い方なんだよ!!」とケイルは迫力のない、可愛らしい怒りかたで言う。


「本当に何歳・・・」

「えーと・・・32歳だよ」

「うん。前にも聞いたよ・・・」


実年齢32歳よりも18から20歳の見た目をしているケイルにいつしか疑問を覚えていた。


「ねぇ・・・僕らって何の種族なの?」

「え?」


世界には様々な種族が存在しており、その中で一番多い種族が人族、二番目が獣族、魔族、精霊族と言った種族であった。

その中で本当に存在するのか分からない種族が存在しており、その種族はこの地球上、あらゆる生物よりも全てにおいて秀でている種族があった。

それが神族と幻獣族であった。二つとも神に近しき近しき種族であり、神からの加護を他の種族よりも多く与えられ、愛されている種族と現在に伝えられていた。


「そうね・・・翼のある種族よ」

「獣族?魔族?それとも精霊族?」


ケイルの言葉に翼がある種族を思い浮かぶ。


「ふっふっふぅ、秘密です。大丈夫いつか教えてあげますよ」


上から目線に少しイラついてしまい、それを隠すように「外行って来る」と草原へと足を向ける。

ケイルはそれに気が付いているのか薄っすらと微笑みながら「もう暗くなるから遠くまで行かないでね」と掃除で使用した道具を拾い上げながらクレアの背中を見送る。



「またはぐらかされた・・・」


家を出て少し離れた場所に寝っ転がる。

今まで何度もケイルに種族に関しても言いようにはぐらかされてしまういもうそろそろ諦めかけていた。


「でも、自分の事は知っておきたいしなぁ・・・」


上半身を起こし魔法で隠していた翼を出現させ翼を伸ばす。

普段から魔法で隠しているせいで少し窮屈感があり、こうして翼を広々と広げられると開放的に、体中にようやく血液が巡っているって感じられる。


「それにしても本当に何の種族だ・・・」


自分の翼は髪と同じように黒色。それは自分の母親であるケイルとは違う色であり瞳の色もまたケイルの黄緑色ではなく青色の瞳にどこか思う所はあった。


タメ息を1つ零しながらそのまま仰向けで寝っ転がる。

寝っ転がれば視界に広がるはバケツをひっくり返した黒色にその黒色の中を一生懸命に光る数多の星。

その星よりも一際大きく光、そして安心感をあたえる月にどこか懐かしく感じてしまう。


懐かしくて、懐かしくて、何故か愛おしく思ってしまう。


「何でこんな気分になるのかな・・・」


こんな事を思い始めたのはつい最近。月を眺めるのが好きな子だとケイルから聞いていたのだがその時はあまり自覚していなかったが、今ではその自覚がある。


「何でだろう・・・」


サァァアアァァと草原を吹き抜ける風に無意識に瞼を閉じる。

こうすれば、どこか遠くの状況を感じれるような気持ちになれる。


ふとあたりの気配を感じていた時にガサァッと草を踏む音が耳に聞こえてきたのであった。

すぐさまに翼を隠し音がした方に視線を向けながらできるかぎり気配を殺す。

国境方面へと草原を進めば、すぐに森が続く。

森を抜けた先に小さな村があった。村には数回しか行った事は無いけれど、どれも嫌な視線を向けられた記憶しかなかった。


草を分けて進む音に無意識に警戒してしまう。


「あ、ようやく出れたぁぁ!!」

「もぉ!!リュクについてきたせいでせっかくのお洋服が汚れちゃった!!」

「キ、キリヒちゃんは洋服が汚れても可愛いよ!」

「当たり前でしょう スハト!!」


姿を見したのは子供だった。



警戒していたせいもあって出てきたのが子供だった事に驚愕の表情を浮かべ、声をかけるべきか、そのままにしたほうがいいのか迷っていた。


「ん?」

「あ・・・」


三人の中で一番身長の高い・・・歳が上だろうリュクという少年が僕に気づき「なぁ」と声をかける。

突然の事驚きあたりを見渡してしまう。


「何周り見てんだ?」

「リュクが変な人に見えて怖がってるのよ」

「可愛そう・・・」

「なぁっ!!?お前等!!」


その後方にいたキリヒと呼ばれた少女とリュクより小さな少年のスハトの言葉にリュクは大声を出す。

それに対し「ほら、急に大声出したらあの子怖がっちゃうでしょ!!」リュクよりも明らかに年下であろうキリヒに叱られ、リュクは物言いたげな表情でムスッとしていた。


「ねぇ、貴方!!」

「・・・何?」


リュクだと駄目だと判断したキリヒは自分で話をしようと話しかける。


「ここってどこかしら?」

「国境の反対にある草原」


「多分君達の村は反対方向だよ」そう言えば三人は大きな声を出す。

キリヒは「何やってるのよリュクの馬鹿!!」スハトは目元に涙を溜めて「おうちに帰りたいよぉ!!」と泣き始め、年上であるリュクにいたって「ありゃ・・・」と頬をかいていた。


この光景を見て、こいつら迷子かと結論付ける。


「あらあら・・・これは一体・・・」

「ケイル」


いつまで帰ってこない自分を心配して迎えに来たのだろうケイルは、この場で起こっている状態に開いた口を手で隠して普段のように笑っているも、その瞳は明らかに揺らいでいるのが分かったのであった。






2018.09.25:1-1の本文を修正・追加

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