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あれから場所を移し、キャロルのお店の三階、キャロルの自室へと集まる。
キャロルのお店は、三階建てとなっており一階が装飾屋、二階が宿として了できるように三室あるが現在は、私たちが二部屋使っているせいか実質、宿屋は休業中となっていたりする。
三階何部屋かわかれているが、一番広い部屋をキャロルは自室として使用している。
「すまない…キャロル」
「ふふ、気にしないで。私は、お茶を用意してくるわ」
そう答え部屋に備え付けられているキッチンへと姿が見えなくなったことを確認し軽く息を吐き目の前に座るヴァールへと視線を移す。
「で、お前は何が目的でここに来た?」
「目的ってひどいねぇ・・・俺達、これでも島にいたときの良き友だろう?」
「・・・マーレ・・・島って、こいつも神族なの?」
ヴェールの言葉に反応したのはクレアだった。
そういえば、この子にはあまり実家のある場所の話をしてないことを思いだす。別に秘密にしているわけではない、見た目に反し、この大陸の種族よりも長く生きている自信はある。
何がいいたいかと問われれば、ボケだと答えたい。
「こいつって…俺にはちゃんとヴァールって言う名前があるんだよ、童顔君」
ビシッとクレアのおでこにでこピンをかますヴァール。クレアは痛かったのか「あうっ」と声を漏らしデコピンを食らった場所を両手で抑えていた。
時々この子は同年代の子よりも大人っぽいように感じるもこうした、突然の出来事には年相応の反応をしてくれるために、どこかほっとしてしまう。
だが、まぁ、目の前の不届き者はあとでこの爺が制裁しておこうじゃないか。
「おい、今不穏なこと考えてなかったか?」
「何、気にするな」
ぶっきらぼうに返せば、「あぁ、いつの間にこんな冷たいやつに」ヨヨヨッと泣きまねをするヴァールに思わず手が出てしまったが仕方ない。
「っっ、それにしてもマーレ…この大陸で“血の契約”をしたなんて島の者にばれればタダじゃすまないぞ」
「…」
先ほどまでふざけていた雰囲気から一瞬で変った空気。
バレたか
先程のじゃれあいで気づくとは目ざといやつだな。そう思いつつ隣に座る二人へと視線を向ければ、どこか不安そうに瞳が揺れていた。
「何が会ったかは気がないが…あれは門外不出の禁術だ。もし、ここの種族に知られ使われてみろ…一瞬でバランスが崩れるぞ」
「…知っている」
私が所有する魔石に封じ込めている禁術。
それは我が家系がだいたい監視、守護する決まりのものであり、娘のもとに行く際も家に置いていくこともなく島から持ち出している。
それだけでも老いぼれ共は、うるさいのに、使用したとバレればきっとめんどくさいことになってしまうだろう。
「…しつこくは言わないが、もう二度とこの大陸で使うな」
「分かっているし、使う相手などもういない」
何を感じたのかヴァールは大きく息を吐き、舌打ちを一つこぼす。
このふざけたような男は、私の身を案じて苛立っているのにどうしようもなく懐かしく感じた。
「それでお前達はそれが何か教えてもらったか?」
「え…僕は…何も…」
「俺も知らない」
ヴェールからの質問に答える可愛い私の子供。
だが、先程のやり取りのせいかクレアは完全に怖がっていた。
「説明ゼロか…」
「その暇が無かったんだ…」
ヴァールの言葉にかぶせるように答えるが「暇が無かったって…お前…」仮面から見える瞳が怒りでか揺らめいている。
「これは、解除できない契約だぞ…それを説明無にやるなんて」
また深くため息をつく。
「まぁいい、終わった事を掘り返すことはしないが、ちゃんと説明だけはしろよ」
「あぁ、分かっている」
話は終了というようにヴァールは背もたれにもたれ息を吐く。それは自分を落ち着かせるための行為なのだろうなと少し笑ってしまえば、誰のせいだと視線を向けられる。
私のせいだろうね。
「…ケイルちゃんは元気?」
呟かれた言葉に場の空気は凍る。
嫌、特にひどい反応を示しtのはクレアだった。
あぁ、目の前の男はどうして、こうも要らぬことをと思っていた中、
「…ケイルは…僕の母は亡くなりました…」
普段よりも声の大きさは小さく震えていたが、その言葉はちゃんと目の前の男に届いていた。
そういえばキャロルは遅いなと思っていれば甘い匂いが台所から漂い始めていることに気づき、あぁ、何か作っていたんだな。
+*+*+*+*+*
「お茶入ったわよって…あらあら、どうしたのこの空気は?」
人数分のお茶と菓子をもってキャロルが戻ってきた事によって止まっていた空気が動き出す。
「あちゃぁーすいませんマダム。俺そろそろお暇しないといけなくなっちゃったんですよ」
「あらまぁー結構急ね」
「えぇ、これでも俺、真面目に働いていますからね」
「おやまぁ」
キャロルは「あらあら何のお仕事かしら、気になるわ」と楽しそうに会話を続けていた。
「だけれどせっかく入れてもらったお茶とお菓子を少しいただいてから帰らせていただきます」
「それは嬉しいわ」
コツッと机の上に人数分のお茶が置かれ、菓子は中央へと置かれた。
器に入っていたのは焼き菓子であった。
ここの都市は中立を名乗っているだけあり、様々な国の文化かが集まり、中で一番うれしいのが食事であった。
これに関してはエンビディア国が上だと思っている。
異世界召喚で召喚された勇者たちから教えられた知識でこの世界にはなかった様々な料理や調味料が誕生し、そのおかげでかエンビディア国の食事はおいしいらしい。
