第1話 シュピーレン地区
今回は軽く強姦表現があります。
「ちょ、ちょっとすいません!!」
「っっっ」
ザワザワと賑わう昼過ぎの大通り。楽しげな声とは違って切羽詰ったような悲鳴に近い声を上げながら大通りを走る者に次第と町の人の視線が集まる。そしてその町の視線の的になっているのは獣族の少年とボロボロの姿である人族の少年、その後ろの所々焦げた柄の悪そうな人族の大男3人に向けられた。
「ちょ!?まだ追いかけて来るんだけどクレア!!」
「知らないよ!!でもあんなの引っ付けたまま帰れるわけ無い!!」
最低限に後ろの状況を確認しながら二人は走る。
「待てやごらぁぁぁぁ!!」
「このガキ共たたじゃ済まさんぞォォォ」
怒声と共に人の波を無理やり押しどけるせいで次第にその大男を避けるようになり、それはすなわち障害物がなくなったために大男の速度は速くなりせっかく開いていた間が刻一刻と迫って行っていた。
「何でこうなったんだよぉぉぉ!!」
何故2人が大男に追いかけられる事になった訳は約一時間前まで戻る。
+*+*+*+*+*
「本当に人使いが荒いよね」
頼まれた品々が書かれたメモに視線を向けながら歩く僕に対しアルスは苦笑を漏らしつつ
「しょうがないよキャロルさんにはお世話になってるし」
「分かっているよ」
ケイルが亡くなってから7年が過ぎ、僕は無事に13歳に、アルスは14歳へと成長できた。
そして現在、僕らが暮らしているのはラーネン都市という様々な種族が暮らす中立都市の出入り口といわれるシュピーレン地区で暮らしていた。
ラーネン都市はこの大陸フルスカルでは有名な都市でありその理由は中立都市である事もあるがそれ以上に中立チェルシアン学園があることが一番の理由であった。中立チェルシアン学園はその名に中立を掲げるだけあり様々な種族、王族から村人まで才のある者を優先的に入学させていた。その為にこの学園は様々なものから支持されていた。その支持の中には3か国の王までも含まれていた。その為にこの都市は様々な種族が生活していた。
そして僕らはシュピーレン地区で宿屋兼装飾屋を営んでいるキャロルさんという獣族の女性の宿で暮らしていた。
マーレはこの地区にあるギルド協会に登録し、そこで依頼されている魔物狩りを、主にしつつ、暇なときはキャロルさんの装飾屋もまた手伝っていた。
したがって、僕やアルスもまた装飾屋の手伝いをしながら生活していた。
今日もまた、装飾に必要な素材が足りずその素材を買ってきてと、キャロルさんに頼まれたのでその買い出しに市場まで足を運んでいた。
「クレアにアルスじゃないか。また買い出しか?」
「えぇ、そんな所です」
目的である露店の前に辿りつき、今では露店の魔族の店主と顔なじみとなり、普段のように一言二言交わしメモに書かれている素材を注文する。
「全部で金1枚に銀4枚だ」
「ありがとうございます」
キャロルさんから預かっていた金銭袋から店主に言われた物を取り出し、店主に渡す。
この世界の通過は金貨、銀貨、銅貨であり、日本円へとだいたいにすれば金貨は4000円、銀貨300円、銅貨7円でありそうなれば、今の金額は5200円となる。
「そう言えばここあたりで気性の激しい人族がいるから気をつけなよ」
「何かあったの?」
「ん・・・昨日や一昨日ぐらいにそこらの酒場で喧嘩していてんだよ・・・」
「うわぁ・・・」
「喧嘩だけならまだここ辺りじゃ珍しくもねぇんだけどさ」
そう言う店主が続く言葉に2人は苦虫を噛み潰したような表情となる。
店主曰く「夜は喧嘩、昼は性別関係無に綺麗な容姿の奴をを無理やり路地裏に引き釣りこんで無理やりおっぱじめる」と語る。
「ほら、クレアは一見女と見間違えるほど綺麗だし、アルスも意外に・・・」
「待て、待て、その続きは聞きたくない!!」
店主の口を手で塞ぐ。塞がれた為に店主の口からは「ふがもが」と言葉にならない音が漏れる。
「とりあえず、見境の無い奴がいるから気をつけろってことだろう?」
「あ、あぁ」
僕の行動に苦笑を漏らしながらアルスは店主に尋ねれば、数回首を縦に振る。
「まぁ、俺達はマーレさんから鍛えられてるから何かあったら対処しますし・・・何よりクレアに手を上げれば燃やす」
