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第6話 大黒天


近藤君が言ってたんだ、魔物と契約した時、その雷は姿を消したと・・・


僕の考えが間違っていなければ、この山火事の魔物と契約すれば、火は消える・・・

これは運命だ、今日この時間この場所で、僕がいる!

僕が契約さえすれば、きっとまだ取り残された人は、助かる!

・・・これは正義感からじゃない、ただ理由が欲しかっただけ、正義感なんてこれっぽっちもない。

でも、そう思えばこの業火に飛び込むことができた。


「必ず助ける!」


「ほう?何を助ける?」


どこからともなく声が聞こえた。

すーっと、その声の主が顔を出す。


そして、黒く巨大で龍のような魔物が問いかける。

「一体何を助けるんだ?」


「・・・お前がこの山火事の原因か?」


「原因?馬鹿を言うな、自然発火ならば儂が原因じゃが、今回は違う。」


「この山で焚火をした人がいたと聞いた・・・」


「火を見るより明らかではないか?それで何を助けると?」


「取り残されてる人がいる、その人を助けたい・・・」


「はっはっは、それは無理じゃ!」


「まさか!」


「もう食ろうてしまったわ!何を睨む?儂が見えるのなら多少はわかっているのじゃろう?」


「わかってはいた・・・、まだ助けられると信じてやってきたんだ!」


「そうか、無駄足じゃったな、それに自業自得ってものだろうよ、儂はまだ腹が減っていたわけではないが、呼ばれたからには、ちゃんと捕食せんとな、さて久しく人と会話ができて楽しかったぞ、さぁ我の養分になるがいい!」


「お前はまだ、この森に棲む生き物を養分にするんだろ、だったら無理だ!」


「無理と言われても、お前さんには何もできんだろうよ?」


「契約をする!」


「馬鹿か?我が貴様みたいな馬鹿な人間と契約すると?」


「する!・・・これから契約を開始する!」


「はぁ、好きにするがよい、面白い余興を頼むぞ。」


「生物を捕食して魔力を補給している、魔物は契約することにより、契約者から魔力が供給される、したがって、捕食する必要はなくなる!」


「あぁ知ってるよ、で?それだけか?それに供給って、儂が満足するだけの魔力をお前さんが持ってるとは思えないが?」


「そっそれは、魔力のコントロールでお前の必要分を抑えれば・・・」


「ふむ、抑えても満足はできないぞ?」


「そのくらいは我慢しろ!」


「話にならん、いや契約にならんなぁ、儂は今の方が十分すぎるくらい、魔力を摂取している。

それでは、こちらから、デメリットを教えてやろう、まず儂と契約すれば人食いになる、人食いと呼ばれるのは、いやであろう?」


「それは・・・仕方ない、受け入れる。」


「そうか、ではお前さんの魔力が足りない場合、儂はお前をいつでも食える状態になる、怖かろうよ、いつ食われても、おかしくないと言う恐怖はな。」


「それも、大丈夫だ何とかする!」


「根拠のかけらもないな、これだから人間は嫌なんじゃ。」


「俺は、この状況を何とかしたい!」


「英雄きどりか?力を持たぬ者が言うと滑稽じゃぞ。」


「じゃぁ俺の力になってくれ、俺を英雄にしてくれ!」


「はぁもう話は終わりだ、去れ!大体お前の適正はどうせ火じゃろう!儂は上位の炎、契約するだけ無駄だじゃ、契約したとたん、儂の炎に焼かれるだけじゃ、適正が炎であれば、契約してやってもいいがな、はっはっは。」


どうやら炎は火の上位らしい、知らなかった。

「それは、本当か?」


黒い魔物は笑いが止まらない。

「はっはっは、本当だとも。」


「契約は完了した、今からお前は俺の力となれ!」

そういうと、一面の業火とともに黒い魔物は僕の中に消えていった・・・


「!?なにをした。」

頭の中から声が聞こえた。


「僕の適正は炎だよ。」


「・・・そうか、墓穴を掘ったか、まさか適正者がいるとは思わなかったよ。」


「珍しいのか?」


「さぁな、しかし儂は生まれてこの方見たことはなかったよ、やれやれ仕方がない少しだけ力になってやろう、それがお前ら人間の契約の眼の力なのだろう?」


契約を開始してからは、口にしたことには強制力が生じるそれが契約の力だと教えてもらっていたのを思い出す。そう、契約とは、「契約して!」「うん!」と言わせたらいいのだ、言わせてしまえばいいのだ。


「せいぜい今日から怯えるがいい、儂に食われる恐怖にな、起きてるときも、寝ている時でも夢に出るほどに怯えるがいい、儂はいつでもお前を食えるのだから。」


「お前は僕を食わない、食べたいなら、そうすればいいじゃないか。」


「ふん、お前さんを食う時は儂が決める、命令するな!」


やっぱり、この魔物は俺を食う気はないのだろう、さっきも襲わないで、去れ!と言っていた、焚火の犯人も逃しているし、人は食べていないだろう、恐らくさっきも。


「お前、もしかして人は食べない派?」

なんだよ、人食べない派って。


「なにを言っている、先ほども食ろうたと言っただろう。」


「嘘ついてもだめだよ、ステータスで確認できるんだから、人食いになんてなってない、ってことは。」


「ふん、あんな馬鹿な生き物食べたくないわ、森林を焼き尽くすだけで十分魔力は手に入るしな。」


「さっきと、言ってることが違うよ?」


「うるさい、黙れ。」

それから、しゃべりかけても反応しなくなった、無視かよ・・・

名前がないのも不便だし僕も名前を付けよう、黒い体に圧倒的な魔力だから。


「これから、よろしく大黒天(だいこくてん)。」


僕は、彼に七福神から名を貰い、大黒天と名を付けた。

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