第7話 就職
意識が朦朧としている、さっきまで、威勢よく叫んでいたのに、今にも倒れそうだ。
イチゴさんの元に戻ると、緊張の糸が切れたのだろう、倒れこんでしまう。
意識を失う瞬間、イチゴさんの顔が見えた、顔をグチャグチャにして泣いていた。
あぁそんな顔もかわいいなぁ。
救急車で運ばれた荒神は、病院のベッドで目を覚ました。
「ふぁぁ~なんだか体が重い・・・ここはどこ、私は誰?」
『お前さんは倒れて運ばれたんだよ・・・誰と聞かれても、儂はお前さんの名は知らん。』
「夢じゃないんですね。」
『夢じゃぁないさ、最近退屈しておったからの~お前さんにしばらく付き合ってやる。』
「それは、どうもありがとうございます、黒龍さん。」
『・・・儂に名を与えたじゃろうが、それで呼ぶがいい、お前さんの名は?』
「あっはい大黒天さん、遅れてすいません僕の名前は荒神猛と申します。」
『お前さん昨日としゃべり方違うんじゃないか?違和感があるからやめんか!あと敬称もいらぬ、お前さんは儂の主なのじゃからな。』
「はい・・・うん、わかったよ大黒天。」
『さて、お前さんはこの国の荒神か・・・ならば、その適正もうなずける、しかしちと体が貧弱じゃなぁ』
「荒神ですけどこの国のって何?、体は一応鍛えてたんだけどなぁ・・・精進します。」
『この国のとは、そのままの意味よ。』
「そーですか、まぁいいや。」
そしてゆっくりと体を起こすと、そこにはイチゴさんがいた、心配させたもんなぁ、申し訳ないことをした、謝らないと。
「おはようございます・・・」
返事が返ってこない、怒っているように見える。
「怒っていらっしゃる・・・?」
「当たり前です、それに最初に言うことがあるんじゃないですか?」
「はっはい、すいませんでした。もうしません。」
「もうしませんじゃないです!なんであんなことしたんですか!止めたじゃないですか、死ぬかもしれなかったんですよ?」
「はい、僕が行かなきゃいけない気がして・・・」
「気がするがけで危ないことしないでください。」
荒神が説教を受けていると、扉が開いた。
「あぁお目覚めですか、タケルさん始めまして、私はヘブンゲートのオーナー、ツールッフと申します。」
「始めまして、どうして僕の名前を?」
「イチゴさんから、そう呼んでほしいと伺いましたので。」
「そうですか・・・」
あんたには呼ばれたくないんだけど・・・このオーナーも悪魔なのだろうか。
「それはそうと、大物と契約したそうじゃないですか!素晴らしい!」
「はぁそうみたいですね、ハハハ」
「普通は、下位の魔物と契約をしてから一緒に成長していくものなのですがね。」
「魔物も成長するんですか!」
「はい、進化もしていきます、魔物の場合は見た目も大きく変化しますがね。」
「そうですか、それを知ってたらこんな遠出しなかったのに・・・」
「いえいえ、強い魔物と契約は悪いことじゃないですよ、弱いと全然契約者の力にはなりませんし。」
「そうですか、適正なんかも変わっていくんですか?」
「上位の適正が増えたり、複数の適正が追加されたりします。適正にあった技なんかが使えるようになっていきます。ステータスは見ましたか?技が増えていると思いますよ。」
「はい・・・」
名称:荒神 猛 年齢:25
種族:人間
職業:フリーター
状態:正常
レベル:1
HP:100/100
MP:6000/6000
スキル
黒炎操作 黒炎龍の息吹
適正属性
火 炎
契約魔物
黒炎龍
「スキル増えてました、僕が契約したのって黒炎龍だったんですね。」
「!なんと、龍も驚きだが、まさか色付きとは・・・しかも黒か珍しい。」
「色付き?」
「色はそれぞれ力があるのですよ、黒は純粋な力ですね。」
「すごい高火力ってことですか?」
「簡単に言えばそうですね、炎龍ってことは、間違いなく上位種ですので、早いですがウチの店から専属でお付けいたします。」
「はぁ、でも僕、お金がないので・・・」
「ああ、すいません、興奮しすぎて、説明が遅れましたね、中位の魔物に進化しますと、この店からスカウトって言えばいいのでしょうか、まぁ雇っているのです、だからお金はいりませんよ。」
「強制なんですか?」
「そんな、強制ではないですよ、まぁ普通は少しずつ知ってもらってからの話ですからね。まず私たちは、こちらの世界の方々に向こうで仕事をしてもらうために強くなってもらっているんです。最初はあまり強くないので費用がかなり掛かります、ゲートを作る為にMPをかなり使いますからね、回復薬が1万円くらいするので、だらかお金をお支払いしていただいて支援しています。回復しなくても守る必要がないくらい強くなれば回復は必要ないと言うことです。強くなっていく段階で、少しずつ説明しながら、興味を持っていただいて、相性の合うパートナーをこちらで選んで、仕事をして貰おう。と言う事です。」
「要するに、ヘブンゲートは向こうではギルドで、そこで働いてほしいってことですか?」
「そういうことです、どうですか?私のギルドで働いてみませんか?もちろんフリーランスでも構いませんが、ギルドに入っていただければ、支援しやすくなります?」
まぁ迷惑もかけたみたいだし、悪い人ではなさそうだ。仕事もコンビニバイトだし、就職ってやつか!
まさか異世界に就職できるなんて思ってもみなかった、福利厚生はちゃんとしているのだろうか・・・
まぁどうせフリーターだし、働いてみるか!しかし、合わなかったら簡単に止めれるだろうか。
「あの、一ついいですか?」
「はい、どうぞ。」
「もし、気に入らなければ、止めることもできるんですか?」
「はい、残念ですが引き止めはしません、安心してください。」
「そうですか、じゃぁ・・・よろしくお願いします!」
「こちらこそ、よろしくおねがいします。じゃぁ色々決まりましたら、ご連絡いたします、私はこれで失礼しますよ。」
「あっはい、ありがとうございました。」
オーナー、いやギルマスが出て行った後、イチゴさんはまだ座っている。
「あの・・・イチゴさんはいかないんですか?」
「私が専属になります、タケルさんは放っておくと何するかわからないですからね。」
「勝手に決めていいんですか?」
「・・・タケルさんはいやなんですか?」
「いや、うれしいですよ、是非お願いします。」
「しょうがないですね、わかりました。じゃぁまた来ます。」
そういってイチゴさんは出て行った。
『お前さんあれに惚れているのか?』
「・・・いきなりなんだよ。」
『隠すことはない、儂とお前さんはある程度リンクしとるからな。』
「・・・仕方ないだろ、あんなに可愛かったら恋するさ。」
『やっぱり、そうじゃったか。』
「え?リンクしてるから、わかったんじゃ・・・」
『そんなことわかるわけなかろう。』
「・・・」
こいつ意外と変な奴だな。