一度は食べてみたいなぁ、そう思いつつ、焼き菓子を頬張る。
それからヴァールは言葉通りにお茶をすばやく飲み、「あ、この焼き菓子少し持って帰ってもいいですか?」と焼き菓子をいくつか貰いつつ、席を立つ。
「また来てね」
「了解しました。今度は何か買いに来ますよ」
「それは嬉しいわね」
楽しそうに次に会う約束をしているなと思いながら、
「キャロル…私はそこまでヴァールを送って来るよ」
「分かったわ」
楽しそうに笑うキャロルに自然と笑みがこぼれた。
+*+*+*+*+*
二人を玄関まで見送ったキャロルは再び自室へと足を運ぶ。
自室へと入れば、いまだ動いてない二人が目に入る。
「二人ともどうしたのかしら?お茶が冷めないうちに飲みなさい」
「…うん」
二人に声をかければ、ようやく目の前の物、お茶とお菓子の存在に気がつきクレアが動く。アルスもまた机の物に気が付いていたが意気消沈しているクレアが気になってか、普段から見せる食欲を抑えながら今だ、クレアを心配そうに視線を向けている。
「どうしたのクレア?元気がないわよ」
「…大丈夫。なんでもないです」
心配させないようにとニコリと笑って見せるもその笑顔は無理やり作っているように見え、キャロルはどこか悲しく懐かしく感じた。
最近は鳴りを潜めていたが、当初、ここに来た頃は、よく向けられていたモノであった。
だからか、キャロルは自然とクレアの頭に手をのせる。その行動にクレアは驚き言葉をこぼすも振り落とすことはなかった。
そのままキャロルはクレアの頭をなでる。
「無理に、理由は聞かないけれど、でも、つらいなら時は泣いても良いのよ。あまたは今子供なの、どうか私の前では無理に気持ちを殺さなくても良いの」
キャロルは自然とクレアを抱きしめる。
暖かい体温に包まれ自然と涙腺が緩くなったのか、抱きしめられているクレアは声を殺しすも、殺しきれない声が自然とあたりに響く。
その二人のやり取りにどこか疎外感を感じつつも、アルスは焼き菓子を一つ手に取り頬張る。焼き菓子は少し冷めていたが、それでも頬張った瞬間に感じる甘さに尻尾が大きく揺れる。
気づけば一枚、二枚と、頬張っていき、ようやく泣き止んだクレアが「僕の分がない」と切なそうにアルスを見るのは吸う風後のお話であった。
+*+*+*+*+*
「他種族と結婚したんだなケイルは」
「あぁ、お前が島を飛び出した後に、アイツも島を飛び出し大切な人を見つけるんだといってな」
「…そうか」
落ち着きのある声で二人は人通りの無い路地に立っていた。
「分かっていたんだけどな…俺達の種族の女子が抱える問題だって…でも実際、妹のように可愛がってたあいつが、そうなるってのは…かなり来るな…」
出産時、神族の女性の死亡率が高いのを知っているはずなのになとヴァールは苦笑する。
「だが、あの純血主義のじじい共達に知られれば監禁されるなお前」
「…そうだな、それか子を作れと愛してもない女をあてがわれるんだろうな」
「あぁ、お前の家、数少ない純血のエリートの家だもんな」
「まぁ、純血はお前の身だがな」そう言葉には多少ながらも嫌味も含まれているがマーレはその言葉に対して苦笑を浮かべる。
神族内でも序列は存在し、レジストロ家もまたその序列の上位に位置している。
「だが、それはもう過去の話だ。私がこの大陸に来たことでそれらは捨ててきた」
「それに、この大陸にはその序列など関係しないしな」と言葉を続ける。
「本当にお前は昔も今も変わり者だな」
「あの島でわな、この大陸では他種族での結婚など当たり前だろう」
「まぁ、昔はな…今は、戦争のせいで他種族同士の恋愛が難しくなっている…」
「まぁ、どこも同じってわけだ」と表情は隠れて分からないがその声は確かなる悲しみが含まれていた。
「俺達、混血はどこもかしこも生きるのが辛いってわけだ」
「この黒髪も闇もその証だ」と自身の黒髪を一束軽く掴む。
神族内の容姿は基本、金髪で羽は白く、光属性を少なくとも備えているが、他種族との間に出来た子供は決まって黒髪で黒い羽であり闇属性を備えていた。
そのせいで、多くの神族、純血主義者たちは、混血は穢れた他種族の血が混ざり我々、神に近しき血を汚した証なのだと神族である黒髪を忌み嫌う。
「きっとケイルの子供であるあの子もいつかはぶつかる」
「あぁ」
「その時、折れなければいいな」
「大丈夫だ、あの子は強い」
その発言に「ジジバカめ」とポツリと零すがばっちり聞こえていたのか「愛娘の子供を贔屓して何が悪い」と平然と答えるその態度に、そういった親が多い所に就職しているヴァールは思いっきりなデジャブを感じさせたと同時に、笑いがこみ上げてきた。
「失礼な奴だ、お前の方が私よりも年上のくせして」
「何を言っちゃうかな?これでも俺は自称28歳で通ってんだよ」
「150もサバを読みすぎだ…」
「キャッ、乙女に向かって歳はナンセンスだわマーレ」
178歳のいい年下、男が女のような仕草でキャッとそんな仕草に、先ほど飲んだお茶をリバースしかけてしまう。
「キモイ、やめて、吐きそう」
「汚いからはいちゃ駄目だよお兄ちゃん」
「っっっ!!」
明らかに女の子のような声を出す見た目不審者である男性に思わず、腹パンは許されるだろう。
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2019.02.04 修正・追加




