6-3
「待てぇぇぇぇ」
「…」
「ちょぉっ!?」
「怖い、怖い、アッ君無言で来ないで、グーテも笑顔で来ないで!!」
ようやく動き出したアルスとグーテはやはり目的の人を捕まえる為に動き出すも、その表情、その行動のせいか、追われている者は悲鳴を上げつつ鬼から逃げ出していた。
現状、アルマはノアに、レーゲンはレレスに、クレアとテーゼがアルスとグーテに追いかけられており、ニーアは檻の中でマーレとヴァールと共に観戦、テトは息を切らしながら近くを通った者を追っており、現状はレレスと共にレーゲンを追っていたが、体力の限界で蹲っていた。
「クーちゃんもっと走って!!」
「嫌々!?僕もこれで必死なんだけど!?というかそもそもテーゼが自分で走れば良いじゃないか!?」
「すぐ捕まっちゃうじゃない!!」
テーゼを担ぎながら走っているせいもあり、体力も限界でクレアの表情はもうすでに青色に近かった。
普段なら止めている足も、後ろにいる無表情のアルスと満面な笑顔であるグーテのせいで足を止めることができずにいた。
「テーゼ!!何か時間稼げるような魔法使えないの!?」
「んー、私の属性って以外にも以外の闇属性で破壊を主な魔法しか知らないから相手の魔法を破壊するしか出来ないのよね」
「つまり私は弱ぁーいな女の子です」という発言に一瞬だけだが、テーゼを二人に向けて投げて自分だけ逃げる時間を稼いでしまおうかと脳裏を過るも、「その時は道連れだよぉ」と言う声に我に返る。
「…なんでそんなこと言うんだよ」
「なんとなくよ」
「白熱だねぇ」
「グラウンドが心配になってきた」
鬼ごっこを観戦しているヴァールとマーレは格生徒が発動させている魔法による(特に攻撃魔法)被害で出来た穴や地割れに苦笑を浮かべる。
「それは大丈夫だよ。明日もこのグラウンドで授業だからその時に修復させるから」
抜かりなしと笑い声を上げるヴァールに、マーレは「そうですか」と返し後方に設置している檻に視線を向ける。
現在檻にいるのは数分前にノアによって捕まったニーアのみだが、一人で寂しくやっているのかと思っていたが、
「テト、そこです!!キャァッ、あぁ、アルマ危ない!!うぅ、二人とも大丈夫でしょうか」
同じ頃に入学し、既に共に一年を過ごした仲の二人を応援していた。
片は味方だが、もう片は敵側で応援するのはいかんせんと思いつつも、他種族同士でこうも仲が良ければどうでもいいかと思ってしまう。
しかもこの場に入るほとんどの種族が違うと言うのに、このグラウンドで繰り広げている光景は歳相応の子供達が共にはしゃいでいるように見える。
このDクラスは落ち零れ、校長の嫌われクラスのほかにも違う呼び名もあった。
摩訶不思議なクラス
それがこの都市内、町民達が口を揃えて呼んでいた。
その呼び名もこの光景を見れば誰だって納得するだろう。昔から続く種族間の因縁や復讐などこのクラスにはあまり感じさせない。
どうしてこの様な人柄を揃えられたか不思議であるが、長年、一時は空白部分があったとしても子供の頃から様々な事件の中心にいたこの友人ならどうしてか納得せざる得なかった。
「はい、終わり。終了!!皆集まって」
ボロボロのグラウンドに散っていた生徒達や参加者がヴァールの終了の合図に様々な意味が篭った息が吐かれる。
「うんうん、皆お疲れ様!!」
陽気な声音で言われる言葉は生徒達の疲労をドッと感じさせる。
「今回の鬼ごっこはAの勝利だ、と言いたいが結局、一回戦と三回戦逃げ切ったのってレーゲン様だけだからこの勝負、Bの勝利とするよ」
最初の勝利宣言でAチームのメンバーはホッと胸を撫で下ろすようなため息をこぼしBチームは親の敵でも目の前にしているような視線をヴァールへ向けていたが、最後まで話を聞き終わったそれぞれのチームの反応は逆転した。
だが、ヴァールの判定もわからなくはなかった。
Aチームは一回戦と三回戦はレーゲンを残し全員が捕まっているにもかかわらず、Bチームはノアとアルスが逃げ切っている為に、クラス内での勝負はBチームの勝利となる。
