番外・怠惰と堕落と鎖
「君、明日からこなくていいよ」
「え…!?」
遅刻もしてない、頼まれれば残業も出来る。
今時の若者にしては出来ているほうだとも言われていた。
「いや、こっちも惜しいんだが君のご両親がね…」
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「親父!!」
「なんだ騒々しい」
「今日バイトをクビにされた」
「お前に実力がないからじゃないか?」
「白々しい事言いやがって…どうしていつも仕事の邪魔をするんだよ!!」
「人聞きの悪い。
仕事を真面目にやっているなら、クビになどなるはずがないだろう」
「親父がそう頼んだんだろ」
「そう思いたいなら勝手にしろ」
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「ちくしょう!!」
悔しさのあまり壁を蹴った。
「ぼっちゃま!?どうしたんですか?」
「…その呼び方止めてくれよ」
この年で“ちゃま”は恥ずかしい。
「あの…どうなされたのですか?お坊っちゃま」
「そういう意味じゃなくてさ、あーもういい」
「すっすみません!!」
「親父にまた仕事を辞めさせられた」
「えっ仕事をしなくてもいいだなんていいじゃありませんか!?」
普通に考えれば仕事をしなくてもいい俺のようなボンボンは羨ましがられる立場だ。
「べつに仕事をしなくていい訳じゃないよ。
いつかは、親父の後を継がせられるじゃないか」
「す…すみません」
「ところであんたまだ高校生くらいだよな?なんで家でバイトしてるんだ?」
「え…あの私…お金がなくて高校生には行けなかったんです」
「そっか、でも奨学金とか考えなかったのか?」
「死んだ両親が残した莫大な借金があって…奨学金はとても…」
「…ごめん」
大学はまだわかるが高校にも行けずその上両親が借金を残されているなんて、絵に描いたような貧しさだ。
「それで今は祖父母の家に居候しているんですけど…花嫁修業になるだろうって」
「へー今時珍しいな…まあ、アンタは天然系で理想の花嫁って感じするよなー」
「えっ!?」
「何もない所でコケてくれたら最高」
「そうなんですか!?努力します!」
「待て、単なる俺の好みだからな一般論だと思うなよ!?」