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紡ぐ物語 -FUTURE-  作者: 稀世
01:出会いと別れ
11/47

4-3






「なぁっ・・・」

「うそ、だろう・・・腕が・・・」


周りにいる騎士は自身の体がもうすでに股間の辺りまで陰に飲まれているというのにそれよりも今、目の前で起こっている光景に開いた口が塞がらなかった。


先ほどの槍の攻撃で失ったはずの左腕の肘の辺りに影が集まったと思えば影が離れた時、無いはずの左腕が存在していた。

先ほどのは夢だったのかと思う者もいたが左肘とその新しい腕の間には確かに血の痕が合った。ただし、新しい腕には血の一つも付いていない。

これに対して騎士達は声を出した。自分達の目の前にいるあれは本当に化物なのかと、次元が違うのではないのかと悲鳴に近い声を上げた。その騎士の戦闘にいるカンユもまた同じく久方ぶりに目の前の敵に恐怖を抱いていた。あれをどうやって倒せば良いのか?心臓を貫けば死ぬのではないだろうが、それに行く前に影で出来た獣に食われてしまう。八方塞だった。


指示を求めるようにリュイの姿を探す。そしてカンユから大分離れた場所にリュイの姿を捉えたもののリュイは顔の左半分を押さえながらも自分達と同じ光景に唖然としていた。それもそうだ。誰一人として無くなった筈の腕が再生するなど、しかもその腕は槍で肉片と変わる前の腕そのものだと想像付かなかったはずだ。けれどもそれは今目の前で起こり、この場にいる誰一人動けずにただただ影の中へと飲まれるのみだった。


『この矢は全てを凍らし砕け散る』


頭上から聞こえた詠唱。詠唱が終わると同時に撃たれた矢は1本ではなく3本。その矢はクレアの周りにいる獣に被弾。だが、上から落ちてきたのは矢だけではなく


「捕まえた!!」


氷の矢の後ろにアルスもまた落下していた。だが、氷の矢が着弾時の余波か所々、氷結していたが、そんな事気にせずクレアを地に押し倒すように着地し、身動きが取れないように首元を腕で抑えつけ、胴を下半身、全体重をかけ取り押さえる。


「うっあぁぐぅっ」

「っぐぁっ・・・この!!」


足を、腕を、影で出来た刃で貫かれようともアルスは退く気配は無く逆により一層に抑える力が強よめた。


「マーレさん!!」


上空にいるマーレに合図を送る。

その合図を受け取ったマーレは自身の右手首を浅く刃物で切る。浮かび上がる赤い線、その赤は重力に従い下へ、アルス達の下に落ちる。


『 Tell this From now on Participate to activate blood contracts Mare di REGRO  』

告げる これより血の契約を発動させる 取り仕切るはマーレ・ディ・レジストロ


詠唱に反応し赤が落ちた地面、二人を中心に浮かび上がる赤い魔法陣。その魔法陣は、一般に発動している魔法陣とは違うモノだった。


『 Lord of this contract is Ars dogs Claire di Regro

この契約の主はアルス 狗はクレア・ディ・レジストロ


Deng dedicated its magical power to the Lord

狗はその身、その魔力を主へと捧げ 


The Lord dedicates its fate, its price to dogs

主はその命運、その代償を狗へと捧げよ


There is no thing never to be solved until one of these contracts comes to a death

