01・授業ってなんであんなに眠くなるの
昔、夏なのにサングラスとマスクとニット帽を着けた怪しい女の人にこう言われた。
「人を信じぬきなさい。優しくしなさい。無条件な優しさがきっとあなたや周りの人を助けることになる。」
いかにも怪しげな人に手首をつかまれてそんな事を言われても、その時はただ訝しむだけだった。
私がその言葉を思い出したのは数年後こと。
…*…*…
「いつまで寝てんのよ!いい加減起きなさい!」
「うぇっ!?」
伏せていた顔を上げると眉を吊り上げた友人、藤堂雪が教室の机で寝ていた私を見下ろしていた。
「2年生最初の授業で寝るなんて何考えてるの。もう放課後よ?」
「……わぁ、ほんとだ。よく寝たなー…。」
時計を見ると時刻は3時、おやつ時だ。
「もう少し反省しなさい。」
「はい…。」
はぁ、とため息をつかれる。雪さん、いつもすみません…。
「まったくもう。私はこれから用事があるから先に帰ってて。ヨダレのついたその顔をしっかり洗ってから帰るのよ。」
そう言い残して雪は教室を出て行った。
近くの手洗い場に行こうとしたが、なんか生徒同士が手洗い場の前で喧嘩していたのでUターンする。
いや、だって関わりたくないじゃん?ここの他に洗えるところは…あ、あそこがあるじゃないか。
もうほとんど使われなくなった家庭科室。
トイレで洗えばいいかと思ったがちょっとトイレの手洗い場では顔は洗いたくないよね。自論だけど。
行ってみると幸いにも鍵はかかってなかった。
ん?中から何か物音が聞こえる。先客かな?私は気にせずガラリと扉を開ける。
「あの女殺す…!」
そこにいたのはイケメンだった。黒いところどころはねている髪に前髪はあげてピンで留めている。顔は中性的だ。
そのイケメンはイケメンな顔を歪ませて暴言を吐きながら椅子を蹴っていた。
これはいったい……?とりあえず逃げよう。
「……失礼しました!」
私が扉から離れるよりも早くイケメンに腕をつかまれ家庭科室に引き込まれる。
唯一の逃げ道である扉を閉められて、イケメンはさっきの顔とは全く違う人懐っこい笑みを浮かべて話しかけてきた。
「いつから見てたんすか?」
にこにこしているのに声が怖い。
「え、えーと。椅子を蹴ったところしか見てないよー。」
あははーと笑いながら答える。
しばらく私を無言で見つめていたと思ったら手首を引っ張られ壁に押し付けられる。これは俗に言う壁ドンか…?ときめかないし、怖いんですけど。
「何を考えている。」
人懐っこい笑みは消えて真顔でそう聞いてくる。
あれ、この場面どこかで
「あっ!えぇ!?ちょ、頭痛い……!」
イケメンが何か声をかけてくるが聞こえない。頭になにか入ってくる。これは、記憶…?
薄らと目を開けるとイケメンが頭を手で抑えて私を睨んでいた。
そこで私の意識は途絶えた。
乙女ゲームものはやっぱり好きです。最後まで続けられるか自信がありませんが、頑張ります!
誤字、脱字などがありましたら教えて下さるとありがたいです。
最後になりましたが、読んでくださりありがとうございます(*^^*)