「というわけで、Aチームの罰ゲームは女装してもらうよ!!」
「!?」
「っっっっ!?」
「え?!私とニーア先輩は!?」
罰ゲームの内容に様々な反応を示し、チーム内の女性であるニーアとテーゼには「二人には変った着ぐるみをきてもらうよ」とその変った着ぐるみのほうがマシなのではとアルマとクレアは思った、
「私はどうしたら?」
「レーゲン様がよろしかったらやります?様々なサイズをご用意していますよ」
「うーん、遠慮しておくよ」
含みある、絶対に可笑しな衣装がありそうな言い方によってレーゲンはその罰ゲームを断念、というよりも二人はそろそろ部屋に戻らなければいけない時間となっていたために、二人は早々と別れを告げ用意された部屋へと戻っていった。
「わぁ、今日一日で第一王子の印象がかわっちゃった」
「護衛のノアって人のもかわっちゃった」
去り行く二人の後姿を見ながら双子はあたかも打ち合わせしていたのではと思えるぐらいぴったりの発言にさすがは双子のなせるわざと思いつつも、
「どんな印象だったの?」
「ん、第一王子は魔王様の言いなりのお人形さんでノア様は残虐非道で主である魔王様の命令にはどんな命令でも従うっていう」
「でも、今日の見てその噂も間違いだなぁって思っちゃったよ」
「つまんない」と双子は答える。
「まぁ、おえらい様が何を考えているかなんて俺達が分かるはずないだろう。俺達もそろそろ戻ろうか」
「そうだね、寮の方も準備が終わっている頃だろうしね」
話を切る様にヴァールとマーレは話に入る。そして、二人の言葉に思い出すように
「そうそう今日はね、新入生の為に歓迎会の準備をしてたんだよ」
「そうです!!皆が楽しめるようにいろいろ準備しましたのです!!」
「だが、罰ゲームがあるなんて知らなかったがな」
アルマの一言により、楽しそうな雰囲気が気まずい雰囲気に変りつつも「ま、まぁ、皆で寮に帰ろうか」とテトの言葉によって寮へと足を進めさせる。
+*+*+*+*+*
「もう駄目!!」
自室へと戻った僕は二段ベッドの下の方へとダイブし、ベッドに寝転がる。
その後に続くようにアルスも部屋へと入りながら苦笑を浮かべ「お疲れさま」と言葉をかけながらベッドのふちへと腰を落とす。
歓迎会も一応は締めくくられているが、食堂ではまだ僕、アルス、レレス以外のメンバーが残っていた。
大人組みはもうすでに遅くなる前に退散し、後の事は寮母に頼まれている為に寮母もまた食堂にいた。
「ねぇ、アルス」
「何?」
ゴロリと体を動かせば、普段縛っている髪は女装の為に外している為にスカートの裾と共にシーツの上に散らばる。
今の僕の姿は、赤をベースにし、所々を黒の糸や布で彩られているドレスであった。
ホルターネックである為に、背中は普段と同じように露出しており、加護の印もうまい具合に隠されており、ドレスといってもロングではなくショートの為にベッドに投げ出されている黒と赤のレースから太股まで覗かせてしまっていた。
アルマもまた普段、バンダナで前髪を上げているも今回はそれがなく、外跳ねの髪もまた櫛でまっすぐされ、ニーアの所有する髪飾りで前髪を後ろでまとめられていた。
今回の女装でアルマの髪がよそうより長い事に初めて気づかされた。
僕が、ショートに対しアルマはロングで右サイドのほうに切れ目があったせいで、動くたびに鍛えられた右足が見え隠れするのは目の毒であった。
そんなアルマのドレスは髪色である橙色と合うようにか薄黄色をベースに橙色の布や糸で彩られていた。
ちなみにだが、僕らが食堂に入った時、食堂にいた何名かは笑いを耐えたり、呆けていたりとしていたが一番ひどかったのは、
「ちょぉ、アルマ先ぱぁ、やば、ガタイが良すぎて、、ひぃ」
「さすが、童顔一家!!女装もマーレ同様お似合い、グフッ」
笑いを堪える気も無く机をバンバン叩くグーテ、余計な事を口にしマーレに横っ腹を殴られ机に伏すヴァールだった。
テーゼやニーアもまた、着ぐるみを着て登場したが、それは着ぐるみではなく前世で言うコスプレではと言いたくなるような”着ぐるみ”であった。
