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紡ぐ物語 -FUTURE-  作者: 稀世
02:中立チェルシアン学園
28/47

7-2





「さぁ、クラス対抗戦に向けてまず最初に一年生は自分の属性を知ってもらおう!!」


久しぶりの教室内の授業はとても穏やかに感じていたが、現在、黒板の前に立つこのクラスの教師であるヴァールの発言によって教室内は静まり返った。


「わぁー、懐かしいな。僕らもやったよね」

「そですね。特に何も無くすぐに終わりましたけど」

「テトの属性で揉めただろう」


その静けさを壊したのは去年もこの時期ぐらいにこの授業をやっただろう二年生組だった。


「え、え、そうでしたっけ?」

「そうだろう。この中で一番慌てていたのはお前だったんだがな」

「あははは、あの時は本当に冷や冷やしたよ」

「え?え?何があったの!!」

「楽しそうな予感!!」


楽しそうな事にはいち早く敏感な双子が二年組の話題に入り込む。


「楽しいかは分からないけど、今から配られる細長い紙を素手で触ったら自分の属性が分かるんだけど、ほら皆知ってるとおり僕の属性って、無属性でね」



曰く、無属性であるテトが紙に触れてみたが紙こと言い属性判定紙は何一つ反応を見せなかった。

ここで、テトと最初に仲良くなったニーアが「先生!!どうして普通の紙をテトさんに渡したんです!!ふざけるのはお面と格好だけにして下さい!!」とその当時も今と変らないスタイルで教師であるヴァールに怒鳴った。

そしてニーアは「新しい紙をください!!」と普段見せない強気となりヴァールが持ってきた予備の属性判定紙を全て使用したが全てが全て、反応が無くニーアはお怒り、テトはある意味ショックを表情を浮かべていたなか、その空気を壊したのがまだ一匹狼ならでは、一匹狐のアルマであった。


「無属性は何も反応しない」


その言葉によって先ほどまでの嵐のような時間は終わりを告げ静かに、ただただ恥ずかしさを与える。



「まぁ、恥ずかしさのあまりに逃げ出したニーアが、初めて同学年のBクラスの男子生徒に追いかけられてたな」

「あぅ、思い出しました、やめてくださいです」


テトとアルマの思い出話を聞かされようやく当時を思い出したニーアが赤面させ次第に机の上に沈んでいった。


「まぁ、そう言うことがあったから先生はちゃんとやる前に説明をします!!」

「してなかったんですね」

「最低だ」


話を切り上げるように発せられたヴァールに一年側から冷ややかな視線を向けられる。

その主な視線が双子にレレス、そして僕だ。アルスに至っては思い出話から興味がなかったのかずっと窓の外を眺めていた。


この教室は教育棟の三号館の一階。

三号館の窓側の席は森側の景色が視界に映る。廊下に出れば廊下側の窓の向こうは二号館の廊下であるこの二棟は向かい合って噴水の広場に向かい合いその隣、北側に一号館が建てられていた。

その三棟までは歩いて距離できるもあまりそれぞれの棟に用がない限り立ち入ったりはしなかった。

なにせ一号館は一年から三年のSクラスとAクラスの生徒とそこの関わる教師、二号館はBクラスとCクラスであり、三号館はDクラスのみであり、また棟もそれぞれ違い、一号館は五階建てで、それなりの広さを誇っており一階には食堂がありそこは他のクラスも使用する為に一階は常に解放されている。

二号館は三階建てであり、広さは一号館よりも広くないが教育棟の中では二番目の広さである。

そして三号館は他の校舎よりも古く、二つが鉄筋コンクリート造のような材質に対しここは木造建てであり階も二階までしかない。

Dクラスが使用している棟はいわゆる旧校舎、旧棟である。

この校舎はこのチェルシアン魔法学園が出来た当初に建てられており、他はどんどんと新築、建て直しするが三号館のみだけは昔を残したいと理事長の意向によって、そのまま残していた。

