第5話 決意
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これからもよろしくお願いします。
あれから一月が過ぎた。
エンビディア国とパシオン国の戦争は兵の数の不足により国境付近の戦争はパシオン国の勝利となった。そして現在、国境付近のエンビディア国の村々を巻き込んだ防衛線を繰り返していた。
だが、この勝敗は偽られ中央都市中心では国境付近に勝利したというデマを流していた。それは貴族、町民の者達は喜び、毎日のように宴を広げる。それが、村人を犠牲にしているなどと思わずに。
バサッ
見晴らしの良い崖の上にクレアは降り立つ。
あの出来事により成長した体は10歳時の平均身長よりも少し高く、首までの長さだた髪は第一時成長の時から切っていないのか、肩の長さまでゆうに届く長さとなっていた。
「ケイル・・・」
崖の先に立てられたケイルの墓であった。その墓にはケイルの亡骸は埋まっていないものの風習としてマーレが建てたものだった。少し歪な十字架はお世辞にも綺麗とはいえないけれどもマーレが一生懸命作った墓は、クレアには立派な墓に見えていた。
「もうじきこの地を旅発つから・・・次に顔を見せるのがいつになるのか分からない」
そっと墓の前に置いた花束は白と黄緑の花で出来上がっていた。
「でも、次来る時にはちゃんと自分の力を制御させる」
グッと握られた拳。現在、マーレの下でアルスと共に魔法の修行と弓の使い方を習っていた。前回の戦闘ではほとんど風のマナによる手助けがあったおかげで命中させる事も魔法を発動させる事もできたが、手助けがない状況でやれば全て失敗に終わる。
「・・・ありがとう・・・僕を生かしてくれて・・・」
再度、「ありがとう」と呟き、名が刻まれている部分をそっと指でなぞる。歪ながらも“ケイル・ディ・レジストロ”としっかり彫られていた。
「僕はこの先どんな事があろうとも立ち止まらないよ・・・絶対に・・・また皆でここで暮らす」
それは決意であり願いであった。
「それまであの人と一緒に待っててよ・・・ここからなら見えるから・・・村も・・・あの人の墓も・・・」
そう言って崖から見える景色に視線を向ける。
少し距離はありながらもケイルと一緒に暮らしていた草原、草原から少し離れた場所に立っている墓。そして森を挟んで小さな村が全て一望できた。
「だから・・・行ってくるね・・・」
最初で最後の言葉。
「母さん」
第一章 完