猫耳、肉救付きのネコの手、鈴の首輪の姿で登場したさい、食堂の空気は一瞬固まったが、さすがはシスコンであるグーテの「あぁぁぁああぁぁ可愛いよテーゼぇぇぇ」との絶叫に場も動き出し、よく見れば案外可愛いと言う事によりテーゼはレレスにからかわれ、ニーアはテトに褒められていたのを思い出す。
「この姿にどう思う?」
「女装に?」
「うん、おかしいよね」
上半身を起こしつつ、傍に座っているアルスに聞いてみる。
アルスは少し考え、何を思ったのか太股に手を這わせ
「こんなに足出すのは俺の前だけにして」
ゆっくりとだが、軽く爪を立てて撫でる為に、変な感覚に襲われ、慌てながら「短パンはいてるけど?」と苦笑を漏らせば「あれは、ちゃんと隠れててる」と答えられ、僕は苦笑をこぼした。
「っっっ⁈」
「これは…」
ふと感じた気配に僕らは様々な反応を示した。
アルスは気配が感じた方に視線を向け、恥ずかしながら僕は、気配が感じたと同時に、引き釣り下ろされる感覚にあい、上半身は見事にベッドの上に沈んでいた。
唐突の僕の反応にアルスは驚愕するも、すぐに外へと警戒を示す。
「クレア、大丈夫?」
「ちょっと待って」
支えられ上半身を起こしてもらう。
先ほどの引き釣られた感覚が僕が把握していた以上に酷く、唐突なその感覚は無意識ながら僕に恐怖を感じていたせいか、体が無意識に震えていたのをアルスに支えてもらったときに気が付いた。
それを隠すように、アルスの腕を強く掴む。
「落ち着いた?」
「…うん、ごめん」
一分か二分、ようやく震えも収まり始めたが、やはり何かにすがりたく、今だアルスの腕を話す気はなかった。
「これって、アイツだね」
「みたい…」
昼間、会った問いに微かに感じた気配に似た先程の気配に脳裏に浮かんだ犯人はたった一人。
「たぶん僕らを呼んでるきがする」
「呼べる?」
「分からない。でも、そんな気がしただけ。昼のとは違う…」
「行く?」
アルスの言葉にしばし考える。
行かないと思うけれども本心からしたら行きたくない。怖いから行きたくない。今の自分の力量では相手の力に到底及ばない。
そうすれば何かしらの危機、再び大切な人を奪われるのではと言う恐怖で支配されてしまう。
けれども、
「大丈夫、俺はクレアの前から消えたりしないから」
掴んでいた手の上にそっと重ねられた手の平から伝わる暖かな温もりに下げていた視線を上げ、アルスへと向ければ、その表情には笑みが浮んでいた。
「クレアは俺が守るから安心して一緒に立って欲しい」
「どこに?」
「背中?」
「隣じゃないのね」
クスクス笑いながら指摘すれば「んー、今のクレアの格好からしたら後ろで守りたい」という言葉に、自分が今だ女装している事を思い出し「なら、守って下さるかしら騎士様?」と冗談に、笑いながら言えば、アルスは了承するように唇へとキスを落とした。
+*+*+*+*+*
Dクラスの寮からこのチェルシアン魔法学園の端まで歩いて10分であるも、木々が多い茂る為に足元は暗く、夜中にうろつく者はあまりいない。
木々を抜け、湖までたどり着けは木々の中とうって変わり明るく、月の光が湖の中に沈んでしまった遺跡をの一部を照らしていた。
普段ならその光景を眺めていたいが、僕らは目的の人物を探し警戒を続ける。
遠くから聞こえてきた音にアルスの視線が向けられ、僕もそちらへ視線を向ける。
「そっちから呼んだと言うのに遅れてのご登場ですか?」
「それは大変申し訳ないね」
北の方角から姿を現すはデセオ国第一王子の護衛役のノア。
昼のような笑みを浮かべているが覗かせる紫の瞳には影がかかっているせいか不気味にうつった。
「それにしても、あの教師が言っていた罰ゲームは女装でしたか」
「おあいにくさまに、着替える前に呼ばれてこのままですよ」
「それはタイミングが良く」と皮肉交じりに言われた言葉に
「で、こんな世間話をする為に僕らを呼んだんですか?」
「んー、せっかちな子だね」
「でも、俺も前置きとか得意じゃないから助かるよ」といい終わると同時にノアから発せられる威圧に僕は無意識に一歩、後ろに下がってしまった。