もう古く床板もギシギシと鳴る為にほとんど使用されていなかった校舎を去年新しく作ったクラス、Dクラスへと宛がったのであった。

だからといって、Dクラスの皆がその校舎に対し不満を持っているかといわれれば否であった。

一クラスしかいない為に校舎内を好きに使え、そこそこひんやりとした空気は今から夏に対しては丁度良く感じらた。

なによりも、ここの棟は昔使用されていた教材や図書館に置ききれなくなった本や古い本が置かれている為にそれなりに楽しんでいた。



「と、とりあえず!!授業再開するぞ!!とりあえず一年は今からその属性判定紙を配るから絶対に俺が良いというまで触れるなよ」


紙を各一年の机に置きながら配るヴァールの手には直に触れないように普段はしない白い手袋がされていた。


「よし、んじゃ説明するぞ。この属性判定紙に触れ、少しだけ魔力を流せば、お前達の属性が一発で判定される」


「試しにニーアやってみろ」そう言って、廊下側の一番前に座っているニーアに先ほど配った紙を渡す。

ニーアも去年やった為にやり方はもうすでに理解している為に「ではやります」という掛け声と共に紙に触れればその紙は水色に変化し、尚且つ紙は湿気たかのように濃いい青色へと変色した。


「私の属性は水なので紙が水色に変って、紙が濡れたように湿るんです」

「ちなみに無属性は何も変らないから無属性がいるか分からないけど慌てないでね」


付け加えるようにテトも話に入る。


「そう、水属性は青で濡れる。火属性は赤にそして紙が燃え、風属性は黄緑になり紙を真っ二つに、地属性は茶色に変化し紙に皺が入る。光属性は黄色になるだけ、闇属性は黒になり紙が端から消える、以上だ」


