①すなわち俺が採用されるのはブラック企業で家族が大変なことになる
引きこもりダメニートの俺に就職が決まった。
「お仕事決まったんだね!なんてとこなの?」
「有限会社エガオニッコリスマイル★だってさ」
「お兄ちゃんやったね!!」
俺の仕事がみつかったことを祝福しているこいつは、パッと見可愛いが妹ではなく弟である。
妹なんて都市伝説。
さて、職場に向かうぞ。
「まてええ!」
誰だこのティアラにフワフワのマフラー、ビキニアーマー的な格好をした可愛い女の子。
「うわあああああぶねえええ」
降り下ろされたデカイハンマーを俺は必死に避けた。
「うわあああ!ごめんなさい!」
「“ニートだけど久々に外出たら可愛い子に殺されそうになった
昔読んだ少年漫画のありがちな展開にリアルで遭遇した”で送信」
可愛いけど変なコスプレ娘が頭を下げ謝っている間にスマホを取りだしSNSに現状と心境を実況、投稿をする。
「キミ…最近まで引き込もっていたなら少年漫画くらい読んでたんじゃ?」
「んなもん5年前に卒業して青年漫画に変えたっての」
主人公と可愛い子が出会って主人公の取り合いをする展開は変わらないが気分的に少年より青年のほうが免罪されている気がしていい。
「大して変わらない気がする」
「言うな!頼むから声に出して言うな!」
それにしてもこのコスプレ娘はいきなり現れて、巨大なハンマーを降り下ろして何がしたかったんだ。
「じゃ、俺は職場に行くから」
「行ったら公開しますよ」
後悔といったんだろうか、しかし発音は公開だった。
「それは…どっちの意味でコウカイなんだよ?」
先程の言葉の意味を問いただすと、コスプレ娘はニヤリと笑ってノートパソコンを取り出した。
「貴方は寝ている時にヨダレをたらしていますね?」
画面を見ながら家族意外は誰も知らない秘密を言い当てた。
「なぜ引き込もって数年の俺のプライベートを!?」
その画面に恥ずかしい写真があるのだろうか。
「それ…本当だったんだ」
コスプレ娘は何かを小声でつぶやいた。
「なんでやっと決まった就職を邪魔されなきゃいけないんだ!!」
苛立ちながら去ろうとした俺の腕をコスプレ娘が掴む。
「とにかく今はダメなんです!!すぐにわかりますから!!」
「…はあ、採用早々遅刻してクビになったらお前のせいだからな」
コスプレ娘はこくりこくりと頷く。
「一先ずネットカフェで急速に休息をとりましょう」
「ああ普通のカフェにするより安いか…そんなに金ないしな」
本来の目的は休息だが、そばにパソコンがあるとすぐに弄りたくなる。
「とにかく気道に乗って起動しましょうか」
「それさっきから何…?」
わざとなのか、無意識なのか知らんが、駄洒落を混ぜてくるのはなんなんだ。
「言葉の使い分けって賢い感じがしていいじゃないですか?」
「まあいいや…最新ニュースでも見るか」
トップにアイドルの熱愛、結婚など芸能人の話題、下へ目線をやると、驚いた。
「株式会社スマイルニッコリ笑顔がガサ入れ!?」
「あの、画面と社名違うんですが…」
俺が行くはずだった会社はブラック企業だったのだ。