「ねぇ、君達俺と一緒にこっちの国へつかないか?」
そう問いかけるも、実質は拒否権など無いのだろうと声音から何となく察する。
だが、
「何、言ってくれてるの?僕等は今日ここに入学したばかりの学生を勧誘するなんてそんなに魔国の兵は腰抜けなの?」
「というか、俺達が頷くわけないじゃん?」
僕らの態度に何を思ったのか口角を上げ、先程から感じる威圧がさらに強まった。
その威圧に何か感覚が狂わされているのか、隣にいるアルスが低く唸りはじめる。僕もまた、アルスが傍にいなければ、腕を掴んでいなければ腰を抜かしていただろう。
臆病な声を上げ、逃げ出していたかもしれない。嫌、屈していたかもしれない。
だがアルスが傍にいる為にそれは許されない。震える膝が崩れないように必死に耐え続ければ、アルスからの精神感応にて変化の魔法が解けていることを知らされるもそれを取り繕う暇もなかった。
そんな僕らの様子に、
「ん、この様子から見ればそっちの女装の子が俺と近しい神の加護なのかな?」
「それにしても四枚羽なのに弱いね」その言葉に怒りを覚えるも、それが事実、現状この場面を打破できない。
月が出ているはずなのに目の前の敵を倒せるイメージができない。
「うるさいな、今は弱くてもこの学園を卒業するまでにお前を越してやるよ」
「強気だねっと」
アルスが魔石に収めていた剣を取り出し、ノアへと刃先を迷うことなく突きつける。
その剣は、誕生日の日にマーレから送られた物であり羽先は黒く金で何かしらの文字が書かれておりその意味は分からない。柄は金をベースに赤の細工が施された片刃の長剣であった。
だが、突然の攻撃のはずな筈なのに、ノアはわかりきっていると簡単によけきる。
「刃を向けるってことは拒否だと受け取っていいのかな?」
「そうだ」
アルスの解答を聞くと同時に、目の前にいた筈の姿は視界から消え、次にその姿を視界に捕らえた時には隣にいた筈のアルスが湖へと蹴り飛ばされた後だった。
バシャァッという派手な水しぶきを立て湖へと落下したアルスへと意識が向いていた隙に次の攻撃が来ていることに気が付かづ、防御の一つまともに出来ぬまま、あっけなく後方へと蹴り飛ばされた。
蹴られた腹を押さえながらも体制を整えようと動く前に、あっけなく真上を取られ、身動きがとれぬように、上にまたがられ、その上に頭を押さえつけられ身動き一つできない状態になってしまった
「弱者が強者に盾つけばどうなるか、その末路を君達は知らないからそうやって強気なのかな?」
「ぐっ、ぁっっ」
強まる力、必死に抵抗するも力差は向こうが上でありその抵抗も空しく全くと効果などなかっだ。
が、すぐに上からの圧力は無くなり代わりに首のあたりが熱く痛みだす。
それによって何故、敵が離れたかの理由が分かった。
だが、敵であるノアは現状の光景についていけず距離をとっているがその表情は先程とは打って変わってキョトンとさせていた。
「え、は、何その鎖?というか君結構、飛ばしたはずなんだけど・・・」
「それが、どう、した」
アルスもまた肩で息をさせながら、警戒を怠らない。
契約での瞬間移動が無ければ確実に危険な状況であった事が一目で理解できた。
「クレア、動ける?」
「あぁ、アルスは?」
「大丈夫」
視線をノアから外すことなく立ち上がる。
契約の発動によってだいぶ、ノアからの圧力が薄らぎ普段までとはいえないも冷静さを取り戻す。
「前衛はアルスに任せるから後衛は任せて」
「分かった」
ピアスに付いている魔石から白い弓を取り出す。
マーレから渡された白い弓。武器名も無いから白い弓と呼ばれているケイルが使っていた武器。
それが今の僕の武器である。
「あの鎖が現れてから動きが変った。あれはいったい…」
目の前で先ほど起きた現象に警戒する。
だが、二人と一人の戦いはすぐに終わりを向けた。
その終わりを告げたのは、
「今日はここまでのようだね」
「なぁっ!?」
この戦いを仕掛けてきたノアであった。
言葉通りに威圧も殺気も相手側から微塵も感じられなくなった。