説明を受け、今自信の目の前にある紙がそんな高性能なのだと不思議がる。


「とりあえず前のテーゼ、グーテの順に行くから俺が行くまで触れるなよ」


その注意を聞き早速、ヴァールは動き出す。


「ねぇ、アルス」

「どうした?」


後ろにいるアルスへと視線を向け話しかければ、机の中央に置かれている紙に興味しんしんと凝視していたアルスを視線にうつり、可愛いなと心で思いながら、


「副属性の場合この紙ってどうなるんだろうね?」

「半々で出たりするんじゃないのか?」


「長細いし」と長方形のリトマス紙のよりも少し大きな属性判定紙を見る。

そすれば前の方で「うわ、本当に紙が黄色になったていうか端が少し消えてる!!」と言う声にそう出るのかと思った。


「グーテやっぱり光属性が強いんだね」

「少しは闇があるようだ」

「んじゃぁ、次はテーちゃん行ってみようか」


次々と紙へ触れ、テーゼは属性判定紙の殆どが消滅、握っていた部分が黄色でありテーゼの属性は闇属性で副属性に光であった。

レレスの属性判定紙は黄緑色になり紙が半分になった事でレレスの属性は風属性のみ。


「さて、ここから俺は不安しかない」

「何故?」


目の前に立たれたヴァールは僕にしか聞こえない声で呟くので自然と首を傾げてしまった。


「とりあえずクーちゃん触って」

「何が不安って、あ…」


属性判定紙に触れた瞬間、紙は有無を言わずに消えた。


それを見ていたヴァール、前の席であるグーテが唖然と固まり見えてない者は反応の無い事に対し疑問に首をかしげていた。


「紙が…」

「あ、まぁ、この程度ならまぁ、大丈夫だ。うん、大丈夫…」


水属性があるから少しは残ると思ってたけど残らなかったけど、属性判定紙があった場所が少し湿っていた為に消滅前に属性判定紙が湿っていたのが分かった。


「ねぇねぇ、人族なのに闇属性持ってるんだ!!」

「え、あ、一応?」


ようやく我に帰ったグーテはずいっと顔を近づけ質問してきた。

その押しの強さに思わず顔を背けそうにもなりつつも頷いた。

グーテの発言に僕が闇属性を持っている事を知らされクラス内もざわめく。


「え、え、クレアって魔族のハーフだったの?」

「まぁ、ハーフだけど、闇の方はまだ操れきれていないから普段は水属性しか使ってないんだよね」

「じゃぁ、じゃぁ、私が教えてあげるよ!!私も、闇属性だし!!」


闇と光はこの大陸で持っているのは魔族と精霊族のみ。

一応は幻獣族もこの二つを持っているが、数が少ない為にあまり人前に出てこないために多くの者は認知していない。


その為、目の前にいる双子は見た目は魔族でありながらその属性を二つ持っているということは魔族と精霊族のハーフであり尚且つ希少である闇と光を両方持っていた。


このご時世、他種族同士の結婚はあまりよくは思われず、その為その他種族同士で出来た子も両者の種族から疎まれてしまう。

それでかグーテもテーゼは僕がハーフだとわかってからかものすごくしゃべってくる。


「ほら貴方達、まだ授業中よ。さっさと席に戻りなさい」


困り果てた僕に救いの手を差し出してくれたのは、隣の席のレレスであった。

レレスの言葉に何かしらの言葉を漏らしながら席に戻る双子。


「助かった…」

「助けたつもりはないわ。でも、そうね、助けられたと思うなら今日食堂に来てもらおうかしら」

「食堂?」

「えぇ、あの双子とニーア先輩達に誘われてね。貴方が来るのならあっちも来るだろうし、皆巻き沿いにしてあげるわ」


賑やかな場所が苦手なために寮母に頼み弁当を二人分作って貰って、この棟の空き教室でアルスと共に食事を取っていた。

そのためあまり食堂に行ったことはないが、食堂のメニューを制覇するぞと言うニーアと双子に巻き込まれているテトやアルマ、レレスの苦労は食堂に帰ってきたときの疲労状況で把握していた為にとてつもなく嫌な予感しかしない。


「ぎゃぁっ!?」

「あ」


後ろから聞こえてきた悲鳴に話をしていた僕らはすぐさま視線を声のした方に向ける。

そうすれば今日のお面である白い動物、狐のようなお面の鼻が黒くなっているのを右手で抑えているも唐突に起こった事に驚いているのか固まっておりヴェールに、尚且つその原因であるアルスは紙の殆どが燃えてなくなっているが手に持っている部分、少しだけ焼け残った部分に黄色と白の部分が残っていた。


「どういう状況だよ…」


そういう言葉をつぶやいてしまった僕は悪くないと思う。





「これで属性の判別は終わりで、次の授業へ進むぞ」


先ほどのアルスの属性判別で鼻先を黒く染めたお面ではなくどこから出したのか新しいお面へといつの間にか付け替えてから、授業を再開するもその声音は明らかに不満そうであった。


「…怒ってるな」

「俺何も悪くない…」


ボソッと呟い僕の言葉に先ほどの属性判断時で紙を過激に燃やしそのせいでヴァールの付けていたお面が損傷、黒こげとなりそれによってアルスの属性判断は中途半端に終わり尚且つ、怒りの矛先はアルスへと向けられアルスの頭、頂点へと拳骨が一つ落とされた。