「・・・お、おう・・・逞しいな」
燃やす、その発言の時のアルスのその瞳の本気度に店主やクレアさへ引きつった笑みが零れる。
「そ、それじゃ、僕等はこれで」
「あ、あぁ!!気をつけて帰れよ」
「店主さんも気をつけて」
こうして店主と別れるまでは良かった。そう2人は、店主の言葉などもうすでに頭の片隅へと忘れかけ、楽しく談笑しながら帰宅していた途中に事は起こった。
ガシッ
「っ!?」
右腕を捕まれそのまま力一杯に引っ張られた為に、踏ん張りも何もできないままに路地へと引きづられながらも、アルスへと視線を向ける。
そんなアルスもまた現状に頭が付いて行ってない様で口を開けたまま耳や尻尾をピンッと立てたまま棒立ちとなっていた。
しかも先ほど買った材料が入った袋が地に落ちている事に今回の買出しの中に割れ物や繊細な物がなかった事にホッと息を零すも、どんどんと遠ざかる事に内心「あぁ、店主に言われた事になったな」と見事にフラグを回収した事に再びタメ息を零す。
*+*+*+*+*
「おいおい、今回の上玉じゃねぇか」
あれから数分ぐらい引きずられ先ほどまでいた大通りから大分、離れたなと冷静になりながら現状を確認する。自身の目の前にいるリーダ以外にその左右に立つ二人の男。三人ともそれなりにガタイも良く柄も悪い人族だった。
なにより僕がいる場所は後ろが壁、目の前に3人の男。尚且つ、ここで大声を出しても助けは来てくれそうにないほど人の気配が全く感知できなかった。
「さて嬢ちゃんおじちゃん達と一緒に楽しみまちょうね」
「それにしても貧乳だなぁ」
「っっっ!!」
逃げない事を良い事に好き勝手に言うだけじゃ止まらず右端の男があろうことか胸をペタペタと触れてきた。
上着を羽織っているが現在は春な為にそれなりに暖かくその上着も薄く、その下はYシャツでありその下は何も着ておらず、生暖かい男の手の温もりの気持ち悪さに我慢できずに
「僕は男だ!!」
「がぁっ!?」
その嫌悪感を振り払うように右端の男を蹴り飛ばす。
蹴り飛ばされた男もその傍にいた男達も驚愕するもすぐにリーダーの男が一本にまとめている髪の束を何のためらいもなく掴み引っ張りあげられる。
「よくもやってくれたな!!このガキッ」
「ガァッッ」
腹を思いっきり殴られその行きよいのままに後ろの壁へと激突、休むまもなく上か足が下り何度も蹴らる。
その足から身を守る為に体を丸めその暴行に耐えるがリーダーの男はいつの間に取り出したのかナイフを握っておりその刃をボタンが止まっているYシャツの前を切り裂かれ思わず驚愕の声を上げる。
「もうさぁ・・・やっちまおうぜ」
「え・・・ぁ・・・」
見下されるその視線に思わず身を強張らせる。早く、魔法やら攻撃をしなければ自分の身がヤバイ。
頭では分かっているはずなのにその身はピクリとも動かずただただ、男達を見ていた。下品に笑うその男達に恐怖を抱き、強く願う。
“助けて”と。
一瞬感じた首の熱を忘れさせるように唐突に第三者の声が響く。
「ねぇ、何してんの・・・?」
バッと声がした方に全員が視線を向ける。男達は「誰だ!!」「獣風情が邪魔すんじゃねぇ」と罵声が投げられるも、アルスの登場に少なからず僕はホッと胸をなでおろす。
「ねぇ・・・クレアに何してんの?」
この地区に暮らしはじめてからアルスはいろいろな表情を作るようになった。
普段は笑みが多く現在も口角を上げ、笑みを作っているがその瞳には明らかな殺意、怒りが滲み出ていた。
それが男達にも伝わっているかのようにリーダー以外の男達は腰が引けていた。だけれども所詮子供と見くびっていた。だからか、
「燃やす!!」
怒りのまま放たれた言葉は、魔法発動に必要な詠唱として受理されたのか、目の前の男達が炎に包まれた。
その隙に、自身に置かれていた足は緩み、思いっきり体を起こせば足はどいたために、アルスの下へと走る。
払われた男は体勢が保てず顔面から地面にぶつかる。だが、そんなものなど確認せず、合流したアルスは僕の腕を掴み、大通りへと続く道へと駆け出す。
そして最初へと戻るのだった
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