唐突な言いように「ふざけるな」と口にしようとした時、二人の背後から出現した手の平に驚愕し、開いた口から言葉は出ることはなかった。
「そうそう、あまり俺の生徒をいじめないでくれないかな?」
「ならいじめられないように強くするんだね」
手のひらの主はヴァールであった。
「先生、なんでここに?それよりいつの間に…」
「あれだけの威圧だ、気づかないわけ無いでしょう?」
僕の質問にニシシと笑いながら当然のように言い放つ。
「それに早くここから移動したほうが良い」という言葉に、この事態に気がついたものが他にもいるのだと気づき鎖と翼、弓を消す。
「では、俺はこれにて。お二方も俺との力量の差もハッキリしただろうし次ぎあう時にまで俺を少しぐらい楽しませてくださいね」
去り際に言われた言葉に言い返す言葉も無くその後姿を睨みつける。
「さぁ、俺達もここから離れようか」
「あ、はい」
背後にいたヴァールの言葉にハッと思い出し、僕等もまたその場を去る。
+*+*+*+*+*
「皆さん、お揃いで夜の散歩ですか?」
あの場所から少し離れた場所に招かざる人物がいた。
「それはこちらの質問だ。この時間帯に何をしていた」
「聞かなくても分かるけれども、誰と戦っていた?」
現れたパシオン国第一王子の護衛役、アインマーシュ・ホフヌングともう一人、エンビディア国の第一王女の護衛役のクリム・アクストであった。
「何も?ちょっと遊んでいただけだよ」
「遊びであれだけの殺気を出すのか?」
「ほら、男は勝負事になると本気出しちゃうからね、分かるでしょうアインマーシュ君」
「貴様と一緒にするな」
否定の言葉にノアは「えー」と言葉を零すも、先ほどの内容を口にする気は一切無いようでアインマーシュは一つため息をこぼす。
「まぁ、貴様が我が王に何かしたわけでも我が国に攻撃をするという話も無い為に深くは聞かないが…あまり好き勝手にするな」
「善処はするけど、守るとは思わないでね」
茶化すように言う言葉にアインマーシュは先ほどの威圧に対しての追求をすういはなくなったようだったが、クリムは何かを探っていたが、すぐに踵を返し、自身の主の下に戻っていく。
「お前も早く部屋に戻れ、これ以上お前が外をうろつかれたらこちらがうかつに行動できない」
「それは俺の力が素晴らしいと認めているのかな?」
ノアの言葉に声を荒げるように反論するアインマーシュの反応を楽しみつつ自身もまた主の下に戻る。
+*+*+*+*+*
「あちゃぁ、こんなに服を汚しちゃって」
「…すいません」
先ほどの戦闘によって所々破れたり汚れた衣装を見ながらも、僕らにたいした怪我が無い事を確認し終えたヴァールがタメ息を付く。
「で、何でアイツが二人に接触した?」
「勧誘?」
「はぁっ!?戦闘経験のないお前達をか!!」
「うっ…」
無意識なのだろうがヴァールの言葉が突き刺さり、変なうめき声を上げる。
「…だが、教育次第ではお前達もそれなりの戦力何なる」
「それを狙ってか」などとぶつぶつと独り言を呟やき、そして何か結論付いたのか、小言は止み、僕らの方に視線を向ける向ける。
今日も相変わらず奇妙なお面だなと思いつつヴァールの言葉を待つ。
「とりあえず、この三年間、嫌、一年間で魔力の扱いを覚えてもらう」
「扱い?それって詠唱を覚えたり?」
「嫌、精神面と体力面を鍛える」
「まぁ、クレアは特に体力面を鍛えようか」その一言にゾッと背筋に悪寒が走る。
「とりあえず、服は仕方が無いから、もうそのままクレアの好きなようにしてくれ」
「へぇあぁっ?!」
「俺の家族が昔着ていたものだから安心しろ」
何を安心して言いのか分からないが、とりあえず捨てるのもあれだし、クローゼットの肥やしにでもしようと思い浮かべる。
「とりあえず、二人は戻って寝ろ。俺が明日からビシバシ強くする」
「だが、俺は加護については知らないからそっちは自分達で何とかしろ」というヴァールの言葉に僕等は頷いた。
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2019.09.15:本編修正・追加




