②俺が黒と言ったら白いものでも黒くなる
「どういうことなんだああ!?無限会社エガオニッコリスマイルがポリス沙汰に!?」
「一文字惜しい!」
せっかく決まった場所で働けないなんて認めたくない話だ。
「偶然同じ名前の会社があったんだ!!きっとそうだ」
「ではこっそりキミの働くはずだった職場見学に行きますか」
コスプレ娘がささっと会計を済ませて消沈する俺をズルズル引き摺った。
「マジでポリスだらけだった」
「まるでデカの気分です」
「ほらあんぱんと牛乳」
「わかってらっしゃるー!」
「しっ気づかれる」
こっそり、そういったのはこいつなのに、騒ごうとしたので口を手で覆った。
「大丈夫、私の姿は見えてないので!」
「仮にお前が死神とか幽霊で普通の人間には見えないとしよう、俺は見えてることに変わりはないんだよ」
「そうでしたね」
「とりあえずブラック企業をギリギリ回避してくれたのは助かった」
しかしなぜコスプレ娘はヤバイ会社だと知っていたのだろう。
「あ、私がなぜ地上に降りたかと言いますと…」
「地上に舞い降りた天使のコスプレの設定?」
正直コスプレに興味はないのでどうでもいい。
「キミがブラック企業を引き寄せ、同時にホワイトやグレーをブラックに変えてしまう素質をもっているからなんですよ」
「はーそうなんですか」
きっとこいつはぼっちで友達がいないから一人でコスプレを楽しんだはいいがマンネリから赤の他人の俺をハンティングしてマイワールドに引き込もうとしているんだな。
「つまり実は俺が悪魔と人間のハーフだから白を黒に変える力があるってこと?」
「悪魔と人間のハーフなんてそんな二次元みたいな話あるわけないじゃないですか」
一応妄想と現実の区別はついているようで安心した。
「じゃあお前のそれはコスプレ、だって認めるよな?」
「コスプレではありません!」
「俺は普通の人間か?」
「はい、ブラック誘発を除けば」
反応を見るに変な素質を持っている、という点を除けば肉体が優れているわけでもないんだろう。
「なんで地上に降りてきたんだ」
話が一行に進まない、この際最期まで芝居に付き合うか。
「それはですね、貴方の就職を弾くようにしていた担当のしたっぱが仕事をサボって、貴方が受かってしまったからなんです」
「誰だサボった奴って。面接受かって就職決まって家族全員で喜んだのに天国から地獄に叩き落とされた気分だ」
「私なんです」
「でしょうね」