この契約どちらかが死を迎えるまでけして解かれる事は無い


If you accept this contract, exchange each other 's blood

この契約受理するのなら 互いの血を交換せよ』


詠唱の区切りを迎えた。詠唱の意味は分からないけれども上空にいた時にマーレから教わった事を思い出す。





+*+*+*+*+*





「私が契約の詠唱を唱える。その途中、間が空く。その間にお互いの血を体内に摂取する事によって契約は受理される」

「血・・・契約・・・」


一般的の契約は風の噂ながらに知っているたが、マーレさんから軽く聞かされた契約の内容とそれは全く一致しない事に不安になる。

けどもマーレさんが教えたこの手しかクレアを救えないのならばそれに賭けるしかない。覚悟を決め、俺は首を縦に振る。




「クレアッッ、ごめん!!」

「ぐぁっっっ」


首元へと噛み付けば短い悲鳴が聞こえ、抵抗されるも、口内にクレアの血を含みそのまま飲み込む。

次に、先ほどから出来る新しい怪我から流れる血を指にすくいクレアの口内に無理やり突っ込めば、ガリッと指を噛まれ、痛みで顔を歪めながらも次の詠唱に身を構える。


血を交換した時、魔法陣から出現した鎖が俺達の体に待ちつき始める。


『Chain was accepted contract

鎖は契約が受理された


Make a testimony of the testimonial on it

その証をその身に刻むが良い』


最後の一語が言い終わると鎖は俺の右手首に、クレアは首へと巻きつき始め、その鎖は次第に強くきつく、締め上げていく。


「がっはぁっ」

「いたぁっっっ」


その痛みは熱された鉄を押付けられたような痛みが襲う。

その痛みによって視界は薄れ、意識は闇へと沈んだ。





+*+*+*+*+*





契約が成功したことによってクレアの暴走は収まり、まだ全てが陰に飲まれていない騎士達は影の外に投げだされるように開放されたが、完全に影の中に飲まれた者が影の外に出れたものはいなかった。


「くそっっ今のはなんだったんだ!!」

「分かりません・・・」


影から開放されたリュイは真っ先にカンユの下に駆け寄り、痛みにより意識を手放した二人を忌々しそうに睨みつける。カンユもまた先ほどの光景に首を横に振る。「あの二人は今意識がありません止めを刺すなら今では・・・」とカンユが言い終わる前に上空からの射撃に言葉を引っ込めた。


「・・・ほぉ・・・まだやるというのなら今度こそ貴様たちの生を終わらせてやる」


二人の前で着地するように、氷の矢を騎士達へと向け言い放つマーレ。「敗者が!!前回の戦いで俺に負けたのを忘れたか」とリュイの言葉に鼻で笑う。その態度にリュイは顔を赤面させ、カンユから剣を貸すように言い放つ。


「一度っきりの勝利が絶対ではない。過去の勝利に縋り付いているだけの者に二度も負けない」

「好き勝手言いやがってぇっっっ!!」


詠唱一つ唱えていないというのに一気に周りの温度が低くなった事に、自身達が吐く息が白い事に一人、また一人と気が付く。


「たかだか、三十や二十しか、ましてや十代後半しか生きていないような若造にこの私が越えられるか」


たった一瞬だけ感じた殺気。それは確かに威嚇なのだろうがその一瞬で、周りの騎士達は息を呑み、顔を青ざめる。悪い者は失神するほどに。カンユもリュイも失神までも行かなかったものの一瞬感じただけの殺気に体は振るえ、顔を青ざめていた。その反応に、


「やはり人族は弱い」


その言葉を零し、二人を回収する。息は乱れているけれどちゃんと生きている事にマーレは一瞬ホッと息を零し、遠くに落ちていたケイルの愛武器である白い弓を回収した事により、再び上空へと上昇する。下の方で「待て」「逃げるのか」と言葉が聞こえたもののマーレは気にせず飛び去った。





+*+*+*+*+*





大きな揺れに馬車にいた村の人達は大きな悲鳴をあげながら互いの体を寄せ合って、必死に耐えていた。

ドンッ、バキッと派手な爆発音に大きな罵声。


「お母さん怖い」

「大丈夫よ!!」


泣きそうな子供達を一生懸命励ましながら、この嵐が過ぎ去るのを待つ。ふとガタッという音がしたが、その音に気づいたものはおらず、その音の正体も誰も知らなかった。

だが、数時間、数十分だろうか、ふと吹いた風によって鍵が閉まっていたはずの扉が音を立てて開いたのであった。村人は驚愕しながらも出入り口へと一歩一歩、近づき外の様子をのぞく。周りには騎士達はいないものの、外の荒れように村人は息を呑んだ。

どうしたんだ?一体外では何があったんだと疑問の声を上げる。

皆が外に出たとき村人は恐怖し、絶句した。もう一つの馬車に収容されていた仲間、村の人達は山となり息絶えていた事に、自分達を捕らえていたはずの騎士達の姿がどこにもない代わりにあたりに残されている残骸、死体、戦いの痕跡に誰しもが息をのむ。


「これから・・・私達はいったいどうすれば・・・」


町長は失墜の声を出し、それに釣られるように村人はぞくぞくと膝を地に崩す。

そして誰かが言った「これは魔女による災いだ」と。だから魔女達の死体は無いのだと。行き場の無かった怒りは魔女へと向けられ、子供達もまたこれは本当に自分が知っている人達が本当やったのだろうかと心のどこかで思いながらも、知人が死んだ事によってそれ以上深く考える事はなく、魔女の家へと向かう。

幸いな事に村人はこの森の道を知っていた。だから、自身達の村の帰り道を知っていた。



だが、目的の場所に辿り着いた時、その家はなくなっていた。









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