プロローグのプロローグ
西暦2600年、27世紀
細かい紆余曲折を抜きにすれば今の時代を示す言葉はこれだ
日本の元号は共幸、共幸45年だ
「はい、と言う事で日本での暦は元号として定められます、皆さん知る通り今は共幸ですね」
カッカッ、と小気味よい音で黒板を走るチョーク
「歴史とか、役に立つのかよ〰」
俺はそんな教師の話をそこそこに黒板をノートに写していく
いや、今時液晶端末やホログラフィで黒板を共有すればいいものを
何を考えてるのかこの学校はレトロ中のレトロな紙、鉛筆なんて物を使っている
「だいたい、にほんの事なんて俺たちには関係ないじゃん」
ぶつくさと小声でぼやく俺に不意討ちのチョーク弾
「アレン君、歴史の授業が無意味に感じるなら…君の好きな体育でもさせてあげようか?グラウンドを5周位してくるかね?」
「あ、や!楽しい!歴史最高!にほんとかちょー興味ありましたから!」
額を押さえつつ涙目でペナルティは回避したい必死の取り繕い
「はぁ、もう…歴史ってのは社会の仕組みの事なんだよ?それは 知ることで視野になり、理解する事で力にもなるものなんだ」
知識と言う力こそ、人間が…知性ある生命が歩んできた道標なのだから
そう言っていた教師の話しが、頭に甦る
身体は動かず、理解は追い付かず、なぜ今そんな事を思い出したかすらわからない
分からないけど、多分
俺はもう死ぬんだろうな
段々感覚が無くなっていく下半身を見る
膝から下が無い
さっきから何度も逃避しては確認し吐きそうになる
感覚が薄くなっていき、冷たいのに熱い
流れた血だまりが恐怖を煽る
怖い
死ぬのか
死ってなんだっけ
飼っていたペットが死んだ時は悲しかったが
いや、今は自分だし
あ、手も寒くなってきた
おいおい、なんで14歳になったばかりで死ななきゃいけないんだ
妹なんて11だぞ…
なんで、なんでこんな事に
勝手に閉じそうになる瞼を開けようと見渡せば
我が家は、故郷は火に包まれていた
他に生きてる人は
いないだろうなぁ
学校が終わって、友達と遊んで
ご飯食べて
そして、死にかけている
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「おい、おい!」
呼びかけと頬を叩く感触に意識が戻る
「よし、生きてるな」
目の前には男の人
「生存者一名確認、脚部損傷出血多量だ…ああ、応急でディレイ掛けてるから直ぐに搬送だ」
男は誰かと喋りながら俺の体になんかしてた
「スグ医者が来るから安心しな」
‐安心ってなんだ?
「ん?お前は助かるって事だ、まぁ今は考えず寝とけ」
首辺りに何かが貼ってある
眠く なって き
ちゃ た