その衝撃は近くにいた僕やレレスは机へと激突するアルスを見、それが加減はされているだろうがそれでもそれなりの威力があるったように見え。

その光景を遠目から見ていた者達も衝撃音によって合唱するのであった。


そして現在も状態を伏せているが通常に僕と会話をしていた。


「…大丈夫なのか?」

「何が?」

「殴られた場所」


チラリと後ろに視線を向ければ眉間に皺がよっているがその表情に痛み一つ無かった。

何よりも殴られてしばらくは沈黙していたがうめき声一つ上げていない事に少し疑問に思ってしまった。


「…あぁ、大丈夫。少しクラクラするだけで普通に動ける」

「本当に大丈夫なのか…」


アルスの自己申告に疑問を抱えつつも視線を前へと移す。


現在の授業は来月、文月(7月)に行われるクラス対抗戦に向けての説明であった。


「とりあえず、この対抗戦はトーナメント式で1週間かけて行われる。勝利条件は簡単、リーダーの首を取るか、相手を降伏させるかだ」


指を二本立てながらヴァールは言葉を続ける。



クラス対抗戦のルールは大まかに魔法あり、自分の武器の使用も許可。ただし、相手に致命傷を負わせないこと。

クラス対抗戦である為に学年後とは別々のグラウンドで戦い勝敗を決める。



「ということは」

「テト先輩達と私達は別々?」

「そうだねぇ、去年も一応は三人で出場してるからね」


「もしかしたら一年の数名をいれるかもしれないから」という言葉に、今年入った一年の殆どが好戦的であるためにその表情、その瞳が爛々と輝く。


「で、でも、危なくなったらすぐに棄権するからね」

「えー!?」


横槍にすぐさま双子は不満の声を上げる。


「だって、二年生、特にSクラスは問題…天才の生徒の集まりなんだから…皆を危険になんか出来ないよ…」


テトのその言葉に


「おーいテト、これも一応は成績に入るのを知ってんだろう?今からそんな事言っていると成績上げないぞ」

「え、えぇ!?」


忠告に顔を青ざめながら「だって」や「痛いの嫌だし」という呟きに後ろの席に座っているアルマがため息をつく。


「とりあえず、ポジション決めんぞ」


テトの呟きに耳を貸さず、ヴァールは次へと話を進めていく。


「とりあえず二年も一緒に手上げてもらうぞ。まず最初は前衛、手を上げろ」


手を上げたのは二年ではアルマ、一年ではグーテとテーゼ、アルス。


「ん、お前等ね。んじゃぁ、残りは後衛だな」


先ほどの前衛で手を上げなかったのは二年生はテト、ニーア。一年生はレレス、僕である。

ヴェールは紙にメモを取りながら、再び質問を繰り返す。


「次は自分の使用武器を言ってもらう。二年のニーアから」

「うぇ!?あ、はいです!!私は杖で防御魔法である水魔法が得意です!!なので、防御はまかせてくださいです!!」


予期せぬ質問に慌てながらも自分の武器、得意魔法を発表するニーアにヴァールは「サポート系も覚えれば後衛とすれば良なんだがな」とコメントを零しながら、次へと移る。


「次はテト」

「は、はい!!ぼ、僕はその、知ってる通り魔道書で…召喚魔法です…まだ、単体での召喚しかできないです…」


だんだんとしょぼくれ出すテトに「お前は少しは自信を持て」と呆れれながらもアルマへと進む。


「俺は両剣…」

「それだけか?とりあえず戦闘中、こいつチームワークとかしないから気をつけろよ」


足りない言葉に付け加え、「次は一年に行くぞ。最初はテーゼから」と二年から一年へと列を変える。


「私は双剣の片方を使用するよ。普段は一本で使ってるけどグーテがサポートに回るときだけグーテの持ってる一本と一緒に使用するよ」

「ほぉ、じゃぁ、一応は片手剣って覚えとけばいいんだな」

「うん」


元気よく頷くテーゼに「そうか、そうか」と相打ちを打ちながらレレスへと進む。


「私の武器は特にありません。しいていえば足技が主になりますわ」

「あー、そうだね。君のその鋭い爪も武器の一つになるね」


レレスの足は鉤爪、鳥の足の為にその足自体がもうすでに凶器となる。


「んじゃぁ、グーちゃんは…」

「僕はテーゼと一緒だよ。だけど基本は前衛に入るけど時々、後衛にいるときがあるよ」

「了解、前衛よりの後衛ね。次はクーちゃん」

「僕は弓で、とりあえず現在は2、3本までなら自力で的に当てられるようになってる」

「自力…」

「自力で」


疑わしいような瞳で見つめてくるヴァールに僕も負けじと睨む。


「自力以外で何があるの」

「そうそう」


気になったら尋ねよう精神の双子が口を揃えて尋ねてきたが、「ちょっとね」そう返し視線を再び前へと向ける。


「一応は両剣。」

「一応って他にもあるのかな?」

「…敵の持ってた剣とか?」

「…相手から分捕る気だね」


アルスの答えにヴァールのみではなくその周りの物まで苦笑を浮かべざる得なかった。


「まぁ、とりあえず対抗戦までにはチームを分けるからそのつもりでいろよ」


タイミングよく鳴り出すチャイムによって午前中の授業が終了を告げるのであった。

音が鳴り止めばヴァールもまた「んじゃぁ、午前の授業は終了」という大雑把な挨拶を行いそそくさと教室から退出すれば、


「んじゃぁ、学食食べに行くですよぉ!!」

「わぁーい」

「今日は何を食べようかな」


ガァッっと大きな音を立てながら息よいよく立ち上がるニーアと双子。

それはいつも教室で繰り広げられる光景であった。


「ニーア先輩、今日はそこの二人も食堂に行くので」

「えぇ!?」


驚愕に目を見開くもすぐに嬉々とした表情へと変り「わぁぁぁぁ」と両腕を大きく振りながら喜びを表現するニーアに対し、「え?え?そうなのクレア。俺聞いてない」と困惑に表情を崩すアルスに僕は申し訳なくおもった。

二年組は楽しそうな表情をさせるテトに、その反対かのようにアルマは今後起こるだろう周りの反応に頭を痛ませていた。







2019.09.16:本編修正・追加

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